この記事のポイント
- RazorpayとNPCIがClaude上でAIエージェントによるUPI決済機能をローンチ
- AIとの会話だけで注文から決済まで完結するエージェンティックコマースが本格始動
- EC事業者はAIプラットフォームを新たな販売チャネルとして準備すべき段階に
RazorpayとNPCIがClaude上でエージェンティック決済を発表

Razorpay and NPCI enable agentic UPI payments on Claude, allowing users to order from Zomato, Swiggy, and Zepto without leaving the chat.
analyticsindiamag.com2026年2月20日、インドの決済大手Razorpayとインド国家決済公社(NPCI)は、ニューデリーで開催された「India AI Impact Summit」にて、Anthropic社のAIアシスタント「Claude」上でUPIエージェンティック決済を実現する新機能を発表しました。フードデリバリーのZomato、Swiggy、即時配達のZeptoがローンチパートナーとして対応を開始しています。
ユーザーはClaudeとの会話の中で、商品の検索から注文、決済までを一貫して完了できます。アプリの切り替えや手動のチェックアウト操作は不要です。現在は限定ユーザーを対象としたパイロットフェーズで提供されています。
エージェンティック決済の世界的潮流
エージェンティック決済とは、AIエージェントがユーザーの代わりに商品選定から決済までを自律的に実行する仕組みです。従来のオンライン決済では、ユーザーが商品を選び、カートに入れ、決済画面でPINやOTPを入力する必要がありました。エージェンティック決済はこの一連のプロセスをAIが代行します。
Razorpayは2025年10月にもOpenAIと提携し、ChatGPT上でのエージェンティック決済を発表していました。その際はbigbasket(Tataグループ)やVodafone Idea(Vi)がローンチパートナーでした。今回のClaude対応は、この取り組みをマルチAIプラットフォームに拡張するものです。
インドのUPI(Unified Payments Interface)は月間200億件以上のトランザクションを処理する世界最大級のリアルタイム決済基盤です。この規模と即時性が、エージェンティックコマースの実現に必要なインフラを提供しています。Razorpay CEOのHarshil Mathur氏は「AIはレコメンデーションで止まるべきではない。購入まで完結すべきだ」と述べています。
UPI Reserve Payが実現する安全な自律決済の仕組み
今回の技術的な核となるのが、NPCIが提供する「UPI Reserve Pay」と「UPI Circle」の2つの機能です。
UPI Reserve Payは、ユーザーが事前に一回限りの同意ベースの認証を行い、マーチャントごとに利用上限額を設定できる仕組みです。AIエージェントはこの上限額の範囲内で、個別のPIN入力やOTP認証なしに取引を実行できます。ユーザーは取引のリアルタイム可視性を保ち、いつでも即座に同意を取り消すことが可能です。
具体的な利用シーンとしては、「試合が始まる前にいつもの食材を注文しておいて」とClaudeに話しかけるだけで、AIが意図を理解し、在庫確認、好みの反映、決済処理までを自動で完了します。また「予算3,000ルピー以内でSwiggyから夕食の選択肢を探して」といった条件付きの指示にも対応します。
銀行パートナーとしてはAxis BankとAirtel Payments Bankが基盤を支えています。NPCIのSohini Rajola氏(成長担当エグゼクティブ・ディレクター)は「AIとUPIが融合することで、取引がより直感的で、インテリジェントで、インクルーシブなものになる」とコメントしています。
EC事業者への影響と活用法
今回の動きは、EC事業者に3つの重要な示唆を与えています。
AIプラットフォームが新たな販売チャネルになります。従来はWebサイトやアプリが主要な顧客接点でしたが、ChatGPTやClaudeといったAIアシスタントが購買の起点となる時代が始まっています。Zomato、Swiggy、Zeptoに続くマーチャントの拡大は確実です。
「会話型コマース」への対応が競争力を左右します。ユーザーが自然言語で買い物を完結できる環境では、商品カタログの構造化やAIエージェントとの連携設計が重要になります。検索結果やレコメンデーションに最適化するだけでなく、AIが理解しやすいデータ構造を整備する必要があります。
セキュリティと同意設計の基準が変わります。UPI Reserve Payのような事前承認型の決済モデルでは、利用上限の設定や同意管理の仕組みが顧客体験の鍵を握ります。過度に制限すれば利便性が損なわれ、緩すぎればリスクが高まります。
現時点ではインド市場に限定されたサービスですが、RazorpayがChatGPTとClaudeの両方に対応を広げていることから、グローバル展開を視野に入れていると見られます。日本のEC事業者にとっても、AIプラットフォーム経由の決済が普及した場合に備えた準備が求められます。
まとめ
RazorpayとNPCIによるClaude上でのエージェンティック決済は、AIアシスタントを「情報提供ツール」から「購買完結チャネル」へと進化させる転換点です。2025年10月のChatGPT対応に続き、わずか4カ月でClaudeにも展開されたことは、この領域の進展の速さを物語っています。
今後はパイロットフェーズから一般公開への移行、対応マーチャントの拡大、そしてインド以外の市場への展開が注目ポイントとなります。EC事業者はAIエージェントとの連携を前提とした商品データの整備や、新しい決済フローへの対応を早期に検討すべき段階に入っています。



