この記事のポイント
- GoogleがUCPをアップデートし、Cart・Catalog・Identity Linkingの3機能を追加
- AIエージェントが「商品を探す→カートに入れる→会員特典を適用する」一連の購買行動を実行可能に
- EC事業者はMerchant Center経由の簡易オンボーディングで、Google AI Mode・Geminiでの販売チャネルを獲得できる
GoogleがUCPに購買プロセスの中核機能を追加

Universal Commerce Protocol (UCP) releases new capabilities, and Google shares a vision for a connected commerce ecosystem powered by AI.
blog.google2026年3月19日、GoogleはUniversal Commerce Protocol(UCP)の大型アップデートを発表しました。VP/GMのAshish Gupta氏が公式ブログで明らかにした内容によると、新たに「Cart(カート)」「Catalog(カタログ)」「Identity Linking(ID連携)」の3つのオプション機能が追加されています。
UCPは2026年1月のNRF(全米小売業協会)年次カンファレンスで発表されたオープン標準プロトコルです。AIエージェントが小売事業者のシステムと安全に接続し、ユーザーに代わって商品購入を行うための共通規格として設計されました。今回のアップデートにより、これまでチェックアウト(決済完了)に限られていたUCPの機能範囲が、購買プロセス全体に大幅に拡張されています。
業界動向
UCPの機能拡張は、エージェンティックコマース市場が急速に実装フェーズへ移行していることを反映しています。Stripeによると、NRF 2026のセッションにおいて参加者の約75%がエージェンティックコマースの導入を「実装中」または「計画中」と回答しました。小売業界の関心は「やるかやらないか」から「どう実装するか」へと完全に移行しています。
この市場の成熟に伴い、プロトコル間の競争も激化しています。StripeはAgentic Commerce Protocol(ACP)を推進し、URBN(Anthropologie、Free People、Urban Outfitters)、Etsy、Coachなどの大手ブランドを取り込んでいます。一方、Googleは今回のUCPアップデートで、チェックアウトだけでなく「商品探索→カート構築→決済」という購買ジャーニー全体をカバーする標準を目指しています。
重要なのは、両プロトコルが排他的ではない点です。Stripeは「Agentic Commerce SuiteがUCPを自動サポートする」と明言しており、事業者は一度の統合で複数のプロトコルに対応できる方向に進んでいます。
Cart・Catalog・Identity Linkingの3機能を詳しく解説
Cart機能 -- チェックアウト前の「探索」を可能に
Cart機能は、AIエージェントがユーザーに代わって商品をカートに追加・更新・削除できるようにする仕組みです。従来のUCPでは、チェックアウト(購入確定)の操作のみが規定されていました。Cart機能の追加により、ユーザーが「まだ買うか決めていないけど気になる商品をとりあえずカートに入れておく」という日常的な買い物行動をAIエージェントが再現できるようになります。
技術的には、Cart→Checkout→Orderという段階的な購買フローが定義されています。カートセッションにはCreate(作成)、Get(取得)、Update(更新)、Cancel(取消)の4つのCRUD操作が用意され、セッションの有効期限や共有URL(continue_url)による引き継ぎにも対応しています。
Catalog機能 -- リアルタイムの商品情報取得
Catalog機能は、AIエージェントが小売事業者の商品カタログをリアルタイムで検索・閲覧できるようにします。フリーテキスト検索、カテゴリ・フィルタによるブラウジング、バリエーション(サイズ・色など)の取得、価格比較といったユースケースに対応しています。
注目すべきは、Catalog APIのレスポンスが「セッション固有」であり、在庫状況や価格がリクエスト時点のリアルタイムデータとして返される点です。これにより、AIエージェントは「今この瞬間に買える商品」だけをユーザーに提示できます。
Identity Linking -- 会員特典のクロスプラットフォーム適用
既存の標準規格を基盤とするIdentity Linking機能では、UCP対応プラットフォーム上でのショッピング時に、小売事業者のロイヤルティプログラムや会員特典を引き継げるようになります。具体的には、会員限定価格や送料無料といった特典が、Google AI ModeやGeminiアプリ経由の購入でも適用されます。
EC事業者への影響と活用法
新たな販売チャネルの獲得
Googleは今回のアップデートと同時に、Merchant Center上での簡易オンボーディングプロセスを数か月かけて展開すると発表しています。これにより、中小規模の事業者でもGoogle AI Mode in SearchやGeminiアプリでの「エージェンティックコマース」に参加しやすくなります。
パートナーエコシステムの拡大
大手プラットフォーム事業者もUCPへの対応を進めています。SalesforceはAgentforce Commerceの加盟店にUCPのネイティブサポートを提供すると発表しました。Commerce IncやStripeも近い将来のUCP実装を表明しています。既存のコマースプラットフォームを利用している事業者は、プラットフォーム側の対応を待つだけで自動的にUCPエコシステムに参加できる可能性があります。
実務上の注意点
UCP対応にあたり、事業者は以下の準備が求められます。
- 商品データの整備: Catalog機能はリアルタイムの在庫・価格・バリエーション情報を返す必要があるため、商品マスタデータの精度が直接的な売上に影響します
- ロイヤルティプログラムのAPI化: Identity Linkingを活用するには、会員特典の判定ロジックをAPIで公開する必要があります
- 段階的な導入: URBNのように人気カテゴリから優先的に対応するアプローチが実績として報告されています
まとめ
今回のCart・Catalog・Identity Linkingの追加により、UCPは「チェックアウト専用のプロトコル」から「購買ジャーニー全体をカバーする商取引標準」へと進化しました。SalesforceやStripeといった大手プラットフォームがUCPサポートを表明していることから、対応のハードルは着実に下がっています。
EC事業者にとっての次のアクションは、まずMerchant Centerでの簡易オンボーディングの提供開始を注視すること。そして、商品データの構造化とロイヤルティプログラムのAPI対応を並行して進めることです。AIエージェント経由の購買が「いつ来るか」ではなく「どう対応するか」のフェーズに入った今、早期の準備が競争優位につながります。




