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2026年3月12日

AmazonがShop Directを外部小売業者に本格開放、AIが他社サイトで代理購入する時代へ

目次
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この記事のポイント

  1. AmazonがShop Directプログラムを拡大し、1億点超・40万店舗以上の外部商品をAmazon上で発見可能に
  2. AIエージェント「Buy for Me」が他社サイトでの購入を代行、エージェンティックコマースが本格化
  3. EC事業者は新たな集客チャネルとして活用できる一方、データ主権やオプトイン方式への注意が必要

AmazonがShop Directのフィード連携を開始

2026年3月11日、AmazonはShop Directプログラムの大幅な拡張を発表しました。外部小売業者がサードパーティのプロダクトフィードを通じて商品カタログをAmazonに接続できる仕組みを新たに導入しています。

対応するフィード連携先はFeedonomics、Salsify、CEDCommerceの3社で、今後さらに拡大予定です。Amazon独自のマーチャントポータルも近日公開されます。Shop Directは現在、米国の全顧客に対してAmazon.com、Amazonショッピングアプリ、モバイルブラウザ、そしてAIアシスタント「Rufus」上で利用可能です。

背景と業界動向

Shop Directは2025年にAmazonが開始したプログラムで、Amazon自身が在庫を持たない商品でも検索結果に表示し、外部小売業者のサイトへ誘導する仕組みです。Jungle ScoutやCivicScienceの調査によれば、米国消費者の大多数が商品検索をAmazonから始めるとされており、Amazonは「ショッピングの起点」としての地位をさらに強化しようとしています。

今回の拡張により、Shop Directの対象商品は「1億点以上、40万店舗超」に達しました。Amazonのコアショッピング担当VP Amanda Doerr氏は「プロダクトフィードにより、マーチャントは在庫・価格・カタログをリアルタイムで同期し、顧客との関係を維持しながら有意義なトラフィックと売上を獲得できる」と公式発表で述べています

一方で、このプログラムは初期段階から議論も呼んでいます。2026年1月には、180以上の中小事業者が無断で商品を掲載されたと抗議する事態が発生しました。ShopifyやWooCommerceで運営する事業者の商品が、同意なくShop Directに表示されていたのです。今回のフィード連携対応は、こうした批判を受けて「マーチャント主導の参加」を可能にする改善策と位置づけられます。

AIエージェント「Buy for Me」の仕組み

Shop Directの中核を担うのが、AIエージェント「Buy for Me」機能です。顧客がAmazon上で外部商品を見つけた際、「Shop Direct」ボタンで外部サイトに遷移するか、「Buy for Me」ボタンでAmazonのAIに購入を代行させるかを選べます。

Buy for Meの流れは次のとおりです。顧客がボタンをタップすると、Amazonのチェックアウトページで配送先住所、税金、送料、決済方法を確認します。その後、AmazonのエージェンティックAIが暗号化された顧客情報を使い、外部サイト上で購入を完了します。注文はAmazonの「注文履歴」内の「Buy for Me Orders」タブで追跡可能です。

この仕組みにより、顧客は外部サイトでアカウントを作成する手間が省け、カート離脱率の低減が期待されます。数千万点の商品がBuy for Me対応済みとされています。

EC事業者への影響と活用法

新たな集客チャネルとしての可能性

EC事業者にとって、Shop Directは強力な集客エンジンとなり得ます。Amazonの数億人の顧客基盤にリーチできる点は大きなメリットです。特にニッチカテゴリやブランド専売品を扱う事業者にとって、Amazon検索での「行き止まり」を自社サイトへのコンバージョンパスに転換できる点は魅力的です。

参加方法はシンプルで、Feedonomics、Salsify、CEDCommerceのアカウント担当者に連絡するか、shopdirect@amazon.comに問い合わせることで開始できます。

注意すべきリスク

一方で、データの取り扱いには慎重な検討が必要です。Amazonはオフサイト送客を通じて、どの商品・価格帯・プロモーションが顧客に響くかを把握できるようになります。この情報が広告ターゲティングやBuy with Primeの勧誘に活用される可能性があります。

欧州のデジタル市場法(DMA)はゲートキーパーによるサードパーティデータの利用に制限を設けており、米国でも独占禁止法の観点から規制当局の注目を集めることが予想されます。事業者は参加前に、データ共有の範囲と利用条件を十分に確認すべきです。

また、返品ポリシー、配送タイムライン、ロイヤルティプログラムの扱いが、Amazon直販と異なる点も顧客に明示する必要があります。

まとめ

AmazonのShop Direct拡大は、同社が「ECストア」から「ショッピングの起点かつAIコンシェルジュ」へと進化する動きを象徴しています。Google Shopping、ShopifyのShopアプリ、ソーシャルプラットフォームが購買意図の獲得を競う中、AmazonはエージェンティックAIを武器に「箱がどこから届くかに関わらず、買い物はAmazonから始まる」世界を目指しています。

今後注目すべきは、マーチャント向けポータルの正式公開時期、フィードパートナーの拡充ペース、そしてShop DirectとBuy with Primeが将来的に統合されるかどうかです。EC事業者は、この新チャネルがもたらす機会とリスクの双方を冷静に見極める段階に入っています。