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2026年3月4日

Riskified、AIエージェント不正検知を拡張 ── マーチャント独自のAIショッピングアシスタントを保護する新機能

目次
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この記事のポイント

  1. RiskifiedがAI Agent Intelligence機能を拡張し、マーチャント独自のAIショッピングアシスタントの不正検知に対応
  2. AIエージェント経由の取引が急増する中、不正リングによるエージェント悪用が現実の脅威に
  3. EC事業者は自社AIアシスタント導入時に「リスクインテリジェンス層」の組み込みが不可欠に

Riskifiedが自社AIアシスタント向け不正検知を発表

2026年3月3日、EC向け不正検知プラットフォームを提供するRiskified(NYSE: RSKD)は、「AI Agent Intelligence」機能の拡張を発表しました。今回の拡張により、マーチャントが自社で構築・運用するAIショッピングアシスタントの保護に対応します。

これまでのAI Agent Intelligenceは、ChatGPTなど外部のAIショッピングエージェントからの注文を監視する機能が中心でした。今回の拡張では、マーチャントが自社のデジタルストアフロントに直接展開する「ネイティブAIアシスタント」にまで保護範囲を広げています。

共同創業者でCTOのAssaf Feldman氏は、マーチャントが独自のバーチャルショッピングアシスタントを立ち上げることで顧客との直接的な関係を維持できる「ホームフィールドアドバンテージ」があると述べ、Riskifiedがそのリスクインテリジェンス層として機能すると説明しています

背景と業界動向

AIエージェントがECの購買プロセスに入り込む動きは、2025年後半から急速に加速しています。McKinsey & Companyの調査によると、小売業界の82%がすでにカスタマーサービス刷新を目的とした生成AIパイロットを開始しています。

一方で、Riskifiedが2025年9〜10月に5,000人以上の消費者を対象に実施したグローバル調査では、73%がすでに購買活動でAIを利用していると回答。70%がAIエージェントによる代理購買にも抵抗がないと答えています。

しかし、この急成長には深刻なリスクが伴います。Riskifiedの分析では、LLM経由のトラフィックは通常の検索流入と比べて不正リスクが高く、チケット販売業者では2.3倍、電子機器販売業者では1.8倍のリスク増加が確認されています。不正リングがエージェンティックプロトコルやチャットボットを悪用し、在庫を急速に枯渇させて偽ストアフロントで転売する手口も報告されています。

AI Agent Intelligenceの新機能の詳細

今回発表された拡張の中核は、2つの新機能です。

AI Agent Identity Signals(エージェント身元識別シグナル)は、マーチャントのAIショッピングアシスタントがRiskifiedの「Identity Graph」(身元情報データベース)に直接問い合わせを行い、リアルタイムでリスク指標を取得する仕組みです。接続方式はMCP(Model Context Protocol)統合、GoogleのAgent-to-Agent(A2A)プロトコル、標準的なRESTful APIの3種類に対応しています。

これにより、ネイティブAIアシスタントは顧客との会話中にリアルタイムでリスク判定を取得できます。たとえば、返品リクエストや交換判断の場面で、消費者のリスクレベルと適格性に基づいた即時判断が可能になります。

AI Agent Policy Builder(エージェントポリシービルダー)の強化版は、Riskified Decision Studio上でAIエージェント由来の注文に対するビジネスルールを構築・シミュレーション・展開・追跡できるツールです。具体的には、プログラマティックな返金不正、リセラーによる裁定取引(アービトラージ)、プロモーション悪用といったパターンを検知・阻止します。

さらに、2025年8月にHUMAN Securityとの提携で導入されたAI Agent Approveも引き続き提供されています。これはAWS Marketplace上のMCPサーバーパッケージとして公開されており、需要側(LLM・AIエージェント)が供給側(マーチャント)のRiskifiedプラットフォームと安全に通信するための信頼レイヤーとして機能します。

EC事業者への影響と活用法

今回の発表は、自社AIアシスタントの導入を検討するEC事業者にとって重要な指針を示しています。

まず、AIアシスタントは収益ドライバーになり得る一方で、不正対策なしでの展開はリスクが大きいという点です。消費者の45%が商品発見にAIを活用し、37%がレビュー要約、32%が価格比較に利用しているという調査結果は、AIアシスタントの需要の高さを裏付けています。

導入にあたっての実務的なポイントは3つあります。第一に、AIアシスタントの設計段階からリスクインテリジェンス層を組み込むことです。後付けではなく、会話フローの中にリアルタイムのリスク判定を埋め込むアーキテクチャが求められます。

第二に、MCP・A2A・REST APIといったオープンプロトコルへの対応です。Riskifiedは複数の接続方式を提供しており、マーチャントの技術スタックに応じた柔軟な統合が可能です。

第三に、マルチマーチャントネットワークの活用です。単一マーチャントのデータだけでは検知できない不正パターンも、複数マーチャントのネットワーク情報を組み合わせることで特定できます。Riskifiedのような「ネットワーク型」不正検知の価値は、AIエージェント時代にさらに高まると考えられます。

なお、Riskifiedは2026年5月4〜6日にニューヨークで開催するグローバルサミットAscend 2026で、これらの機能をさらに詳しく紹介する予定です。日本では10月の開催が予定されています。

まとめ

Riskifiedの今回の発表は、エージェンティックコマースのセキュリティが「外部エージェントへの防御」から「自社エージェントの保護」へとフェーズが移行していることを明確に示しています。EC事業者がAIアシスタントを自社の顧客接点として活用する流れは不可逆であり、その安全性を担保するインフラ整備が急務です。

注目すべきは、MCP・A2A・RESTという3つのプロトコル対応により、エージェント間通信の標準化が進んでいる点です。今後、不正検知に限らず、決済・物流・CRMなどEC基盤全体がエージェント対応へとシフトする中で、セキュリティレイヤーの標準化がどこまで進むかが次の焦点になります。