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2026年3月19日

WalmartとTarget、AIショッピング戦略で真っ向対立――自社開発 vs パートナーシップの勝算

目次
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この記事のポイント

  1. WalmartはAI「スーパーエージェント」4種を自社開発、TargetはChatGPT・Geminiとの外部提携を軸にAIコマースを推進
  2. 小売最大手2社の戦略分岐が、AIコマース時代の「プラットフォーム選択」の判断基準を示している
  3. EC事業者は自社データ活用型AIと外部AIエンジン連携の両軸で、購買導線の最適化を検討すべき

米小売2強がAIショッピングツール戦略を公開

2026年3月18日、Adweekが両社のAI戦略を詳細に比較する記事を公開しました。WalmartとTargetは、AIが消費者の購買行動を左右する時代に向けて、それぞれ大きく異なるアプローチを選択しています。Walmartは自社開発のAIツール群で顧客体験からサプライチェーンまでを一気通貫で制御する道を選び、TargetはOpenAIやGoogleとのパートナーシップを通じて外部AIプラットフォームへの「出店」を急いでいます。

背景と業界動向

AIショッピングエージェントへの注目が急速に高まっています。Capital One Shoppingの調査によると、消費者の73%がすでに買い物のプロセスでAIを活用しており、生成AIプラットフォーム上のショッピング関連検索は2024年から2025年にかけて4,700%増加しました。

一方で、AIコマースには統一的な技術標準が存在しないという課題があります。Emberos創業者のJustin Inman氏は「各社がバラバラに構築すれば、完全な混乱が生じる」と警鐘を鳴らしています。この標準化の空白地帯で、WalmartとTargetはそれぞれの強みを活かした戦略を展開しているのです。

両社の戦略分岐には経営環境の違いも反映されています。Walmartは2025年にニューヨーク証券取引所からテック企業が集まるNasdaqへ上場先を変更し、テクノロジーカンパニーとしての立ち位置を鮮明にしました。一方のTargetは新CEO Michael Fiddelke氏のもと、数年間の売上低迷からの回復途上にあり、2026年には顧客体験に10億ドル(約1,500億円)を投資する計画を掲げています。

Walmart:4つの「スーパーエージェント」による内製AI戦略

Walmartが構築しているのは、4つの「スーパーエージェント」を核とする包括的なAIエコシステムです。

消費者向けのAIショッピングアシスタント「Sparky」は、Walmartのモバイルアプリ内で商品検索や推薦を行います。Walmartの調査では、顧客の81%がSparkyを使って購入前に商品の在庫確認や詳細を調べているとされています。さらに注目すべきは、Sparky利用者の注文単価が非利用者と比べて約35%高いというデータです。Walmartは現在、Sparky内でのスポンサード広告のテストも拡大しており、AIショッピング体験のマネタイズにも着手しています。

サプライヤー・広告主向けの「Marty」は、広告キャンペーンの分析や入札最適化、キーワード提案を自動化します。さらに店舗スタッフ向けエージェントと開発者向けエージェントを加えた4本柱で、小売業務全体をAIで最適化する構想です。

Walmart CEOのJohn Furner氏は「私たちは買い物を変えるツールを受け入れるだけでなく、自ら創り出している」と決算説明会で強調しました。

Target:ChatGPT・Geminiへの「出店」で先行者優位を狙う

Targetの戦略は、外部AIプラットフォームとの提携に大きく振り切っています。2025年11月にOpenAIとの提携を発表し、ChatGPT内アプリに専用のTargetアプリを構築しました。開発期間はわずか1カ月。ユーザーはChatGPTで「家族映画ナイトに必要なものは」と聞くだけで、スナックから水着・日焼け止めまで、Targetの商品をシームレスに閲覧・購入できます。

Targetの最高情報責任者Prat Vemana氏は「チャットの世界からブラウジングの世界へ、ファネルを簡単に移動できる」とその体験を説明しています。従来のモバイルアプリよりも、AIの幅広いクエリに対応して多くの関連商品を提案できる点が特徴です。

さらにTargetは、ChatGPTの広告プログラムにも早期参入しています。同社の広告部門Roundelが、ChatGPT内での会話型広告を販売する仕組みです。Google検索のAI ModeやGeminiを通じた商品販売も並行して進めています。

社内ではChatGPT Enterpriseを18,000人の従業員に導入し、トレンド分析ツール「Target Trend Brain」でデザイナーの商品開発を加速させています。

ただし、Vemana氏は「現時点では消費者はまだ上位ファネル、つまりインスピレーションの段階にいる」と認め、AIエンジン経由の実購買はこれからの課題であることも明かしています。

EC事業者への影響と活用法

両社の戦略は、EC事業者にとって重要な示唆を含んでいます。

まず「自社データの活用」です。Xnurta CEOのKashif Zafar氏は「広告主にとっての問題は、誰がAIを持っているかではなく、誰が買い物データを最速で自動最適化に変換できるかだ」と指摘しています。Walmartのように食料品やラストマイル配送で膨大なトランザクションデータを持つ企業は、自社AIの精度向上で圧倒的な優位に立てます。

一方で、自社開発リソースが限られる事業者にとっては、Targetのパートナーシップモデルが現実的な選択肢となります。ChatGPTやGeminiといったAIエンジンに商品カタログを接続し、「AIプラットフォーム上の棚」を確保する動きは今後加速するでしょう。

具体的なアクションとしては、以下が考えられます。

  • AIエンジンからの流入データの計測体制を整備する
  • 商品情報の構造化データ(スキーマ)を充実させ、AI回答に引用されやすくする
  • ChatGPTやGeminiのショッピング機能との連携可否を検証する
  • リテールメディアネットワーク経由のAI広告枠を検討する

まとめ

WalmartとTargetのAI戦略は、「プラットフォーム自体を作るか、プラットフォームに乗るか」という根本的な問いを突きつけています。eコマースアナリストのJuozas Kaziukenas氏は「AIとコマースの重なりに注目している者として、私はWalmartにしか注目していない」と断言するほど、Walmartの内製アプローチへの評価は高いです。

しかし、ChatGPTがチェックアウト機能から小売アプリへの誘導モデルに転換したことで、Targetのようなアプリ連携戦略にも追い風が吹いています。AIコマースの勝者が決まるのはまだ先ですが、両社の戦略の成否は、2026年後半の各社決算で明らかになるでしょう。EC事業者は今のうちに、自社にとって最適なAIコマースへの参入経路を見極めておく必要があります。