この記事のポイント
- エージェンティックコマース関連スタートアップへの投資と大手企業の取り組みが加速
- 「ゼロクリック購買」が2026年の主要トレンドとして浮上
- タイ最後のローカルECプラットフォームNocNocが撤退、海外勢が市場を席巻
今日の注目ニュース
Spangle AI、エージェンティックコマース基盤構築に1500万ドルを調達

Ex-Amazon executives lead startup building ProductGPT, an AI reasoning engine for e-commerce brands
www.digitalcommerce360.com元Amazon幹部が設立したSpangle AIが、NewRoad Capital Partners主導のシリーズAラウンドで1500万ドルを調達した。今回の調達により累計資金調達額は2100万ドルに達し、企業評価額は1億ドルとなった。
Spangle AIは、Eコマース向けの「エージェンティック・インフラストラクチャ」を構築するスタートアップである。同社が開発する「ProductGPT」は、各ブランドに特化したコマース向け推論エンジンであり、商品情報、広告コンテキスト、購買者の意図、コンバージョン要因を学習する。REVOLVEやSteve Madden、Alexander Wangなど、オンライン売上高合計約38億ドルのファッション小売9社が既に導入している。
Steve Maddenでは導入後、カート追加率が41%向上し、全体のコンバージョン率が20%上昇するなど、具体的な成果が報告されている。CEOのMaju Kuruvilla氏は、元Bolt CEO兼CTOで、共同創業者でCTOのFei Wang氏はSaks OFF 5TH元CTOという、Eコマース領域での豊富な実績を持つ経営陣が率いている。
エージェンティックコマースへの注目が高まる中、同分野のインフラを支えるスタートアップへの投資が本格化している点で、業界の方向性を示す重要な調達といえる。
2026年は「ゼロクリック購買」の年に

Forrester analyst predicts AI agents will enable purchases without clicking the buy button
www.retailbrew.com2026年の小売業界における最大のトレンドとして「ゼロクリック購買(zero-click buying)」が注目されている。Forresterのアナリスト、Sucharita Kodali氏によると、これは消費者が「購入」ボタンをクリックすることなく、アプリを離れることなく商品を購入できる体験を指す。
Gartnerの調査によれば、マーケティングリーダーの29%が既にAIエージェントを本番環境で運用しており、52%が顧客向けにテストを実施している。同社のKassi Socha氏は「2026年はエージェンティックAIの採用がホッケースティック曲線を描く年になる」と予測。消費者は店舗のディスプレイ、Webサイト、あらゆるタッチポイントでAIエージェントと接触するようになるという。
ただし、現状の技術には課題も残る。ChatGPTとInstacartの連携、WalmartのChatGPT即時チェックアウトなどの機能では、Apple Pay非対応のため手動での決済情報入力が必要になるなど、シームレスな体験には至っていない。2026年は「発表」だけでなく「実際の採用」が進む構築の年になると見られている。
エージェンティックコマース
Shopify、エージェンティックコマースへの対応力でアナリスト評価が上昇
Scotiabank raises Shopify to Sector Outperform with $200 price target on AI commerce opportunity
www.gurufocus.comScotiabank(スコシア銀行)がShopifyの投資判断を「Sector Outperform」に引き上げ、目標株価を21%上昇の200ドルに設定した。アナリストのKevin Krishnaratne氏は、エージェンティックコマースがShopifyのGMV(流通取引総額)を300ベーシスポイント押し上げる可能性があると分析している。
Shopifyは2026年1月初旬に「Winter Edition 2026」をリリースし、150以上の新機能を追加。その中核となる「Agentic Storefronts」機能により、Shopify店舗の商品がChatGPT、Perplexity、Microsoft Copilotなどのaiプラットフォームで直接表示・購入可能になる。CEOのTobi Lutke氏は「すべてのShopifyストアをデフォルトでエージェント対応にする」と宣言している。
Wells FargoやBarclaysも、Shopifyがai検索・発見の変化から最も恩恵を受ける企業だと評価している。ただし、P/E比率123.86倍という高いバリュエーションに対する懸念も一部で指摘されている。
Microsoft、Mirakl、J.P.MorganがNRF 2026でエージェンティックAIを議論

Tech giants and financial institutions unite to discuss the future of AI-powered retail
www.einpresswire.comNRF 2026(全米小売業協会の年次カンファレンス)と併催される「AI in Retail(AiR)」カンファレンスで、Microsoft、Mirakl、J.P. Morgan Paymentsがエージェンティックaiの主要セッションを担当することが発表された。
Microsoftのヴァイスプレジデント、Keith Mercier氏は「Unlocking the New Retail ROI: Return on Intelligence」と題した基調講演で、自動化とエージェント駆動システムの時代におけるROIの新しい考え方を提示する。また、MiraklのChief AI & Data OfficerであるAnne-Claire Baschet氏とJ.P. Morgan PaymentsのPrashant Sharma氏が、エージェンティックコマース時代における「発見の先」について共同講演を行う。
Microsoftは同カンファレンスに合わせ、「Copilot Checkout」を発表。小売サイトにリダイレクトされることなく、Copilot内で購入を完了できる機能で、Shopify、PayPal、Stripe、Etsyとの連携が米国で開始された。
グローバルEC動向
中国、ライブストリーミングECの新規制でAI利用を管理
New regulations require clear labeling of AI-generated hosts and real-time content monitoring
www.mlex.com中国の国家市場監督管理総局(SAMR)とサイバースペース管理局(CAC)が、ライブストリーミングECを規制する新たな措置を共同発表した。2026年4月10日に施行予定である。
新規制では、プラットフォーム事業者が「最低価格」契約を強制することを禁止。トラフィック制限、検索順位の降格、アルゴリズムによるペナルティを使って販売者に破壊的な価格引き下げや独占的な価格設定を迫る行為も規制対象となる。また、ユーザーの同意なくデータに基づいて異なる価格を設定することも禁止される。
AI関連では、AIホスト(AI生成のライブ配信者)は明確にラベル表示し、AI生成であることを常に消費者に通知することが義務付けられる。プラットフォームはリアルタイムでコンテンツを監視し、違反があれば即座に介入する義務を負う。コンプライアンス違反には厳格な罰則が科される。
急成長するライブコマース市場において、消費者保護と健全な競争環境の確保を目指す中国当局の姿勢が明確になった。
中国のオンライン小売シェア、約10年で2倍以上に拡大

Online shopping now accounts for 26.8% of China's consumer retail sales
www.yicaiglobal.com中国情報通信研究院(CAICT)の最新レポートによると、中国の消費財小売売上高に占めるオンラインショッピングの割合は2024年に26.8%に達した。2015年の10.8%から約10年で2倍以上に拡大したことになる。
この数字は世界でも突出した水準であり、中国がEコマース大国としての地位を確固たるものにしていることを示している。特にモバイルコマースの普及、決済インフラの整備、物流ネットワークの発達が、この急成長を支えてきた要因として挙げられる。
一方で、前述のライブコマース規制に見られるように、急成長に伴う課題への対応も進められている。市場の成熟とともに、健全な競争環境の整備が次のフェーズの課題となっている。
タイ最後のローカルEC「NocNoc」が閉鎖、累積損失4.5億バーツ

Thailand's last local EC platform shuts down after 6 years of losses totaling 450 million baht
www.bangkokpost.comタイのホームセンター大手SCG(サイアムセメントグループ)が50%出資するBetterBe Marketplace社が、運営するECプラットフォーム「NocNoc」の事業終了を発表した。2月9日に注文受付を停止し、5月9日までにサービスを完全終了する。
NocNocは6年間の運営で一度も黒字化できず、累積損失は約4.5億バーツ(約18億円)に達した。SCGは2025年第4四半期に約18億バーツの会計上の損失(非現金項目)を計上する見込みである。
タイのEコマース専門家Pawoot Pongvitayapanu氏は、NocNocがタイの「ナショナルECマーケットプレイス」を目指す最後のローカル事業者だったと指摘。その撤退は、上場企業の株主が短期利益を重視し、損失を吸収し続けることに消極的だったことを反映していると分析している。ShopeeやLazadaは黒字化まで10年以上を要したことを考えると、ローカル事業者には不利な競争環境だったといえる。
NocNocの撤退により、タイのEC市場はShopee、TikTok、Lazadaの外資3社が独占する状況となった。
ポルトガル、クリスマス期間のオンライン販売が19%成長

E-commerce accounts for 18% of retail sales with 446 transactions per second at peak
ecommercenews.euSIBS Analyticsの最新データによると、2025年のクリスマス期間におけるポルトガルのEコマース取引件数は前年同期比19%増加した。取引総額も約14%増加している。
Eコマースは小売売上高全体の18%、金額ベースでは21%を占めた。12月24日が最も取引が集中した日で、ピーク時には毎秒446件の取引が処理された。12月22日、23日も同様に活発な取引が見られた。
デジタル決済の成長も顕著である。ポルトガルの主要決済システムMBのデータによると、この期間の購入の5件に1件がMB WAYで行われた。MB WAYによる決済はオンラインで36%増、実店舗でも21%増を記録している。
企業動向・提携
Rich Sparkle、TikTokスターのライブコマースプラットフォームを9.75億ドルで買収

$975 million deal to acquire Khaby Lame's live commerce platform sends stock up 300%
www.tipranks.comRich Sparkle Holdings Limited(NASDAQ: ANPA)が、Step Distinctive Limitedを約9億7500万ドル相当の株式で買収する契約を締結した。株式発行による取引で、7500万株の新規発行が予定されている。
買収対象のStep Distinctiveは、世界的TikTokインフルエンサーのKhaby Lame氏が直接・間接的に49%の株式を保有しており、同氏は取引完了後も事業を主導する。買収対象企業はHong Kong Prosperous Sheep Corporation Limitedを100%保有し、ライブコマース事業と確立されたサプライチェーン・インフラストラクチャを運営している。
この取引は、Rich Sparkleの現在の時価総額(約2億5300万ドル)の約4倍に相当する規模である。取引完了には新規のNASDAQ上場申請が必要となり、実質的な支配権の変更を伴う。発表を受け、Rich Sparkle株は300%以上急騰し、1株24.2ドルから100ドル超へと上昇した。
インフルエンサー主導のライブコマースビジネスへの大型投資として、業界で注目を集めている。
Walmart、テック業界の重鎮Shishir Mehrotra氏を取締役に任命

Former YouTube CPO and Coda CEO joins Walmart board as company builds toward agentic AI future
corporate.walmart.comWalmart Inc.が、Superhuman(旧Grammarly)のCEOであるShishir Mehrotra氏を取締役に任命した。同氏は報酬・経営開発委員会およびテクノロジー・Eコマース委員会に参加する。
Mehrotra氏は25年以上のテック業界経験を持つ。Superhuman入社前は、ビジネス生産性・AIプラットフォームのCodaを共同創業しCEOを務め、数百万ユーザーと数万のチームが利用するプラットフォームに成長させた。その前はYouTubeでChief Product OfficerおよびCTOを務め、世界最大の動画プラットフォームへの成長に貢献した。
Mehrotra氏自身は「エージェンティックaiの未来に向けて構築を進めるWalmartの取締役に参加することは、私のキャリアで最も重要な技術的シフトに立ち会う稀有な機会」とコメント。Walmart取締役会議長のGreg Penner氏は、同社の「人主導、テック駆動」のアプローチを強化する人事だと述べている。
物流・フルフィルメント
マイクロフルフィルメント市場、年平均41.2%成長の予測
Market to expand from $6.49B in 2024 to $44.06B by 2032 driven by AI automation and hyperlocal e-commerce
www.globenewswire.comAnalystView Market Insightsの最新レポートによると、マイクロフルフィルメント市場は2024年の64億9200万ドルから、2032年には440億6100万ドルに拡大すると予測されている。年平均成長率(CAGR)は41.2%に達する見込みである。
この急成長は、Eコマースの加速、都市化の進展、自動化・ロボティクス技術の進歩によって牽引されている。マイクロフルフィルメントセンターは、高密度の都市部の近くまたは内部に設置される小規模な自動化施設で、注文処理の効率化とラストマイル配送のパフォーマンス向上を実現する。
世界のEコマース売上高が約27兆ドル、インターネットユーザーが55億人以上、世界人口の約58%が都市部に居住する中、政府主導のデジタル貿易・スマート物流イニシアチブがAI対応のマイクロフルフィルメント・インフラの導入を加速させている。
一方で課題もある。高い初期投資コストは中小規模の小売業者にとって参入障壁となっており、人口密集都市の不動産制約と高い賃料がスケーラビリティを制限している。
Giant Co.、6カ所のECフルフィルメントセンターを閉鎖へ

Ahold Delhaize USA shifts from centralized to store-based fulfillment affecting 493 employees
www.grocerydive.com米スーパーマーケットチェーンのThe Giant Co.およびGiant Foodが、計6カ所のECフルフィルメントセンターを閉鎖すると発表した。The Giant Co.がペンシルベニア州内5カ所、Giant Foodがバージニア州マナサス1カ所を閉鎖する。
閉鎖されるのはランカスター、フィラデルフィア、ウィローグローブ、クーパーズバーグ、ノースコベントリーの各センター。合計493名の従業員が影響を受けるが、グループ内の他のポジションへの異動機会が提供される。閉鎖は4月末までに完了する予定である。
親会社のAhold Delhaize USAは「ここ数年で、特にフルフィルメントモデルにおいて、Eコマースビジネスに万能のアプローチはないことを学んだ。より迅速な配送を期待する顧客に対応するため、可能な限り効率的に運営する必要がある」と説明している。
今後は集中型フルフィルメントから店舗ベースのフルフィルメントに移行し、Giant Directの注文は店舗スタッフがピッキングし、InstacartやDoorDashなどのサードパーティが配送を担当する。Ahold Delhaize USAは今回の閉鎖に伴い、約5000万ドルの非現金減損損失を計上する見込みである。
まとめ
2026年1月9日は、エージェンティックコマースの時代が本格的に到来したことを象徴する一日となった。Spangle AIへの1500万ドル調達、Shopifyの株式アップグレード、NRF 2026でのMicrosoft・Mirakl・J.P. Morganによる議論と、AI駆動の購買体験に対する業界の期待と投資が一気に加速している。
「ゼロクリック購買」というキーワードに代表されるように、消費者がボタンをクリックすることなく、AIエージェントを通じて商品を発見・購入する未来が具体化しつつある。Shopifyの「Agentic Storefronts」やMicrosoftの「Copilot Checkout」など、その基盤となる技術が次々と発表された。
一方で、タイのNocNoc撤退は、ローカルEC事業者がグローバルプレイヤーとの競争で苦戦を強いられている現実を浮き彫りにした。中国の新規制は、急成長するライブコマース市場における消費者保護と公正競争の確保に向けた取り組みである。
物流面では、Giant Co.の集中型フルフィルメント撤退とマイクロフルフィルメント市場の急成長予測が、ラストマイル配送の最適解を模索する業界の動きを示している。
明日以降も、NRF 2026での発表やエージェンティックAI関連のニュースが続くと予想される。特に、Microsoftの小売向けAI施策の詳細と、各社のエージェンティックコマース対応が注目ポイントとなる。




