Stellagent
お問い合わせ
2026年3月13日

Santander、Visaと提携しラテンアメリカ5か国でエージェンティック決済の実取引を完了

目次
シェア

この記事のポイント

  1. SantanderがVisa Intelligent Commerceを活用し、ラテンアメリカ5か国でAIエージェントによる初のライブ取引を実施
  2. 欧州に続きラテンアメリカでも実証が進み、エージェンティック決済の商用化が2026年中に現実味を帯びてきた
  3. EC事業者はAIエージェント経由の購買フローへの対応準備を今から進める必要がある

Santanderがラテンアメリカで初のAIエージェント決済を実現

2026年3月12日、Banco SantanderとVisaは、ラテンアメリカにおける初のエージェンティック決済のライブ取引を完了したと共同で発表しました。対象市場はアルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ、ウルグアイの5か国です。

「エージェンティック決済」とは、消費者に代わってAIエージェントが商品の発見から決済までを自律的に実行する仕組みを指します。今回のパイロットでは、AIエージェントがアルゼンチン・チリ・メキシコ・ウルグアイで書籍を、ブラジルではチョコレートを実際に購入することに成功しました。

Santanderのカード・デジタルソリューション部門グローバルヘッドであるMatías Sánchez氏は「実際の取引をテストすることで、安全で相互運用可能なエージェンティックコマースを実現する技術の有効性を実証した」と述べています

背景と業界動向

Santanderのエージェンティック決済への取り組みは急速に加速しています。わずか2週間前の3月2日には、Mastercardと共同で欧州初のAIエージェントによるエンドツーエンド決済を完了したばかりです。欧州ではMastercard Agent Payを通じた処理が行われ、今回のラテンアメリカではVisa Intelligent Commerceが使われました。つまりSantanderは、VisaとMastercardの両決済ネットワークでエージェンティック決済の実証を並行して進めていることになります。

この動きはSantander単独のものではなく、業界全体のトレンドです。2月にはシンガポールのDBS銀行がVisa Intelligent Commerceのアジア太平洋初のパイロットを実施し、ニュージーランドではWestpacがMastercardと映画チケットの購入実証を行いました。3月10日にはJP Morgan PaymentsがMiraklと提携し、エージェンティックコマース基盤の構築に乗り出しています。

Santanderは2025年にAI投資から今後2年間で10億ユーロのビジネス価値を創出すると発表しており、エージェンティック決済はその中核戦略の一つと位置づけられています。

Visa Intelligent Commerceの仕組みと実証の詳細

今回のパイロットで使用された「Visa Intelligent Commerce(VIC)」は、Visaのセキュアなインフラを活用し、AIエージェントによる安全で透明性のある「同意ベース」の取引を可能にする技術基盤です。

VICが提供する主な機能は以下の通りです。

  • 同意取得(Consent Capture): 消費者がAIエージェントに委任する範囲を明確に定義し、その同意を記録します
  • セキュアなデータ処理: 決済情報はVisaのインフラ上で暗号化され、AIエージェントが直接カード情報を保持しない設計です
  • 相互運用性: 異なる加盟店・決済ネットワーク間でもシームレスに取引が完了する仕組みを実現します

パイロットはSantanderとVisaの規制された決済フレームワーク内で実施され、既存の監督基準に準拠して行われました。Visa ラテンアメリカ・カリブ地域の成長プロダクト&パートナーシップ責任者であるCatalina Tobar氏は「Santanderとのパイロットは、ラテンアメリカにおけるコマースの転換点だ」とコメントしています

Visaは現在、世界中で100社以上のパートナーとVIC関連のプロジェクトを進めており、30社以上がサンドボックスで開発中、20社以上のエージェントが直接統合を進めています。

EC事業者への影響と活用法

Visaの調査によると、ラテンアメリカの消費者の70%以上がすでにAIをショッピングに活用しています。この数字はアジア太平洋地域でも同様で、シンガポールでは消費者の80%がオンラインショッピングにAIアシスタントを利用しているとのデータがあります。

EC事業者が今から注目すべきポイントは3つあります。

商品カタログのAI対応が急務です。 JP Morgan PaymentsとMiraklの提携事例が示すように、AIエージェントが商品を「発見」するためには、構造化された商品データが不可欠です。MiraklのMirakl Nexusは、商品カタログをAIエージェントが読み取れる形式に最適化する基盤を提供しています。

決済フローの見直しが必要です。 エージェンティック決済では、従来のチェックアウト画面を介さずに取引が完了します。加盟店側は、AIエージェントからの取引リクエストを識別し、適切に処理するための技術対応が求められます。

セキュリティとガバナンスが差別化要因になります。 JP Morgan PaymentsのMike Lozanoff氏が指摘するように、エージェンティックコマースの差別化要因は「AI」そのものではなく「ガバナンス」、つまりアイデンティティ、同意、制限、相互運用性です。Visaが2025年10月に導入したTrusted Agent Protocolのような信頼性フレームワークへの対応が重要になります。

まとめ

Santanderの一連の動きは、エージェンティック決済が「実験段階」から「実用段階」へ移行しつつあることを明確に示しています。欧州ではMastercard、ラテンアメリカではVisaと、主要決済ネットワーク双方での実証を短期間で完了した事実は、銀行側の技術的準備が相当進んでいることの証左です。

Visaは2026年のホリデーシーズンまでに数百万人の消費者がAIエージェントを通じた購買を行うと予測しています。EC事業者にとって、商品データの構造化対応やAIエージェント向け決済フローの整備は、もはや将来の課題ではなく、今期中に着手すべき実務課題と言えるでしょう。