この記事のポイント
- WalmartのAIアシスタント「Sparky」利用者の注文額が非利用者比35%増と判明
- アプリユーザーの約半数がSparkyを利用、検索型からインテント駆動型コマースへの転換を示す
- EC事業者はAIアシスタントによる「発見→購買」導線設計が売上拡大の鍵に
WalmartのCEOがQ4決算で語ったAIの成果

Walmart CEO reveals AI assistant users spend 35% more, signaling major shift in retail AI strategy
www.cdomagazine.tech2026年2月19日、Walmartは2026年度第4四半期(FY26 Q4)の決算説明会を開催しました。その中でCEOのJohn Furner氏は、AIショッピングアシスタント「Sparky」を利用する顧客の注文額が、非利用者と比較して「約35%大きい」と発表しています。
同四半期の売上高は1,909億ドル(前年同期比5.6%増)、調整後EPSは0.74ドルでアナリスト予想を上回りました。米国のeコマース売上は前年比27%増を記録し、デジタルチャネルは総売上の約23%を占めるまでに成長しています。
業界動向
小売業界では2025年後半から、AIアシスタントを顧客接点に組み込む動きが急速に進んでいます。Amazonの「Rufus」は月間アクティブユーザーが前年比140%増を記録し、年間100億ドル超の増収効果があると見込まれています。OpenAIはChatGPTにチェックアウト機能を統合し、TargetやInstacartと提携するなど、AIショッピング戦争は2026年に本格化しています。
こうした中でWalmartが示した「35%の注文額増加」という定量データは、AIアシスタントが単なる利便性ツールではなく、売上を直接押し上げるエンジンであることを裏付けるものです。Walmartのeコマース売上はFY26通年で1,500億ドルを突破しており、同社はeコマースが5年以内に総売上の半分を占めるという目標を掲げています。
Sparkyの仕組みと「インテント駆動型コマース」
Sparkyは2025年6月にWalmartが「ショッピングの未来はエージェンティック」と銘打って発表したAIアシスタントです。Walmartアプリ内にスマイルマークの「Ask Sparky」ボタンとして組み込まれており、以下の機能を備えています。
- 商品検索と発見: キーワードではなく、自然言語で「週末のBBQに必要なものは」と聞けば、関連商品をまとめて提案
- レビュー要約: 数百件のレビューを瞬時に分析し、購買判断に必要な情報を提示
- イベント連動の提案: スポーツの試合日程や天気予報と連携し、シーンに合った商品を推薦
- テキスト・画像・音声・動画対応: マルチモーダルな入力に対応し、再注文やサービス予約機能も拡張予定
Walmart U.S.のCEOに昇進したDavid Guggina氏は、決算説明会で「Sparkyは従来の検索をインテント(意図)駆動型コマースへ進化させている」と述べました。パーソナライゼーションと文脈理解の向上により、商品発見率とコンバージョン率が改善し、「より大きなバスケットサイズと、より高い購買頻度」につながっていると説明しています。
Furner CEOも「Sparkyがバスケットを構築すると、即日配送・ピックアップ・店舗受取を通じて実行される。AIのエンゲージメントが即座にフィジカルな成果に転換する」と、オムニチャネル戦略との統合を強調しました。現在Sparkyは米国限定ですが、今後の国際展開も計画されています。
加盟店向けAI「Wally」との二面戦略
Walmartのエージェンティックコマース戦略は消費者向けだけにとどまりません。同社は加盟店向けAIアシスタント「Wally」も展開しています。Wallyは独自データの「セマンティックレイヤー」上に構築され、以下の機能を提供します。
- 商品パフォーマンスの診断(なぜ売れている/売れていないのかを分析)
- 複雑なデータセットからのインサイト即時生成
- 運営上の質問への回答と未解決課題のチケット起票
- 予測モデルや高度な計算の自動化
技術的な知識を必要とせず、自然言語で質問するだけで実用的な洞察が得られる設計です。消費者側のSparkyが「買いたいものの発見」を、加盟店側のWallyが「売るべきものの最適化」を担うことで、プラットフォーム全体のAI駆動型エコシステムが形成されています。
さらにWalmartはSparky内に広告を統合する「Sparky Sponsored Prompts」も本格展開しており、会話型ショッピングフローの中に広告を自然に組み込むモデルを確立しています。Walmart Connectの広告事業はFY25に44億ドルの収益を生み出しており、AIアシスタント経由の新たな収益源としても注目されます。
EC事業者への影響と活用法
Walmartの「35%増」という数値は、すべてのEC事業者に重要な示唆を与えます。
発見から購買への導線再設計が急務です。 従来のキーワード検索ではなく、顧客の「意図」を起点としたAIアシスタントが、バスケットサイズとコンバージョンの両方を押し上げることが実証されました。自社ECサイトにおいても、チャット型の商品提案機能やコンテキスト連動レコメンドの導入を検討すべきタイミングです。
Walmartマーケットプレイス出品者は特に注視が必要です。 Sparkyが提案する商品に自社商品が含まれるかどうかは、AIが参照するデータの質に左右されます。商品タイトル、説明文、レビュー数と質、カテゴリ設定など、AI最適化(AEO: AI Engine Optimization)の観点から商品データを見直す必要があります。
広告戦略の再考も求められます。 Sparky Sponsored Promptsのような会話型広告は、従来のバナーやスポンサードプロダクトとは異なる文脈で消費者にリーチします。AIアシスタント経由の広告効果を測定・最適化する体制の構築が、今後の競争力を左右します。
まとめ
WalmartのSparkyが示した35%の注文額増加は、小売業におけるAIアシスタントの投資対効果を数字で証明した画期的な事例です。Amazon Rufus、OpenAI ChatGPT、Google Shopping AIなど競合も急速にAIコマース機能を強化する中、「AIが顧客の意図を理解し、最適な商品群を提案する」インテント駆動型コマースが標準となる時代が到来しています。
EC事業者が注目すべきは、Sparkyの国際展開のタイミングと、Walmart Connectの広告モデルがどこまでスケールするかです。AIアシスタントは単なる検索の代替ではなく、「発見・提案・購買・フルフィルメント」を一気通貫でつなぐコマース基盤そのものへと進化しつつあります。




