この記事のポイント
- FedExが2026 Investor Dayで高単価・重量物・長距離に特化したEC配送戦略を明確化
- 配送サーチャージの強化と475拠点超の閉鎖で、EC物流の構造的転換が加速
- 軽量・低単価商品を扱うEC事業者は代替キャリアの検討が急務
FedExが「選別型EC配送」を宣言

When it comes to e-commerce delivery, FedEx only wants longer-haul, heavy and high-value parcels because operating as a local courier for small packages isn't profitable.
www.freightwaves.com2026年2月13日、FedExはテネシー州メンフィスの本社で開催した2026 Investor Dayにおいて、EC配送事業の戦略転換を鮮明に打ち出しました。最高顧客責任者(CCO)のBrie Carere氏は「Tシャツを送るならFedExは向いていない。Ouraリング(高級スマートリング)を送るなら、FedExの出番だ」と述べ、低単価・軽量荷物からの明確な撤退を宣言しています。
FedExが狙うのは、950億ドル規模のグローバルB2C小包市場における高利益率セグメントです。同社はこの市場で現在約30%のシェアを持ち、2029年までに低い一桁台の成長を目指します。具体的には、長距離輸送(300マイル以上が地上サービス収益の70%)、重量物、越境ECという3つの軸を強みとして打ち出しています。
背景と業界動向
FedExの戦略転換は、EC物流業界全体の構造変化を反映しています。Amazonが自社配送網を拡大し、OnTracなどの代替キャリアがラストマイル配送の低価格競争を仕掛ける中、従来型の大手キャリアにとって軽量小包の配送は利益を圧迫する要因となっていました。
この流れの中でFedExは、同じく2月に発表した「Network 2.0」構想を加速させています。Supply Chain Diveの報道によると、同社は2027年末までに475拠点超を閉鎖し、従来別々に運営していたGround(陸送)とExpress(急送)のネットワークを統合します。すでに200以上の拠点が閉鎖済みで、2026年のピークシーズンまでに対象荷物の65%がNetwork 2.0に最適化された拠点を経由する見込みです。この統合により、20億ドルのコスト削減を見込んでいます。
つまりFedExは「量より質」への転換を、ネットワーク再編とセットで進めているのです。拠点を減らしてもサービス品質を維持できるのは、ラストマイルの地域密着型配送を手放し、長距離幹線輸送に集中する戦略があるからです。
サーチャージ強化とコスト転嫁の全貌
今回の戦略で注目すべきは、配送サーチャージ(追加料金)を収益の柱として明確に位置づけた点です。Carere氏は「ECで利益を出すには、増分コストを正しく反映する必要がある」と述べ、従来のように荷物密度を高めるために安価なEC荷物を受け入れる方針を完全に転換しました。
AFS LogisticsとTD Cowen投資銀行の調査によると、2025年第4四半期の地上小包料金は2018年比で34%上昇し、過去最高を記録しました。キャリアが課す平均サーチャージは前四半期比で13%増加しています。特にFedExとUPSが、需要の伸びが緩やかであるにもかかわらず「包括的な需要サーチャージ」を導入したことが大きな要因です。
2026年の具体的な料金変更としては、FedExが5.9%の基本運賃引き上げを1月5日に実施済みです。住宅配送サーチャージは1件あたり6.55ドルから6.95ドルへ8.4%の引き上げとなり、基本運賃の引き上げ率を大きく上回ります。さらにピークシーズンのサーチャージだけでなく、年間を通じた容量調整料金を米国のみならず欧州・アジアにも展開する方針を明言しています。
リバースロジスティクスという成長領域
一方でFedExは、EC事業者にとっての新たな価値提案も打ち出しています。それが返品物流(リバースロジスティクス)です。同社はこの市場を5億ドルの総需要規模と見積もっています。
parcelLabとの協業で新たなAI搭載の購入後デジタルツールを提供開始しました。配送や返品に関する一般的な問い合わせへのAI自動対応、追跡・返品データからのパターン分析による問題発見機能が含まれます。また、箱不要・ラベル不要の返品サービスと店舗ドロップオフ拠点を組み合わせることで、消費者体験を簡素化しています。
Carere氏は「返品は当社のネットワークでは収益性の高いB2B輸送として計上される」と述べており、小売業者の物流センターへの集約配送で路線密度を確保できるメリットを強調しています。
EC事業者への影響と活用法
FedExの戦略転換は、EC事業者に対して明確なメッセージを送っています。
影響を受ける事業者として、軽量・低単価商品(アパレル、雑貨など)を主力とするEC事業者が挙げられます。FedExが意図的にこのセグメントから撤退するため、今後さらなる料金引き上げやサービス縮小が見込まれます。OnTracやDHL eCommerceなどの代替キャリアの検討が必要です。
恩恵を受ける事業者は、高単価商品(ジュエリー、電子機器、ヘルスケア製品など)や重量物を扱う事業者です。FedExが品質とサービスに注力することで、配送体験の向上が期待できます。複数の配送拠点を持たない中小EC事業者にとっても、FedExの長距離ネットワークは有力な選択肢となります。
コスト対策としては、AFS LogisticsのMingshu Bates氏が「記録的な高料金だが、どこを見てどのボタンを押すかを知っていれば価格交渉の余地はある」と指摘しています。2025年末から割引率は上昇傾向にあり、戦略的に重要な荷物量を提供できる事業者にはキャリア側も譲歩する姿勢を見せています。
まとめ
FedExの「プレミアムEC配送への全振り」は、EC物流業界の二極化を象徴する動きです。大手キャリアは高利益率のセグメントに集中し、軽量・低単価の配送は代替キャリアやAmazonの配送網に委ねるという構図が一層鮮明になりました。
今後の注目ポイントは、Network 2.0の統合進捗と、サーチャージ戦略のグローバル展開です。特に欧州では、FedExがInPostの買収を通じて宅配ボックスネットワークを構築する動きもあり、プレミアム戦略と利便性の両立がどこまで進むかが次の焦点となります。EC事業者にとっては、自社の商品特性に合わせた配送戦略の再設計が求められるタイミングです。




