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2026年1月14日

EC・AIコマース ニュースダイジェスト(2026年1月14日)

目次
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この記事のポイント

  1. 英国ICOがAIショッピングエージェントのデータ保護に警告、5年以内に普及見込み
  2. 米国ホリデーEC支出が$257.8B到達、AI経由トラフィックが前年比693%増
  3. JD SportsがChatGPT・Copilot・Gemini上でAIコマースを米国開始

今日の注目ニュース

英国ICO、AIショッピングエージェントのデータ保護に警告

英国の情報コミッショナー室(ICO)は1月14日、エージェント型AIが個人情報に与える影響についての新しいレポートを公開し、特にショッピング分野でのAIエージェント普及に向けて、データ保護の強化が不可欠であると警告しました。

ICOのレポートによると、5年以内に個人AIエージェントが「購入決定、航空券予約、家計管理を独立して実行できる」ようになる見込みです。ショッピングAIは予算確認、季節セール対応、価格交渉などを自動で実施するようになりますが、その際に大量の個人データを扱うことになります。

ICOは「エージェント型AIは意思決定、環境との相互作用、リアルタイム問題解決が可能になる一方で、個人情報の安全な管理が公衆の信頼構築と安全なAI採用につながる」と強調。企業に対して、AIエージェント導入前にデータ保護の基盤を強化するよう求めています。

この警告は、Googleが先週発表したUniversal Commerce Protocol(UCP)など、エージェンティックコマースの基盤整備が進む中で発表されたもので、技術革新とプライバシー保護のバランスが今後の重要課題となることを示しています。

米国ホリデーEC支出が$257.8Bに到達、AI貢献度が顕著

Adobe Analyticsの最新データによると、2025年11月1日から12月31日までの米国ホリデーシーズンのオンライン支出が$257.8億に達し、前年比6.8%増を記録しました。

特に注目すべきは、生成AIツールの貢献度です。AIを活用したショッピング体験により、小売サイトへのトラフィックが前年比693.4%増加しました。これは、ChatGPTなどのAI検索エンジンが製品発見から直接チェックアウトまで対応するようになった影響と見られます。

業界アナリストは「AIベース検索からの直接チェックアウトは、過去10年で最大のオンラインショッピングのイノベーション」と評価しており、消費者がブランド主導の検索から会話型・意図ベースの検索へとシフトしていることを示しています。

この成長は、2026年がエージェンティックコマース元年となる可能性を裏付けるものです。Visaは「2026年のホリデーシーズンまでに、数百万の消費者がAIエージェントを使ってホリデー購入を完了するようになる」と予測しています。

エージェンティックコマース

Gartner予測:2026年末までに企業アプリの40%がAIエージェント搭載

調査会社Gartnerは、2026年末までに企業向けアプリケーションの40%がタスク特化型AIエージェントを搭載するようになると予測しました。これは2025年の5%未満から大幅な増加となります。

Gartnerのアナリスト、Anushree Verma氏は「AIエージェントは急速に進化し、タスク特化型からエージェント型エコシステムへと移行する。この変化により、企業アプリケーションは個人の生産性を支援するツールから、シームレスな自律的協働と動的なワークフロー調整を可能にするプラットフォームへと変貌する」と述べています。

さらに長期的な展望として、Gartnerは最良シナリオの場合、エージェント型AIが2035年までに企業アプリケーションソフトウェア収益の約30%($4,500億超)を生み出す可能性があると予測しています。これは2025年の2%から大幅な成長です。

一方で、Gartnerは2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%以上がキャンセルされるとも予測しており、コスト増加、不明確なビジネス価値、不十分なリスク管理が理由として挙げられています。同社は「この初期段階では、明確な価値やROIを提供する場合にのみエージェント型AIを追求すべき」と推奨しています。

AIショッピングエージェント戦争が激化

2026年は、小売業者とテクノロジー大手がAIショッピングエージェントの構築競争を繰り広げる年になると見られています。Amazon、OpenAI、Perplexityなどの主要プレイヤーが、デフォルトのショッピングインターフェースの座を巡って競争しています。

AmazonはRufusアシスタントに自動購入機能を追加し、OpenAIはChatGPTにチェックアウト機能を統合。Perplexityは独自のAIショッピングブラウザを立ち上げました。現在、ChatGPTでは毎日約5,000万件のショッピングクエリが発生していますが、これは全体のクエリのわずか2%に過ぎません。

成功の鍵は、AIエージェントがより詳細な製品データにアクセスできること、そして取引における消費者の信頼を獲得できることにあります。しかし、現在の製品カタログには、AIエージェントが正確なレコメンデーションを行うために必要な詳細なコンテキストが欠けています。

また、消費者の採用率は依然として低く、プライバシーへの懸念が第三者エージェントを通じた購入完了への意欲を制限しています。Amazonの支配力と確立されたユーザー信頼により、他社のイノベーションにもかかわらず、既存プレイヤーの破壊は困難な状況です。

AI x ブランド戦略

ブランドは今やAIを説得する必要がある

Forbesの記事によると、これまでブランドは家庭の購買決定者を直接説得することに注力してきましたが、エージェンティックコマースの台頭により、その構図が根本的に変化しつつあります。現在、ブランドはまずAIを説得し、そのAIが消費者に推薦するという新しいマーケティングの形が求められています。

AIショッピングエージェントは、ユーザーの嗜好を学習し、予算やセール情報、価格交渉などを自動で処理します。しかし、これはブランドにとって、SEO対策ではなく「AIO(AI Optimization)」が重要になることを意味します。従来の広告やディスプレイではなく、AI が製品を正確に理解し、適切な場面で推薦できるよう、構造化されたデータと豊富なコンテキスト情報を提供する必要があります。

Mesh CEOのBam Azizi氏は「エージェンティックコマースの本当の成長エンジンは、消費者ショッピングではなくB2Bアプリケーション、特にマイクロペイメント処理にある」と予測しており、AIエージェントがAPI呼び出しやクロスボーダーサービスで数千の高速・少額取引を実行するようになると述べています。

AIコマースツール

Spangle AI、$15M調達で企業価値$100Mに到達

元Amazon幹部が創業したAI eコマーススタートアップSpangle AIは、1月8日にシリーズAで$15Mを調達し、企業価値$100Mに到達したと発表しました。NewRoad Capital Partnersがリードし、Madrona、DNX Ventures、Streamlined Venturesなどが参加。累計調達額は$21Mとなります。

Spangleは、元BoltのCEO兼CTOだったMaju Kuruvilla氏と、Amazonのプリンシパルエンジニアだったアレクサ担当のFei Wang氏によって2024年に設立されました。同社のシステムは最新の生成AIツールを活用し、ユーザーのアイデンティティや履歴のパーソナライゼーションに依存せず、代わりに意図とコンテキスト(閲覧中、比較検討中、購入準備完了など)に焦点を当てています。

2025年3月のステルスモード解除以来、Spangleは9社の大手企業顧客を獲得しており、ファッション小売業者のREVOLVE、Alexander Wang、Steve Maddenなどが含まれ、これらの企業のオンライン売上は合計約$38億です。

Kuruvilla氏はTechCrunchに対し、Spangleを利用するブランドは訪問あたりの収益が約50%増加し、広告費用対効果が2倍になり、平均注文額が15%増加していると述べました。Spangleは、プラットフォームを経由するトラフィックが月平均57%成長し、2025年第3四半期から第4四半期にかけて売上ランレートが4倍になったと報告しています。

今回の投資は、AIモデルの改善とエンジニアの採用に使用される予定です。

SAP、小売業向けAIソリューション「Retail Intelligence」を発表

SAPは1月に開催されたNRF 2026で、小売業者とD2C企業向けに特別に設計された「Retail Intelligence」ソリューションを発表しました。このソリューションは2026年上半期に一般提供される予定です。

SAP Business Data Cloudに搭載される本ソリューションは、販売、在庫、顧客、サプライヤーのリアルタイムデータを統合し、正確な需要と在庫計画を提供します。AI生成シミュレーションを活用することで、計画担当者は結果を予測し、在庫を最適化できます。

主な機能は以下の通りです:

  • リアルタイムデータの統合と分析による需要予測精度の向上
  • AI生成シミュレーションを活用した在庫最適化
  • 手作業計画の削減と在庫コストの低下
  • 小売業者のオムニチャネル展開を支援

SAPは「AIはもはや小売業界にとって選択肢ではなく、必須の基盤となっている」と述べ、AIを小売業務の中核に組み込む新世代のイノベーションを提供しています。

小売業界リーダー、AI推薦システムの重要性を強調

小売業界のリーダーたちは、AI搭載の推薦システムが2026年のショッピング体験を再定義すると予測しています。いくつかの重要なトレンドが浮上しています。

Pinterestの Julie Towns氏は、同社のマルチモーダル視覚検索モデルが「主要な既製モデルを30パーセントポイント以上上回る性能を発揮している」と述べ、テイストグラフが2年間で70%以上拡大したことを報告しました。

Ogilvyの Griffin Smith氏は、AIエージェントが「製品、レビュー、価格、仕様を比較する認知的な単純作業」を処理するようになることで、ブランドはエージェントの推薦にどのように表示されるかを最適化する必要があると説明しました。

INCRMNTALのCEOは、エンターテインメントとコマースの境界を曖昧にするAI生成コンテンツフィードについて、「パーソナライズされた物語の中にシームレスに組み込まれた製品」を提供すると述べました。

しかし、技術の進歩にもかかわらず、小売業界のリーダーたちは人間の創造性が依然として不可欠であることを強調しています。Made by GatherのCEOは「人間の創造性とデザインが、人々が記憶に残る体験を生み出す」と述べています。

企業動向

JD Sports、米国でAIコマースを開始

英国の大手スポーツファッション小売業者JD Sports Fashionは1月12日、ChatGPT、Microsoft Copilot、Google Geminiなど主要なAIチャットボット上で直接商品検索・購入を可能にする「AIコマース」を米国市場で開始しました。commercetoolsのAgentic JumpstartソリューションとStripe Agentic Commerce Suite(ACS)を採用した初の大手小売業者となります。

JD Sportsは米国で売上の40%以上を占める最大市場であり、JD、DTLR、Shoe Palace、Hibbettなど2,500店舗以上を展開。今回の取り組みは「Beyond Physical Retail」戦略の重要な柱として位置づけられています。Adobe Expressの2025年調査では、米国消費者の60%がショッピング中にAIを活用しており、その流れを捉える狙いがあります。

Akeneo、エージェンティックAI時代のWinter Releaseを発表

製品体験(PX)のリーダーであるAkeneoは1月12日、Winter Releaseを発表しました。エージェンティックコマースの時代における「Commerce Velocity(コマース速度)」の加速を目指した機能群が含まれています。

主な新機能として、Digital Showroom(製品情報をライブ販売・コラボレーション環境に変換)、Stripe Agentic Commerce Suite連携(AIエージェントによる製品発見・チェックアウト・決済を単一統合で実現)、Native MCP Server(製品インテリジェンスのガバナンスレイヤー)、Custom Components(業界固有のインターフェース拡張)があります。

AWS x SAP、S/4HANA向けMCF・Buy with Prime連携を発表

Amazon Web Services(AWS)とSAPは1月12日、SAP S/4HANA向けのAmazon Multi-Channel Fulfillment(MCF)およびBuy with Prime Acceleratorsの提供開始を発表しました。この統合により、SAP顧客は既存のS/4HANA実装を活用してAmazonのフルフィルメントインフラストラクチャに接続できるようになります。

Buy with Primeは、ブランドが自社サイトでPrime配送・返品を提供できるサービスで、コンバージョン率向上とリピート利用の増加に貢献。MCFはAmazonのフルフィルメントネットワークを共有在庫プールとして活用できるサードパーティロジスティクスオプションです。

グローバルEC動向

Primark、消費者需要の圧力で売上成長が鈍化

英国の小売業者Associated British Foods(ABF)は、2026年1月3日までの16週間でPrimarkの売上が定常通貨ベースで1%増加したと報告しましたが、既存店売上は2.7%減少し、消費者需要への圧力が顕在化しました。

英国市場では、Primarkは「奨励的な」進展を示し、売上が約3%成長、既存店売上が約1.7%成長しました。これは困難な衣料品市場、特にクリスマス期間において達成されたものです。小売業者は、顧客提案を強化するための的を絞った行動により、英国で市場シェアを獲得しました。

しかし、欧州大陸では既存店売上が5.7%減少し、消費者信頼感が依然として弱く、価値とエンゲージメントを改善するための取り組みはまだ初期段階にあります。英国での成長は、欧州の低迷と米国小売環境の「不安定さ」によって相殺されました。

継続的な店舗拡大プログラムは売上成長に約4%貢献しました。これには、クウェートでの初のフランチャイズ店のオープンが含まれます。

厳しい取引環境で在庫レベルを管理するため、Primarkは値下げを増やし、これが収益性を圧迫しました。全体として、この期間のPrimarkの売上成長は以前の予想を下回り、小売業者は現在、2026年上半期の売上成長が低い一桁台になると予想しています。

Zippin、メルボルンクリケットグラウンドでチェックアウトフリーストア拡大

ボクシングデーに、メルボルンクリケットグラウンド(MCG)でZippin搭載のチェックアウトフリーストアが2店舗新たにオープンし、会場内の総数が4店舗になりました。

ボクシングデーテスト初日の記録的な94,199人の観客のうち、約28,000人の買い物客がZippin搭載のチェックアウトフリーストアを利用しました。これは、スタジアムでのチェックアウトフリー技術の需要の高さを示しています。

MCG Expressは、オーストラリア初のZippinサイトとして重要なマイルストーンを示し、メルボルンクリケットグラウンドに先駆的なウォークイン・ウォークアウト技術を導入しました。最初の2つのMCG Expressアウトレットは、スタジアムのシティエンド、ポンスフォードスタンドにオープンしました。

メルボルンクリケットクラブ(MCC)のCEO、Stuart Fox氏は「来場者がする必要があるのは、タップ、ショップ、ゴーだけです。商品を取って気が変わったら、戻すだけで請求されません。これは本当にクールなコンセプトです...なぜなら、彼らをすぐに席に戻すことができるからです」と説明しました。

Zippinのチェックアウトフリー技術は、デンバー・ブロンコスのEmpower Field at Mile High、インディアナポリス・ペイサーズのGainbridge Fieldhouse、ラスベガス・レイダースのAllegiant Stadiumなど、多数のスタジアムで使用されています。

規制動向

インド政府、クイックコマース企業に「10分配送」約束の撤回を要請

TechCrunchによると、インド労働省は国内で急成長するクイックコマースセクターに対し、ギグワーカーの安全と健康を優先するよう働きかけています。具体的には、Blinkit、Zepto、Swiggy Instamartなどの主要プレイヤーに対して、「10分配送」の約束を取り下げるよう求めていると報じられています。

インドのクイックコマース市場は、2029年までに$400億以上に達する見込みであり、急速な成長を遂げています。しかし、極端に短い配送時間の約束は、配達員に過度のプレッシャーをかけ、安全リスクを高めるとの懸念が指摘されてきました。

この動きは、エージェンティックコマースやAIショッピングの議論とは別軸で、「速度」と「労働者の安全」のバランスという、EC業界全体が直面する課題を浮き彫りにしています。インドのように規制当局が積極的に介入するケースは、他国のクイックコマース事業者にも影響を与える可能性があります。

まとめ

2026年1月14日のEC・AIコマース業界は、エージェンティックコマースの実用化と、それに伴う規制・プライバシー課題の顕在化という、新時代への移行を明確に示す動きが見られました。

英国ICOの警告は、技術革新のスピードに対して、データ保護とプライバシー管理の重要性を改めて強調するものです。一方で、ホリデーシーズンのEC支出記録更新とAIツールの貢献度の高さは、消費者がAI活用のショッピング体験を受け入れつつあることを示しています。

投資面では、Spangle AIの$15M調達に代表されるように、エージェンティックコマースの基盤技術への資金流入が続いています。SAPのRetail Intelligenceソリューション、AkeneoのWinter Release、AWS x SAPのフルフィルメント連携など、大手企業による本格的なAI製品の投入も加速しています。

特筆すべきは、JD SportsがChatGPT、Copilot、Gemini上での直接購入を可能にした「AIコマース」を米国で開始したことです。commercetoolsとStripe ACSを採用した初の大手小売業者として、エージェンティックコマースの実用化が具体的なフェーズに入ったことを示しています。

ブランド戦略においても変化が見られます。Forbesが指摘するように、ブランドはもはや消費者だけでなく「AIを説得する」必要があり、SEOからAIO(AI Optimization)への移行が求められています。

規制面では、インド政府がクイックコマース企業に10分配送の撤回を要請するなど、「速度」と「労働者の安全」のバランスという課題も浮上しています。

Gartnerの予測によれば、2026年末までに企業アプリの40%がAIエージェントを搭載する一方で、40%以上のプロジェクトがキャンセルされる可能性もあります。これは、AI活用が「試行錯誤の段階」から「選別の段階」へと移行しつつあることを示唆しています。