この記事のポイント
- UnileverがGoogle Cloudと5年間の戦略的パートナーシップを締結し、AI基盤をAzureからGoogle Cloudへ移行
- AIエージェントが商品を発見・購入する「エージェンティックコマース」時代に向けたCPG業界の大転換
- EC事業者は「見えない棚」への対応として、商品データの構造化とAIエージェント最適化が急務
Unilever、Google Cloudとの大型提携を正式発表
Unilever and Google Cloud partner to pioneer next generation of consumer goods technologies, embedding AI at the core of operations.
www.unilever.com2026年2月17日、消費財世界大手のUnileverはGoogle Cloudと5年間の戦略的パートナーシップを締結したと発表しました。Dove、Vaseline、Hellmann'sなど世界的ブランドを擁するUnileverが、Google Cloudの「Vertex AI」やGeminiモデルを活用し、ブランド発見、マーケティング計測、そして「エージェンティックコマース」(AIエージェントが主導する新しい購買体験)を本格推進します。
Unileverのウィレム・ウイジェン最高サプライチェーン・オペレーション責任者は「テクノロジーはUnileverにおける価値創造の核心に位置づけられた」と述べ、「AIによって形作られる環境でブランドが発見・選択されるようになる中、我々はこのシフトを主導しなければならない」と強調しました。
業界動向
今回の提携は、Unileverのクラウド戦略における大きな転換を意味します。Unileverは2023年にAccentureおよびMicrosoftと連携し、1,700台以上のサーバーと380の基幹業務アプリケーションをMicrosoft Azureへ移行する大規模クラウドマイグレーションを完了しました。当時はAzureが「クラウド基盤の大部分」を担っていました。
しかしComputer Weeklyの報道によると、Google CloudのAlex Rutter EMEA AI担当マネージングディレクターは「Google CloudがUnileverの統合クラウド・データプラットフォームの集約先となる」と明言しています。Unileverは引き続きMicrosoft 365やCopilotなどの業務生産性ツールを使用しますが、AI駆動のデータ基盤はGoogle Cloudへ移行する方針です。
一方、CPG業界全体では「エージェンティックコマース」への関心が急速に高まっています。McKinseyのレポートによると、AIエージェントによるコマースは2030年までに米国小売市場で1兆ドル規模に達すると予測されています。Google Cloud自身も2026年1月に公開したブログ記事で、AIエージェントが商品を検索・比較・購入する「見えない棚」(Invisible Shelf)の概念を提唱しています。
提携の3つの柱
今回の提携は、以下の3つの柱で構成されています。
エージェンティックコマースとマーケティングインテリジェンスVertex AIやGeminiを活用し、ブランド発見、コンバージョン、効果測定にわたる「次世代マーケティング」の能力を構築します。消費者の購買行動が会話型・エージェント型へシフトする中、CPGブランドがどのように発見・選択されるかを根本から再設計する取り組みです。
統合データ・クラウド基盤Unileverの基幹アプリケーションとデータプラットフォームをGoogle Cloudへ移行し、バリューチェーン全体でスケーラブルなAI展開を可能にする統合環境を構築します。Google CloudのRutter氏は、これにより「データをより迅速にアクション可能なインサイトへ転換できる」と述べています。
先進AI技術の導入加速Unileverの業界知見とGoogleのAI技術を組み合わせ、「エージェンティックワークフロー」と呼ばれるインテリジェントシステムを開発します。これは複雑な業務プロセスを自律的に実行できるAIシステムであり、RAG(Retrieval-Augmented Generation)的なアプローチでUnilever独自のデータからビジネスに関連する洞察を生成する仕組みです。
Google Cloud EMEA社長のタラ・ブレイディ氏は「レガシーシステムの近代化にとどまらず、Geminiのような先進モデルを展開し、推論し、学習し、行動する知能システムを構築する」と発表しています。
EC事業者への影響と活用法
今回の提携は、売上505億ユーロ・37億人のユーザーを持つ世界最大級のCPG企業が「エージェンティックコマース」に本格投資することを意味します。EC事業者にとって、以下の実務的な示唆があります。
AIエージェント向けの商品データ最適化が不可欠にGoogle Cloudは「見えない棚」ブログで、「商品データを新しいパッケージとして扱え」と提言しています。サステナブル素材やアレルギー情報など、AIエージェントが検索・判断できるように構造化データを整備することが、今後の可視性を左右します。
SEOからGEOへの戦略転換AIエージェントが消費者に代わって商品を探す時代では、従来のSEOだけでは不十分です。AIが理解・推薦できる形式でコンテンツを最適化する「GEO」(Generative Engine Optimization)への対応が求められます。
マルチクラウド環境でのAI活用が標準にGartnerのリディア・リョン副社長は、Computer Weeklyの取材に対し「中堅・大企業の約80%が複数のパブリッククラウドを利用しており、この傾向は過去5年間ほぼ変わっていない」と指摘しています。目的別にクラウドを使い分ける「機能別セグメンテーション」が主流になりつつあります。
まとめ
Unileverの今回の決断は、CPG業界における「AIファースト」への不可逆的なシフトを象徴しています。消費者がAIエージェントを通じて商品を発見・購入する時代が現実に近づく中、世界最大級のCPG企業がGoogle Cloudと組んでエージェンティックコマースを推進する意味は極めて大きいと言えます。
EC事業者にとっての注目ポイントは、UnileverとGoogle Cloudが具体的にどのような「エージェンティックワークフロー」を実装するかです。Googleが提唱する「Consumer-to-Merchant」「Merchant-to-Merchant」のエージェント間取引が実用化されれば、商品の発見・推薦・決済のあり方が根本的に変わります。今後数ヶ月で公開されるであろう具体的なユースケースに注目してください。




