この記事のポイント
- PDD Holdingsの2025年Q4売上が市場予想を下回り、純利益も前年比11%減少
- 中国消費低迷・越境EC規制強化・競争激化の三重苦がビジネスモデルの限界を露呈
- EC事業者は「最安値勝負」の終焉を見据え、ブランド構築と規制対応の強化が急務
PDD Holdings、四半期売上が市場予想を下回る

Discount e-commerce company PDD Holdings missed market estimates for quarterly revenue on Wednesday, as subdued consumer spending weighed on its Chinese platform, Pinduoduo, overshadowing robust growth at its overseas marketplace Temu.
www.bnnbloomberg.ca2026年3月25日、Temu(ティームー)を運営するPDD Holdingsが2025年度第4四半期(10〜12月)の決算を発表しました。売上高は1239.2億元(約179.6億ドル)で、アナリスト予想の1244億元を下回りました。純利益は前年同期比11%減の245億元となり、調整後EPSも17.69元と市場予想の22.34元を大幅に下回っています。
売上の内訳を見ると、オンラインマーケティングサービス収入は前年比5%増の858億ドルにとどまる一方、取引サービス収入(Temuの手数料等)は19%増の914億ドルと堅調でした。しかし、フルフィルメント費用やサーバーコストの上昇により総コストが15%増加し、利益率を圧迫しています。
三重苦が露呈させたビジネスモデルの限界
PDDの業績悪化には、三つの構造的要因が重なっています。
第一に、中国国内の消費低迷です。かつて価格に敏感な消費者に支持されたPinduoduoですが、景気回復の遅れと家計の先行き不安から、ディスカウント型プラットフォームですら成長が鈍化する事態に陥っています。通期でも売上成長率は10%にとどまり、非GAAPベースの純利益は前年比12%減の1073億元となりました。
第二に、越境ECに対する各国の規制強化です。EUは2026年7月から150ユーロ以下の小口輸入品に対して一律3ユーロの関税を課す方針を決定しました。これまで免税だった少額荷物に課税されることで、TemuやSheinの価格優位性が削がれます。さらに米国ではde minimis(少額免税)制度の見直し議論が進行中で、上院議員が知的財産侵害や模造品に関する連邦調査を要求するなど、政治的な圧力も強まっています。
第三に、中国当局による内部調査です。Bloombergの報道によれば、北京当局はPDDの会計・税務慣行に対する調査を拡大しており、2025年12月の従業員と規制当局の衝突がきっかけとされています。
1000億元の自社ブランド戦略「新品目」の全貌
こうした逆風の中、PDDは攻めの一手を打ちました。決算と同日の3月25日、PDDは自社ブランド構築の新事業体「新品目(Xinpinmu)」の設立を正式に発表しました。上海に拠点を置き、初期投資として150億元を注入。今後3年間で総額1000億元(約145億ドル)を投じる計画です。
新品目の事業内容は多岐にわたります。まず、Pinduoduoの国内サプライチェーンとTemuの海外販売網を組み合わせ、市場やカテゴリを横断する「自社ブランド」を開発します。さらに、中国の産業ベルト(製造集積地)のメーカーに対して、カスタム製造・品質基準策定・倉庫物流・知的財産保護・法務支援・規制対応を包括的に提供する「海外進出支援サービス」を展開します。
この戦略は、単なるブランド投資にとどまらず、PDDのビジネスモデルそのものの転換を意味します。これまでの「最安値マッチング」から、サプライチェーンの垂直統合による「品質と価格のバランス」へと軸足を移すものです。AliExpressも同様に、ノーブランド商品から製造業者やブランド商品へのシフトを進めており、中国越境EC全体のトレンドとも一致しています。
共同会長兼共同CEOのJiazhen Zhao氏は、2026年を「次の10年の始まり」と位置づけ、サプライチェーンへの投資とエコシステム全体の支援に大規模な資源を投入する方針を示しました。
EC事業者への影響と活用法
PDDの業績悪化と戦略転換は、日本のEC事業者にとって三つの重要な示唆を含んでいます。
越境EC競争環境の変化を注視する必要があります。Temuの超低価格モデルが規制と収益性の壁に直面していることは、「安さだけで勝つ時代」の終焉を示唆しています。日本市場でもTemuの価格破壊に苦しんできた事業者にとっては、競争環境が緩和に向かう可能性があります。一方で、PDDが自社ブランドで品質勝負に転じた場合、新たな競合として警戒が必要です。
規制動向への対応が急務です。EUのde minimis廃止は2026年7月に発効します。越境ECを手がける事業者は、関税コストの増加分を価格設定に反映するか、現地倉庫の活用によるコスト吸収かを早急に検討すべきです。Temuは既に現地倉庫モデルを構築しており、規制変更の影響を部分的に回避する体制を整えています。
サプライチェーンの透明性と品質管理が差別化要因になります。PDDが新品目を通じて知的財産保護や品質基準の策定に本格投資する背景には、EUのデジタルサービス法(DSA)違反によるグローバル売上の最大6%に相当する制裁金リスクがあります。安全基準を満たさない商品の排除は、プラットフォームの信頼性そのものに関わる課題です。
まとめ
PDDの決算は、「ハイパーグロース期の終焉」を明確に示しました。売上の伸び悩みと利益率の低下は、超低価格モデルの持続可能性に対する根本的な疑問を投げかけています。しかし同時に、1000億元規模の自社ブランド投資は、PDDが現状に甘んじるつもりがないことを示しています。
今後の注目ポイントは三つあります。第一に、新品目の具体的なブランドラインナップと展開市場がいつ明らかになるか。第二に、EUのde minimis関税発効後のTemuの価格戦略と売上への影響。第三に、中国当局の調査がPDDの事業運営にどの程度影響するかです。Temuの月間アクティブユーザーは依然として世界有数の規模を誇りますが、規制・競争・収益性の三重の課題を乗り越えられるかどうかが、2026年後半の最大の焦点となります。



