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2026年3月10日

Azoma、AIエージェント向け商品情報プロトコル「AMP」を発表──L'Oréal、Unileverなど大手5社が早期採用

目次
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この記事のポイント

  1. AzomaがAIエージェント向け商品情報標準「Agentic Merchant Protocol(AMP)」を発表
  2. AIが購買を代行する時代に、ブランド側が商品情報の主導権を握る仕組みとして注目
  3. EC事業者は「人間向け」だけでなく「AI向け」の商品情報整備が急務に

AIエージェントに自社商品を「見つけてもらう」新標準が登場

ロンドンに本社を置くAIコマーススタートアップAzomaが、2026年3月12日にロンドンで開催される世界初の「エージェンティックコマース最適化」イベントにおいて、新しいフレームワーク「Agentic Merchant Protocol(AMP)」を正式に発表します。このプロトコルは、AIエージェントが自律的に商品を検索・比較・購入する時代に、ブランドが商品カタログ情報の主導権を維持するための業界標準として設計されています。

VentureBeatの報道によると、L'Oreal、Unilever、Mars、Beiersdorf、Reckittの大手消費財5社が早期採用パートナーとして名を連ねています。

業界動向

ECの世界では、AIエージェントの存在感が急速に高まっています。2025年のブラックフライデーまでに、AIチャットボットとエージェントがグローバルで142億ドル(米国だけで30億ドル)の売上を生み出しました。Amazonの商品検索AIアシスタント「Rufus」が検索の38%を占めるなど、消費者の購買行動は大きく変化しています。

nShiftの調査によれば、消費者の58%が商品レコメンデーションに従来の検索ではなく生成AIツールを利用するようになっています。さらにMcKinseyは、エージェンティックコマースによる米国小売売上が2030年までに9,000億〜1兆ドル規模に達すると予測しています。

こうした流れの中で、OpenAIのChatGPTショッピング機能やGoogleのUniversal Commerce Protocol(UCP)など、AIエージェントとEC基盤をつなぐ仕組みが次々と登場しています。しかし、これらはプラットフォーム側の規格であり、ブランドが自社の商品情報をどうAIに「正しく理解させるか」という課題は手つかずのままでした。AzomaのAMPは、まさにこの「ブランド側の視点」を埋めるために設計されたプロトコルです。

AMPの4つの主要コンポーネント

AMPは、ブランドが商品カタログをAIエージェントに最適化するための統合フレームワークで、4つの柱で構成されています。

機械ネイティブカタログ(Machine-Native Catalogues)は、LLM(大規模言語モデル)が直接読み取れるよう設計されたデータ構造です。従来の商品ページ(PDP)が人間向けに最適化されていたのに対し、AMPのカタログはペルソナレベルのシグナルを付加した、AIエージェント専用の情報形式を採用しています。

プログラマティック・オープンウェブ配信(Programmatic Open Web Distribution)は、ブランドの公式商品情報がオープンウェブ上でAIエージェントに正確に伝わることを保証する仕組みです。AIエージェントが参照する情報と、ブランドが提供する正式な商品データの一致を担保します。

エージェント非依存型インフラ(Agent-Agnostic Infrastructure)は、特定のAIアシスタントやマーケットプレイスにロックインされない設計です。OpenAI、Google、その他の新興エージェントエコシステムのいずれとも連携できます。

パフォーマンス可視化(Performance Visibility)は、AIエージェントが自社商品の属性をどのように「重み付け」しているかを測定し、エコシステム全体でのコンプライアンスを検証するツール群です。

加えて、独自の「RegGuard コンプライアンス」エンジンが、生成されたすべてのコンテンツをブランドガイドラインやFDA/DSHEA(米国の健康食品規制)などの規制基準に照らして自動監査します。

Azoma CEOが語る「従来ECの基盤を壊す」宣言

AzomaのCEO Max Sinclair氏は、元Amazon幹部として6年間在籍した経験を持ちます。シンガポールでのAmazon立ち上げやEU全域でのAmazon Grocery展開を主導した人物です。

同氏はAMPについて「従来のECの基盤を打ち壊すもの」と位置づけています。「何十年もの間、AmazonやWalmartのようなマーケットプレイスが商品詳細ページ、ランキング、流通をコントロールするゲートキーパーとして機能してきました。ブランドはPDP、広告、検索結果という限られたエンドポイントを最適化してきたのです」と、既存の構造からの転換を強調しています。

Azomaは2025年12月に400万ドルのプレシリーズA資金調達を完了しており、Ignite Ventures、eBay Ventures x Techstarsなどが出資しています。同社は2025年Q2には黒字化を達成し、過去10カ月で7桁の収益を記録しています。

EC事業者への影響と活用法

AMPの登場は、EC事業者に対して明確なメッセージを投げかけています。「AIエージェントに選ばれる」ための商品情報整備が、今後の競争力を左右するということです。

具体的に検討すべきポイントは以下の通りです。

まず、「商品データのAI対応」が最優先事項になります。従来のSEO対策に加え、AIエージェントが機械的に読み取れる形式で商品情報を整備する必要があります。配送条件、返品ポリシー、在庫状況など、AIエージェントが比較判断に使う情報が曖昧だと、人間が目にする前にスキップされてしまいます。エージェンティックコマース最適化ガイドも併せて参照してください。

次に、「マルチエージェント対応」の視点が重要です。GoogleのUCPやOpenAIのエージェンティックコマースプロトコルなど、複数のプラットフォームが独自規格を展開する中で、特定のエコシステムに依存しない柔軟な対応が求められます。AMPのエージェント非依存型設計は、この課題への一つの解答です。

さらに、「ブランドコンプライアンスの自動化」も見逃せません。AIエージェントが生成・参照する商品情報が、自社のブランドガイドラインや各国の規制に準拠しているかをリアルタイムで監視する仕組みが必要になります。Adobeのエージェンティックコマース標準への取り組みも、同様の課題意識から生まれています。

まとめ

AzomaのAMPは、AIエージェントが購買の主役になる時代において、ブランドが商品情報の主導権を握り続けるための新しい標準を提示しています。L'OrealやUnileverといったグローバル大手の早期採用は、この分野への投資が「将来の話」ではなく「今すぐの課題」であることを示しています。

GoogleのUCP、OpenAIのショッピング機能、Adobeのエージェンティックコマース対応など、プラットフォーム側の動きも加速しています。EC事業者にとっては、これらの標準やツールの動向を注視しつつ、自社の商品データを「AIに読まれる前提」で再設計する取り組みが急務です。3月12日のロンドンでのAMP正式発表で、さらに具体的な技術仕様や導入事例が明らかになることが期待されます。