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2026年3月25日

Firmly、ノーコードでAIエージェント販売を実現する「Firmly Connect」を発表――エージェンティックコマースの参入障壁を一気に引き下げ

目次
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この記事のポイント

  1. FirmlyがマーチャントをAIエージェント経由で販売可能にするノーコードPF「Firmly Connect」をローンチ
  2. 従来3〜12ヶ月・最大50万ドルかかった接続を約45分・コスト95%削減で実現
  3. エージェンティックコマース時代に備え、EC事業者は「AIエージェント対応」の準備を始めるべき

Firmlyが「エージェンティックコマース」専用プラットフォームを正式ローンチ

2026年3月24日、エージェンティックコマース(AIエージェントを介した商取引)のリーダー企業であるFirmlyは、新プラットフォーム「Firmly Connect」を正式に発表しました。マーチャント(販売事業者)がコードを一切書くことなく、あらゆるAIショッピングエージェントやエージェンティックマーケティングチャネルに接続できるプラットフォームです。

発表はラスベガスで行われ、Best BuyやBackcountryなどの大手リテーラーがすでに導入していることも明かされました。

背景と業界動向

エージェンティックコマースは、2026年のEC業界で最も注目されるトレンドの一つです。McKinseyの予測によれば、2030年までにグローバルで3兆〜5兆ドル規模の市場になるとされています。またMorgan Stanleyのリサーチでは、米国だけでもAIエージェント経由のEC支出が1,900億〜3,850億ドルに達する可能性があると試算されています。

しかし、これまでマーチャントがこの新たなチャネルに参入するには大きな壁がありました。従来のエージェンティックコマース統合は3〜12ヶ月の期間を要し、12〜18名のチームメンバーが必要で、1チャネルあたり25万〜50万ドルのコストがかかるとされています。この複雑さが、多くのEC事業者にとって参入障壁となっていました。

Firmlyは2025年3月にPerplexityとの提携を発表し、AI検索プラットフォーム内でのシームレスなショッピング体験を実現。その後、Furniture.comへの導入など着実に実績を積み上げてきました。今回のFirmly Connectは、その技術を「誰でも使えるノーコードプラットフォーム」として一般化したものです。

Firmly Connectの仕組みと3つのコア技術

Firmly Connectの導入プロセスは極めてシンプルです。マーチャントは、ビジネス認証の確認、販売チャネルの選択、商品カタログの公開という3ステップで、約45分でエージェンティックコマースを開始できます。統合コストは従来比で推定95%削減されます。

プラットフォームの中核には「Firmly Agent Control Center」があります。これはマーチャントが販売先のエージェントやチャネル、各チャネルでの取扱商品、AIショッピングエージェント上での商品の表示・取引方法を一元管理できるダッシュボードです。

技術面では、以下の3つのコア機能が特徴的です。

プロトコル抽象化: MCP、AP2、ACP、UCP、A2A、KYAといった複数のエージェントプロトコルを抽象化し、マーチャントが個別のプロトコルごとに統合を構築する必要をなくします。現在、業界では「MCPはツール統合、A2Aはエージェント間通信、UCP+AP2はEC取引」というコンセンサスが形成されつつあり、Firmlyはこれらを一括で処理します。

水平インフラストラクチャ層: 既存のコマースプラットフォームの上位レイヤーとして機能し、一度の接続であらゆるチャネルへ配信を可能にします。

マーチャント・オブ・レコードモデル: マーチャントが販売主体であり続けるため、ブランド、顧客関係、ファーストパーティデータ、価格・在庫の管理権限がすべて維持されます。

Aurusとの戦略的提携で決済インフラも対応

今回の発表と同時に、Firmlyは25カ国以上で大手リテーラーやグロサリーチェーンにサービスを提供するエンタープライズ決済プラットフォームAurusとの戦略的パートナーシップも発表しました。これにより、Aurusは「ネイティブなエージェンティックコマース機能を持つ初のオムニコマースゲートウェイ」となります。

AurusのCEO、Rahul Mutha氏は、この提携の価値を3点に集約しています。既存のデジタルコマースの複雑なユースケースと決済マトリクスをそのまま維持できること、エージェンティックコマース体験を数ヶ月ではなく数週間で導入できること、そして他の社内プロジェクトの優先順位を変えることなくエージェンティックコマースの学習体験を得られることです。

EC事業者への影響と活用法

Firmly Connectの登場は、EC事業者にとって「エージェンティックコマースへの参入」が一部の技術力のある大企業だけの特権ではなくなることを意味します。

具体的な活用シーンとしては、AIショッピングエージェント(ChatGPT、Perplexity、Google等)を通じた新規顧客の獲得、パブリッシャーやCTVなど新興チャネルでの販売機会の拡大、そして既存のECインフラを変更せずにAIコマース対応を実現することが挙げられます。

導入を検討する際の注意点もあります。マーチャント・オブ・レコードモデルにより自社の管理権限は維持されますが、AIエージェント上での商品の表示方法やレコメンデーションのロジックはチャネル側に依存します。自社商品がどのように提案されるかを継続的にモニタリングする体制が求められます。

利用開始はFirmlyの公式サイトから申し込み可能です。

まとめ

Firmly Connectは、エージェンティックコマースの「インフラ問題」を解決する初のプラットフォームとして、業界の転換点となる可能性があります。eMarketerのデータによれば、AIプラットフォーム経由の小売支出は2026年に209億ドルに達し、前年比4倍近い成長が見込まれています。

今後注目すべきは、ShopifyやcommerceToolsなど既存コマースプラットフォームのMCP対応との棲み分けです。プラットフォーム側が直接エージェント対応を進める中、Firmlyのようなミドルウェアがどれだけのマーチャントを取り込めるかが、エージェンティックコマース市場の勢力図を決めることになります。