この記事のポイント
- VisaがStripe・Tempo共同開発のMPPにカード決済仕様とSDKを提供開始
- AIエージェントが自律的に決済を行う「Command Line Commerce」時代の基盤が整備
- EC事業者はMPP対応で、人間だけでなくAIエージェントからの注文・決済を受付可能に
Visa、エージェント決済の業界標準プロトコルにカード対応を発表

Visa is supporting Stripe and Tempo's Machine Payments Protocol (MPP) by enabling card-based payments for trusted autonomous agent payments. The company
www.pymnts.com2026年3月18日、VisaはStripeとブロックチェーン企業Tempoが共同発表した「Machine Payments Protocol(MPP)」に対し、カードベースの決済仕様とSDKを提供すると発表しました。MPPは、AIエージェントがサービスや他のエージェントとプログラム的に決済をやり取りするためのオープン標準です。Visaはこのプロトコルの設計パートナーとして、自社のグローバル決済ネットワークをMPPに接続し、Visa Acceptance Platform上でMPPを有効化します。
業界動向
AIエージェントの能力が急速に進化し、単なるチャットボットから「自律的にタスクを計画・実行・評価する存在」へと変化しています。このエージェントがAPIの利用料やクラウドリソース、データセットへのアクセス料金を自動で支払う「マシン間決済」のニーズが高まっています。
しかし、現在の決済インフラは人間向けに設計されたものです。エージェントが購入を行うには、アカウント作成、料金ページの確認、決済情報の入力といった人間の介入が必要なステップが多く残っています。Visaのグロースプロダクト&戦略パートナーシップ責任者Rubail Birwadker氏は、2025年12月のインタビューで「決済は次世代のワンクリックチェックアウト、場合によってはボタンすら不要な形になる」と語っています。
Visaはすでに2025年10月に「Trusted Agent Protocol」を発表し、悪意のあるボットと正当なAIエージェントを識別するフレームワークを構築してきました。さらに「Visa Intelligent Commerce」として100社以上のパートナーとエコシステムを構築し、30社以上がサンドボックスで開発を進めています。今回のMPP対応は、この取り組みの延長線上に位置します。
MPPの仕組みとVisaが提供するもの
MPPの基本的な決済フローはシンプルです。エージェントがサービスにリソースを要求すると、サービス側が決済要件を返します。エージェントが決済を承認すれば、リソースが提供されます。ブラウザもチェックアウト画面も不要です。
StripeとTempoが共同開発したMPPは、ステーブルコイン、カード、後払い(BNPL)など複数の決済手段に対応する「レール非依存」の設計です。Tempoのメインネット上で稼働しますが、プロトコル自体は特定のブロックチェーンに縛られません。
Visaが今回リリースしたのは以下の3点です。
カードベースMPP仕様: トークン化されたカード認証情報がMPP内でどう処理されるかを定義した技術仕様です。加盟店、PSP(決済サービスプロバイダ)、アクワイアラが参加できる、プロセッサ非依存のオープン仕様として公開されています。
SDK(ソフトウェア開発キット): 仕様を実装したnpmパッケージとして提供され、開発者がカードベースのMPP取引を迅速に構築できます。コマンドライン環境でのプログラマティックな利用を想定した設計です。
セキュリティ基盤: 上記の仕様とSDKは、Visa Intelligent CommerceとTrusted Agent Protocolの上に構築されており、トークン化、認証、エージェントのID検証を通じて安全性を担保します。
Birwadker氏は「エージェントが自律的に決済を行う時代には、認証、データプライバシー、不正防止まであらゆるレイヤーにセキュリティを組み込む必要がある」と述べています。
EC事業者への影響と活用法
Stripe経由でMPPに対応する事業者にとって、エージェントからの決済は既存のStripeダッシュボード上で通常の取引と同じように表示されます。税計算、不正検知、レポーティング、返金処理など、人間向けの決済インフラがそのままエージェント決済にも適用されます。
すでにMPPを活用した新しいビジネスモデルが登場しています。ブラウザインフラのBrowserbaseはエージェントがセッション単位で課金できる仕組みを導入し、PostalFormはエージェントが郵便物の印刷・送付を決済できるサービスを開始しています。
EC事業者が注目すべきポイントは、MPPのローンチ時点で100以上のサービスがディレクトリに登録されていることです。モデルプロバイダ、開発者インフラ、コンピュートプラットフォーム、データサービスなど幅広い領域をカバーしています。また、Coinbaseのx402プロトコルやLightsparkのビットコイン決済など、MPPと互換性を持つプロトコルも拡大しており、エージェント決済のエコシステムは急速に広がっています。
Stripeユーザーであれば、PaymentIntents APIを使って数行のコードでMPP決済を受け付けられます。いますぐ対応する必要はありませんが、自社のAPIやサービスをエージェントに開放する準備を始める価値はあります。
まとめ
Visaのカード仕様提供により、MPPはステーブルコインだけでなく既存のカード決済網にも接続する「真の汎用プロトコル」へと進化しました。Visaは2026年のホリデーシーズンまでに数百万人の消費者がAIエージェント経由で購買を行うと予測しています。エージェントが「新しい顧客」となる時代に向けて、決済インフラの標準化が本格的に動き出しています。EC事業者にとっては、Stripe・Visa・Tempoという決済大手が揃って推進するMPPの動向を注視し、自社サービスのエージェント対応を検討するタイミングが来ています。




