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2026年3月31日

Deeplumen、Open Commerce Protocolでエージェンティックコマースのインフラ標準化に挑む

目次
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この記事のポイント

  1. Deeplumenが「Schema Contract Layer」としてOCPを発表し、AIエージェントによる商取引の発見・交渉・決済を標準化
  2. UCP for Java、Agentic Pageに続く3つ目の製品で、M2AI(Marketing to AI)フルスタックが完成
  3. GoogleのUCPやOpenAIのACPとは異なるアプローチで、OpenClawエコシステム上の独自規格を展開

Deeplumen、AIエージェント向け商取引プロトコル「OCP」を発表

2026年3月30日、M2AI(Marketing to AI)インフラ企業のDeeplumenが、Open Commerce Protocol(OCP)の提供開始を発表しました。OCPはAIエージェントが人間に代わって商品の発見から交渉、決済までを自律的に実行するための「Schema Contract Layer」です。OpenClawエコシステム上に構築された初のオープンプロトコルとして、エージェンティックコマースの新たなインフラ標準を目指しています。

「M2AI」という新しいパラダイム

OCPを理解するには、Deeplumenが提唱するM2AI(Marketing to AI)というフレームワークを押さえる必要があります。従来のデジタルマーケティングは人間の「知覚」を最適化するものでした。しかしAIエージェントが購買を代行する時代では、ブランドが最適化すべき対象は「AIの意思決定ロジック」に変わります。

DeeplumenのCOO Joy Wu氏は「M2AI時代のゴールはブランドの幻想を作ることではなく、AIエージェントが発見・検証・取引を行うための高精度な構造化データを提供することだ」と述べています。この思想が、OCPを含むDeeplumenのフルスタック戦略の根幹にあります。

OCPの三層アーキテクチャ

OCPは、エージェントによる商取引をDiscovery(発見)Intention(意図)Deal(取引)の3つのレイヤーで構造化しています。

Discovery層では、AIエージェントが中央管理なしにブランドを自律的に発見し、チェックアウトやID連携などの対応機能を検証します。Intention層は購買意図と事業者要件のすり合わせを担い、予算制約や人間の最終承認が必要なケースにも対応します。Deal層では分散ノード間で拘束力のある契約と決済を実行し、追記専用のイベント台帳により出荷・返品・紛争処理まで追跡可能です。

さらにOCPはデュアルモード運用に対応しています。構造化された「Merchant Profile」を使う精密モードと、既存のWebサイトから情報を推論する互換モードの2つです。これにより、構造化対応が済んでいない事業者でもエージェント経由の取引に参加できる設計になっています。

フルスタック完成への3ステップ

OCPの発表は、Deeplumenが2026年に入って展開してきたフルスタック戦略の第3弾であり、集大成です。

1月に発表されたUCP for Javaは、Googleが提唱するUniversal Commerce Protocol(UCP)のJava実装を提供するプロトコル層です。レガシーなJavaベースのコマースシステムをAIエージェントと接続することを目的としています。2月のAgentic Pageはコンテンツ層として、ブランドのWebサイトをLLMが理解・引用できる構造化データに変換する「セマンティック翻訳機」の役割を果たします。

そしてOCPがSchema Contract Layerとしてこのスタックの最上位に位置し、エージェントが実際に商取引を実行するための契約・決済フレームワークを提供します。

エージェンティックコマースのプロトコル競争における位置づけ

現在、エージェンティックコマースのプロトコル領域では複数の規格が並立しています。GoogleとShopifyが共同開発するUCPにはWalmart、Target、Etsyなど60社以上が参画しており、デファクト標準の地位を固めつつあります。一方、OpenAIとStripeが開発するACP(Agentic Commerce Protocol)はChatGPT上で既に稼働中です。

OCPはこれらとは異なり、OpenClawエコシステムに特化した独自路線を取っています。UCPがプラットフォーム横断の汎用標準を目指すのに対し、OCPはOpenClaw内でのエンドツーエンドの取引体験に焦点を当てています。ただし、OCPのソースコードはGitHub上で公開されており、オープンな拡張が可能です。

EC事業者への影響と活用法

EC事業者にとって、OCPの登場は「AIエージェントにどう自社を見つけてもらうか」という課題の選択肢が増えたことを意味します。

現時点で優先すべきは、GoogleのUCPへの対応です。Shopifyを利用中の事業者は管理画面からの設定でエージェント経由の販売チャネルが追加される見込みで、導入障壁は低いです。一方、Java系の既存システムを運用している事業者は、DeeplumenのUCP for Java SDKを検討する価値があります。

OCPについては、OpenClawエコシステムの今後の普及度合いを見極めることが重要です。プロトコルが乱立する現在の状況は、かつてのVHS対Beta戦争に例えられることもあります。Linux Foundationが設立したAgentic AI Foundation(AAIF)による標準化が進む中、どの規格が生き残るかはまだ流動的です。

まとめ

DeeplumenのOCPは、M2AIという新しいパラダイムのもとでエージェンティックコマースのフルスタックインフラを完成させた点で注目に値します。UCP for Java、Agentic Page、OCPという3層構造は、ブランドがAIエージェント時代に適応するための包括的な青写真を示しています。

ただし、UCPやACPといった有力プロトコルが先行する中、OCPが独自のポジションを確立できるかは今後の普及次第です。EC事業者としては、まず業界標準となりつつあるUCPへの対応を固めつつ、OCPを含む新興プロトコルの動向を注視していくことが現実的なアプローチとなるでしょう。