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2026年1月27日

EC・AIコマース ニュースダイジェスト(2026年1月27日)

目次
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この記事のポイント

  1. VisaとInceptionがCEMEA地域でエージェンティックコマース提携を発表
  2. eMarketerがAI Commerce 2026レポートで2029年に1440億ドル市場を予測
  3. 小売業者のAIコマース導入にはデータ所有権とブランド忠誠度低下のリスク

今日の注目ニュース

VisaとInceptionがCEMEA地域でエージェンティックコマース提携

G42傘下のAI企業Inceptionと決済大手Visaは、中央・東ヨーロッパ、中東、アフリカ(CEMEA)地域におけるエージェンティックコマースの普及を加速するための戦略的提携を発表しました。

本提携により、InceptionはVisa Intelligent Commerceを統合し、マーチャント、発行会社、マーケットプレイス向けに安全な自律型コマースとAI決済機能を提供します。両社は共同でエージェントベースのコマース機能を開発し、パイロットプログラムやクライアント向けデモンストレーションを通じて、企業のエージェント駆動型ショッピング導入を支援します。

Visa CEMEA製品・ソリューション責任者のGodfrey Sullivan氏は「AIエージェントがデジタルコマースの新時代を切り開いており、信頼がこれらの体験をスケールさせるための核心要件となる」と述べ、Inceptionの先進的AI機能とVisa Intelligent Commerceの組み合わせにより、企業が安全なエージェント駆動型の購買・決済体験を構築できると強調しました。

詳細記事: VisaとG42傘下Inceptionが戦略提携、CEMEA地域でエージェンティックコマースの普及を加速

eMarketerがAI Commerce 2026レポートを公開

eMarketerは「AI Commerce 2026」レポートを公開し、AIプラットフォーム経由のEコマース売上が2029年までに1,440億ドル(小売Eコマース全体の8.8%)に達すると予測しました。2026年には209億ドル(1.5%)と、2025年の約4倍に成長する見込みです。

レポートでは、消費者向けAIの進化への対応が2026年の小売業者にとって最重要テーマになると指摘。AIコマースがAmazonのマーケットプレイス支配を徐々に浸食し始める一方、自律型エージェンティックコマースはまだニッチな存在にとどまると分析しています。

また、2026年にはGoogleやAmazonがChatGPTに対して優位性を発揮し、より多くの消費者がGoogleの生成AI機能を利用すると予測。Amazonのサイト内AIツールはChatGPTのInstant Checkoutよりも多くの支出を生み出すとしています。

詳細記事: eMarketerが予測、AIコマース市場は2029年に1,440億ドル規模へ急成長

小売業者のAIコマース賭け、データ所有権に大きなリスク

Retail Diveは、外部AIコマースプラットフォームへの依存が小売業者にとってデータ所有権の喪失と仲介排除のリスクをもたらすと報じました。ウォートン・スクールのKartik Hosanagar教授は「これはインターネットと同様に小売業界を揺るがすだろう」と警告しています。

Adobeの調査によると、AI経由の米国Eコマーストラフィックは前年比758%増加。しかし、顧客が外部AIプラットフォームで購買を完結させる場合、小売業者は検索履歴や閲覧行動などの貴重なデータを失います。「エージェントを制御する者が力を持つ」とHosanagar教授は指摘します。

Deloitteの2026年小売業界グローバル見通しでは、調査対象の小売幹部の81%が2027年までに生成AIがブランドロイヤルティを弱体化させると回答。小売テクノロジー企業AptosのNikki Baird氏は、発見から決定、配送に至るすべてのデータを取得できなければ、小売業者は多くのコンテキストを失うと警告しています。

詳細記事: 外部AIコマースへの依存が小売業者にもたらすデータ所有権喪失と仲介排除リスク

エージェンティックコマース

FIS、銀行向けエージェンティックAI機能を発表

金融テクノロジー大手FISは1月12日、銀行がエージェンティックコマースをリード・拡大できるようにする業界初のソリューションを発表しました。

エージェンティックコマースでは、AIが顧客に代わって商品の調達、価格交渉、購入を自律的に行います。FISの新ソリューションは、銀行クライアントがエージェント起動型取引を識別・認可し、コンプライアンス対応を支援します。「Know Your Agent(KYA)」データとカード詳細を安全に使用できる機能を提供し、消費者保護のための詐欺防止も可能にします。

FISはMastercardとVisaと提携し、取引認可、詐欺対策、ロイヤルティ、カスタマーサービスなどの初期ユースケースを提供予定。2026年Q1末までに全FIS発行銀行クライアントに提供開始予定です。McKinseyの予測では、エージェンティックコマースは2030年までに米国で最大1兆ドル、グローバルで3〜5兆ドルの小売収益を生み出す可能性があります。

AIコマースツール

AI検索が7,500億ドルの米国収益に影響へ

McKinseyの調査によると、2028年までに米国で7,500億ドルの収益がAI検索経由で発生すると予測されています。消費者の50%が意図的にAI検索エンジンを探し求めており、多くのユーザーが購買意思決定のトップソースとしてAI検索を挙げています。

小売業者にとっては、AI検索に最適化された商品データの準備が急務となっています。従来のSEO戦略だけでなく、構造化データ、詳細な商品説明、AIが理解しやすいコンテンツ形式への対応が求められます。準備が不十分なブランドは、従来の検索チャネルからのトラフィックが20〜50%減少する可能性があると警告されています。

Nestlé、初のグローバルeコマースイノベーション責任者を任命

Nestléは、Mario Bencivinni氏をグローバルeコマースイノベーション&AIリードに任命しました。これはグループレベルで新設されたポジションです。

Bencivinni氏は「生成AIとエージェンティックAIによる次の革新の波を信じる企業の一員になれて感謝している」と述べ、セールス向けエージェンティックロードマップの策定と、各市場での生成AIプログラムの構築・展開・定着に取り組むと表明しました。「数ヶ月前に選定パイロットで始まったものが、はるかに大きなものに成長した。実験だけでは不十分な段階に入り、スケール、具体的な成果、変革管理が本当の課題となっている」と語りました。

グローバルEC動向

Temu、トルコで現地販売者のみに移行

中国発ECプラットフォームTemuは、トルコでの越境販売を停止し、現地トルコの販売者による国内配送のみを表示するよう変更しました。これによりTemuは実質的にトルコ専用マーケットプレイスへと転換しました。

この変更は、1月21日にトルコ競争当局がTemuのイスタンブールオフィスに立ち入り検査を行った数日後に実施されました。また、トルコ政府は2月1日から低価格商品の簡易通関制度を廃止し、海外からのオンライン注文のコストが上昇します。従来150ユーロだった閾値は30ユーロに引き下げられた後、今回完全に廃止されました。

Temuは2025年6月にトルコに現地法人を設立し、トルコの販売者の出品を開始していました。今回の変更が恒久的なビジネス転換か一時的な措置かについて、同社は公式声明を出していません。

ドイツEC市場、予想を上回る成長

ドイツのEC市場は2024年に800億ユーロ以上に回復し、2026年には920億ユーロ超に成長する見込みです。2022年の減少と2023年のほぼ横ばいからの回復が確認されています。

成長のすべてはマーケットプレイスから来ており、マーケットプレイスは8.8%成長した一方、他のオンラインチャネルは平均5.4%減少しました。ドイツのEコマース売上の半分以上がマーケットプレイスプラットフォーム経由で行われており、AmazonとeBayが引き続き支配的な地位を維持しています。ソーシャルコマースも2025年に71億ドルに達し、2028年には90億ドル近くに成長する見込みです。

企業動向・提携

Saks Off 5th、オンライン部門の清算を開始

Saks Globalのディスカウントオンライン部門であるSaks Off 5th Digitalが、在庫清算のための清算人雇用について米国破産裁判所の承認を得ました。2021年に2億ドルの投資を受けてオンラインとオフラインを分離した戦略が、わずか5年で巻き戻されることになります。

GlobalDataのNeil Saunders氏は「根本的な原因は、親会社Saks Globalが巨額の負債によりすべての部門を窮地に追い込んだこと」と分析。Saks Off Fifth Digitalは技術的に独立した部門であり、グループ内で最も弱く存続可能性が低い部門だと指摘しています。Saks Globalは1月14日にChapter 11破産保護を申請しており、Neiman Marcus買収時の過剰な負債が流動性危機を招きました。

AppLovin、eコマース好調でNeedhamがアップグレード

Needham & Companyは広告プラットフォームAppLovinの投資判断を「Buy」に引き上げ、目標株価を700ドルに設定しました。2026年のeコマース収益予測を10.5億ドルから14.5億ドルに上方修正しています。

同社のAI広告エンジン「Axon」がEtsy、Kalshi、Wayfair、Crocs、Yetiなど主要ブランドの獲得に成功し、GoogleやMetaへの挑戦者としての地位を確立しつつあります。Axon Pixelは435以上のウェブサイトで検出されており、数ヶ月前から大幅に増加。2025年後半に開始したセルフサービスモデルにより、小規模事業者でも大規模なマーケティングチームなしでキャンペーンを設定できるようになりました。

Consio AI、eコマース向け音声プラットフォームで330万ドル調達

eコマース向け電話・音声AIプラットフォームのConsio AIが、RTP Global主導のシードラウンドで330万ドルを調達しました。SaaStr FundとMu Venturesも参加しています。

同社はカスタマーサービスユニコーンGorgiasの初期メンバーが創業し、eコマース事業者が電話チャネルを活用して売上を伸ばすことを支援しています。24時間稼働のインバウンドAIエージェントが即座に電話に応答し、購入前のFAQ対応、チェックアウト案内、高意向の発信者を担当者にルーティングします。放棄されたカートや高単価リードへのアウトバウンドキャンペーン機能も提供しています。

まとめ

本日のニュースでは、エージェンティックコマースの本格展開に向けた動きが目立ちました。Visaの提携、FISの銀行向けソリューション発表により、決済インフラ側からのエージェンティックコマース対応が加速しています。一方、Retail Diveの分析が示すように、外部AIプラットフォームへの依存はデータ所有権の喪失というリスクも伴います。

eMarketerの予測では2026年にAIコマースが約4倍成長する見込みですが、小売業者にとっては「AIに最適化されたデータ準備」と「自社チャネルでの顧客体験維持」のバランスが重要な課題となりそうです。Nestléのような大手CPG企業がeコマースAI責任者を新設する動きも、この領域への投資拡大を示しています。