この記事のポイント
- eBayがEtsyからZ世代向けファッションリセールのDepopを約12億ドル(現金)で買収
- 急成長する中古ファッション市場でeBayが若年層獲得とリコマース戦略を加速
- EC事業者はリセール・サーキュラーエコノミー対応を本格的に検討すべき段階
eBayがDepopを12億ドルで買収、Etsyは本業回帰へ

EBay stock was surging Thursday after the company posted strong Q4 results and said it will buy Depop from Etsy.
www.investors.com2026年2月18日、eBayはEtsyからファッションリセールマーケットプレイス「Depop」を約12億ドル(現金)で買収する最終合意を発表しました。取引の完了は2026年第2四半期を予定しており、規制当局の承認を経て正式に成立します。eBay・Etsy双方の取締役会が全会一致で承認済みです。
Etsyは2021年にDepopを16.25億ドルで買収していました。今回の売却額は約25%のディスカウントとなり、帳簿上は約4.2億ドルの損失を計上することになります。しかしCNBCの報道によると、発表後にEtsy株は約14%、eBay株は約7%上昇しており、市場は双方にとって合理的な取引と評価しています。
業界動向
今回の買収を理解するには、Depopという存在の特殊性と、中古ファッション市場の急拡大という2つの文脈を押さえる必要があります。
Depopは、モバイルファーストかつコミュニティ主導型のC2C(消費者間取引)ファッションマーケットプレイスです。2025年12月末時点でアクティブバイヤー700万人、アクティブセラー300万人以上を擁し、利用者の約90%が34歳未満という圧倒的なZ世代・ミレニアル層の支持基盤を持っています。
一方、中古ファッション市場全体は急成長フェーズにあります。Persistence Market Researchの調査によると、世界の中古アパレル市場は2025年の約674億ドルから2032年には約1,546億ドルに拡大する見通しで、年平均成長率(CAGR)は12.6%に達します。Business of Fashionの分析では、リセール市場の成長率は新品ファッション小売の2〜3倍のペースとされています。
この成長の背景には、消費者の価格感度の上昇、サステナビリティ意識の高まり、そしてZ世代を中心とした「ユニークな一点もの」への嗜好があります。Depopはまさにこの潮流の中心にいるプラットフォームです。
Depopの急成長とEtsyの撤退判断
Etsyの決断は一見矛盾して見えます。Depopは2025年通年でGMS(総流通額)が約10億ドルに到達し、米国市場では前年比60%の成長を記録しています。2025年第4四半期だけでGMSは3億ドルに達し、過去最高を更新しました。
では、なぜEtsyは成長中のDepopを手放すのでしょうか。答えは収益性にあります。Investing.comの報道によると、Depopは2025年のEtsy連結調整後EBITDAマージンを350ベーシスポイント(3.5%)押し下げる要因となっていました。トップラインは伸びていても、Etsyのハンドメイド中心のビジネスモデルとは運営面でのシナジーが限定的だったのです。
EtsyのCEO、Kruti Patel Goyal氏は「この取引により、Etsyは本業であるコアマーケットプレイスの成長機会に集中できる」と述べ、売却益は自社株買いとEtsyマーケットプレイスへの投資に充てる方針を示しています。Etsyにとっては、4年間にわたる「選択と集中」の判断が結実した形です。
eBayのリコマース戦略における位置づけ
eBayにとって、Depop買収は「フォーカスカテゴリ戦略」の重要な一手です。CEOのJamie Iannone氏は「この買収は最も新しく、最も急成長しているフォーカスカテゴリの一つを前進させるもの」とコメントしています。
eBayのファッションカテゴリは既に年間100億ドル超のGMVを生み出しており、米国では前年比10%成長しています。eBayの2025年通期決算によると、同社は過去5年間でプレラブド(中古品)およびリファビッシュ(整備済み品)において累計250億ドルの経済効果を創出してきました。さらに「消費者の約9割が中古品への支出を維持または増加させる見込み」というデータを示しており、リコマース市場への確信を強めています。
Depop買収後も同プラットフォームは独立ブランドとして運営を継続し、ロンドンに本社を維持します。eBayが持つグローバル物流網、決済インフラ、そして高級品認証プログラム「Authenticity Guarantee」をDepopのエコシステムに統合することで、若年層ユーザーの体験と信頼性の両方を強化する狙いです。CondéNast傘下のVogueやGQとの「公式Pre-Lovedパートナー」提携など、ブランディング面での基盤も整いつつあります。
なお、eBayの2025年Q4決算は好調で、売上高30億ドル(前年比15%増)、GMV 212億ドル(同10%増)、調整後EPS 1.41ドル(市場予想の1.35ドルを上回る)を記録しています。Depop買収はこの勢いの中で発表されたものです。
EC事業者への影響と活用法
今回の買収は、EC事業者に複数の示唆を与えます。
リセール市場への参入検討が加速します。 eBayやDepopのようなプラットフォーマーがリコマースに巨額投資を行うことは、中古品取引がニッチから主流へ移行していることを意味します。アパレルやファッション関連のEC事業者は、自社商品のリセールチャネルやバイバックプログラムの構築を具体的に検討すべきタイミングです。
若年層の購買行動への対応が急務です。 Depopの利用者の90%が34歳未満という事実は、Z世代がC2Cマーケットプレイスを通じてファッション消費を行う行動パターンが定着していることを示しています。eBayの物流・認証インフラとDepopの若年層コミュニティが融合することで、この層へのリーチがさらに強化されます。
プラットフォーム間の勢力図が変わります。 Depop買収により、eBayはPoshmark(Naverが2023年に買収)やVinted、ThredUpなどの競合に対して、テクノロジーとスケールの両面で優位性を確保します。マーケットプレイス型ECを展開する事業者は、出品先プラットフォームの戦略変化を注視する必要があります。
まとめ
eBayによるDepop買収は、中古ファッション市場の拡大とプラットフォーム再編という2つの大きなトレンドが交差する取引です。Etsyにとっては収益性改善と本業集中の契機、eBayにとってはZ世代獲得とリコマース覇権の足がかりとなります。
今後の注目ポイントは、2026年Q2に予定される取引完了後のDepop統合のスピードと方向性です。特にeBayの「Authenticity Guarantee」がDepopに導入されるタイミング、そしてグローバル物流網の接続がどの程度Depopの成長を加速させるかが焦点となります。中古ファッション市場の年間成長率が12%を超える中、この買収は単なるM&Aではなく、EC業界全体のリコマースシフトを象徴する出来事といえます。




