この記事のポイント
- FiservがMastercardのAgent Pay Acceptance Frameworkを大規模導入する初の主要決済プロセッサーに
- AIエージェントによる自律的な決済処理が標準化され、EC業界全体の変革が加速
- 事業者は既存インフラのまま、AIコマース対応を低コストで実現可能に
FiservがMastercardと提携拡大を発表

Fiserv, Inc. (NASDAQ: FISV) and Mastercard (NYSE: MA) are extending their partnership to advance agentic commerce...
investors.fiserv.com2025年12月22日、米国の大手決済テクノロジー企業FiservとMastercardは、エージェンティックコマース分野での提携拡大を発表しました。Fiservは、MastercardのAgent Pay Acceptance Frameworkを大規模に導入する最初の主要決済プロセッサーとなります。
この提携により、AIエージェントが消費者に代わって安全に決済を実行するための技術基盤が、世界中の加盟店に提供されることになります。Fiservは同時期にVisaとも同様の提携を発表しており、複数のカードネットワークに対応したマルチネットワーク戦略を推進しています。
背景と業界動向
エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者の指示に基づいて商品の検索、比較、購入までを自律的に実行する次世代のEC形態です。2025年後半から、主要な決済ネットワークやテクノロジー企業が相次いでこの分野への参入を発表しています。
Visaの調査によると、米国の消費者の47%がすでに価格比較やおすすめ商品の提案などでAIツールを活用しています。Visaは2026年のホリデーシーズンまでに、数百万人の消費者がAIエージェントを通じて購買を完了すると予測しています。
この流れを受け、従来の人間が操作することを前提としていた決済システムを、AIエージェントによる自律的な取引に対応させる動きが加速しています。Fiservは米国最大級の決済プロセッサーとして、Clover POSシステムやeコマースプラットフォームを通じて数百万の加盟店にサービスを提供しており、今回の提携は業界全体に大きな影響を与えると見られています。
Mastercard Agent Pay Acceptance Frameworkの技術的詳細
今回の提携の中核となるのが、Mastercard Agent Pay Acceptance Frameworkです。このフレームワークは、AIエージェントが既存のカード決済システム内で安全に取引を行うための技術標準とガバナンス規則を定めています。
主な技術要素は以下の3つです。
ネットワークトークナイゼーション: カード番号をネットワーク発行のトークンに置き換えることで、機密情報を露出させることなく取引を可能にします。Fiservは、Mastercardの「Secure Card on File」ソリューションと統合し、加盟店やパートナーに代わってネットワークトークンリクエスターとして機能します。
強力な認証メカニズム: 正規のAIエージェントと悪意のある自動化ボットを区別するための仕組みです。エージェントの承認状況や取引パラメータを評価し、消費者が意図した取引であることを検証します。
不正防止コントロール: AI発信の取引を既存のカードネットワークのレール上で検証し、不正取引を防止します。従来の不正検知システムと連携しながら、新しい取引パターンにも対応します。
Mastercard米国共同社長のChiro Aikat氏は「これらの技術は取引を簡素化し、摩擦を減らし、企業がより速く、よりパーソナライズされた体験を提供できるようにします」と述べています。
Visaとの提携との関係
Fiservは同時期に、Visaとの戦略的提携も発表しています。VisaのTrusted Agent Protocolは、Mastercardのフレームワークと同様に、AIエージェントによる安全な決済を実現するためのオープンフレームワークです。
Trusted Agent Protocolは、信頼できるエージェントと悪意のあるボットを区別し、すべてのやり取りが消費者によって承認され、決済情報が改ざんされていないことを検証します。Fiservがこの両方のプロトコルを採用することで、加盟店は特定のカードネットワークに縛られることなく、幅広いエージェンティックコマース取引を受け入れることが可能になります。
FiservのSanjay Saraf氏(SVP兼グローバルチーフプロダクトオフィサー)は「私たちは共に、あらゆる規模の加盟店がこの新しいコマース時代に自信を持って参加できるよう支援しています。信頼できる標準とプログラマブルペイメントを活用して成長を解き放ちます」とコメントしています。
EC事業者への影響と活用法
今回の提携は、EC事業者にとって以下のような実務的な意味を持ちます。
既存インフラでの対応が可能: Fiservのプラットフォーム(Clover POSやeコマースソリューション)を利用している加盟店は、カスタムロジックを構築することなく、AIエージェント発信の取引を受け入れることができます。取引は標準的な承認、決済、照合フローを通じて処理されます。
導入コストの低減: エージェンティックコマース対応のために独自のシステム開発を行う必要がなく、Fiservの統合サービスを通じて対応できます。これにより、中小規模の事業者でもAIコマース時代への参入障壁が大幅に下がります。
顧客関係の維持と新たな収益機会: Mastercard Agent Pay Acceptance Frameworkは、加盟店が顧客との関係をコントロールしながら、新たな収益源を開拓できるよう設計されています。
利用可能時期: Visaは2026年初頭からアジア太平洋地域と欧州でパイロットプログラムを開始し、2026年のホリデーシーズンには本格展開を予定しています。Fiservを通じた具体的なサービス開始時期は今後発表される見込みです。
まとめ
FiservとMastercardの提携拡大は、エージェンティックコマースが実証段階から本格的な商用展開へと移行する重要なマイルストーンです。世界最大級の決済プロセッサーが、主要なカードネットワークのAIコマースフレームワークを同時に採用することで、業界標準の確立と普及が加速すると予想されます。
EC事業者にとっては、2026年を見据えた準備期間として、自社の決済インフラがエージェンティックコマースに対応可能かどうかを確認することが重要です。特にFiservのソリューションを利用している事業者は、追加開発なしでAIコマース対応が可能になる可能性が高く、今後の具体的なサービス内容に注目が集まります。




