この記事のポイント
- SalesforceがNRF 2026でAgentforce Commerceの新機能を発表、SMS・WhatsApp・メールでの双方向AI会話を実現
- AIエージェント導入企業は59%高い成長率を達成、ホリデーシーズンのAIトラフィックは前年比119%増
- EC事業者は2026年2月以降、マーケティングメッセージを即座に購買チャネルへ転換可能に
Agentforce Commerce新機能の発表

Commerce on New Consumer AI Channels: Agentforce Commerce helps merchants connect their product catalogs and checkout experience to new channels
www.salesforce.com2026年1月10日、Salesforceは米国ニューヨークで開催中のNRF 2026: Retail's Big Showにおいて、Agentforce Commerce(旧Commerce Cloud)の大幅なアップデートを発表しました。今回の更新では、AIエージェントによる双方向コミュニケーション機能が中核となっています。
新機能により、EC事業者はメール、SMS、WhatsAppを通じて顧客と双方向の会話を行い、AIエージェントがパーソナライズされたオファーの作成、アップセル提案、決済処理、注文処理までを一貫して実行できるようになります。
背景と業界動向
エージェンティックコマースへの注目が急速に高まっています。Salesforceの調査によると、2025年のホリデーシーズンにおいて、AIアシスタント経由の小売トラフィックは前年比119%増加しました。さらに、AIエージェントを導入した企業は59%高い成長率を実現し、年間平均6.2%の売上増加を達成しています。
一方で、多くの企業が直面している課題があります。個別に導入したAIエージェントが「サイロ化」し、顧客体験が分断されているのです。Salesforceが提唱する「Agentforce 360」は、この問題を解決するために設計されました。販売、コマース、マーケティング、サービスを横断して統一されたコンテキストを共有することで、真の意味での統合体験を実現します。
発表された主要機能の詳細
今回発表された新機能は、大きく3つのカテゴリに分類されます。
双方向メッセージング機能
「Two-Way Email」「Two-Way SMS」「Two-Way WhatsApp」の3つの機能が追加されます。従来の一方向のマーケティング配信から、顧客が返信可能な双方向チャネルへと進化します。AIエージェントが顧客の返信を分析し、パーソナライズされた提案を行い、その場で決済まで完了できます。
Constellation Researchのアナリスト、Liz Miller氏は「6,000通のメール返信を仕分けるという人手の問題を自動化で解決できる」と評価しています。同時に「マーケターは戦略を根本から見直す必要がある」とも指摘し、双方向会話を前提としたコンテンツ設計の重要性を強調しました。
ガイド型ショッピング機能
「Agentforce Commerce Guided Shopping」は、会話型の分析機能を搭載し、顧客との対話から最適なアクションを判断します。プロモーションの提示やクロスセル提案を自動で行い、在庫確認や配送計算もリアルタイムで実行します。7言語に対応し、従来比2倍のパフォーマンス速度を実現しています。
コンテキスト検索
「Contextual Search」は現在オープンベータとして提供中です。顧客の自然言語による意図を理解し、より適切な検索結果を返します。たとえば「夏のビーチに合う服」といった曖昧な検索にも、コンテキストを考慮した結果を提示できます。
提供時期と利用条件
各機能の提供スケジュールは以下の通りです。
現在利用可能(Winter '26リリース)
- Guided Shopping(一般提供)
- Contextual Search(オープンベータ)
2026年2月提供予定
- Two-Way Email / SMS / WhatsApp
- Order Routing for Order Management
- Data 360 Zero Copy Access for Commerce
2026年春以降
- Agentforce Actions for Point-of-Sale(パイロット)
- Agentforce Actions for Merchandising(ベータ)
これらの機能はSalesforce Commerce Cloud契約者向けに提供されます。具体的な価格体系については、Salesforce営業担当への問い合わせが必要です。
EC事業者への影響と活用法
今回の発表は、EC事業者にとって3つの重要な示唆を含んでいます。
マーケティングの再定義
メール配信やSMS通知が、単なる情報提供から購買チャネルへと変化します。顧客がメッセージに返信するだけで、AIエージェントが対話を継続し、購入完了まで導きます。これにより、カゴ落ちからの復帰率向上や、プロモーションの即時コンバージョンが期待できます。
人員配置の最適化
双方向コミュニケーションには従来、カスタマーサービス担当者の増員が必要でした。AIエージェントがこの役割を担うことで、人的リソースをより複雑な問い合わせや戦略業務に振り向けられます。Pandoraの事例では、「注文はどこですか」といった定型的な問い合わせの自動化により、NPSスコアが10%向上しています。
導入時の注意点
双方向会話を前提としたコンテンツ戦略の再設計が必要です。従来の一方向配信とは異なり、顧客からの多様な返信パターンを想定したシナリオ設計が求められます。また、AIエージェントが適切に対応できない場合の人間へのエスカレーションルールも整備すべきです。
まとめ
SalesforceのAgentforce Commerce強化は、エージェンティックコマースの本格化を示す重要な発表です。AIエージェントが顧客との双方向コミュニケーションを担い、マーケティングから購買完了までをシームレスに実行する時代が到来しています。
2025年ホリデーシーズンの実績が示す通り、AIエージェント導入企業は明確な競争優位を獲得しています。EC事業者は2026年2月の新機能提供開始に向けて、双方向コミュニケーションを前提とした顧客体験の再設計を検討すべき時期に来ています。
次の注目ポイントは、2026年春に予定されているPOS向けAIエージェント機能です。オンラインとオフラインの境界を超えた統合的なエージェンティックコマース体験が、どのように実現されるかが焦点となります。




