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2026年4月20日

Naver、検索からAI駆動コマースへ全面転換──ショッピングアプリMAU過去最高777万人の裏側

この記事のポイント

  1. 韓国最大のポータルNaverがショッピング事業を収益の柱に据え、アプリ「Nepleus」のMAUが3月に過去最高の777万人を記録。新規インストール数ではTemuに次ぐ2位で、Coupangとの差を縮めています
  2. 2月末に導入したショッピングAIエージェントが成長のドライバーに。6月からは低品質出品の自動停止も開始し、AIレコメンドの精度向上を図ります
  3. 仮想通貨取引所Upbit運営のDunamuとの合併計画も進行中で、検索→ショッピング→フィンテックという事業重心の移動が鮮明になっています

検索の巨人が直面する構造的な問い

生成AIの台頭で、検索ビジネスの将来は不透明さを増しています。ユーザーが検索エンジンではなくChatGPTやPerplexityに直接質問する行動変容が進めば、検索広告を収益基盤とする企業のビジネスモデルは根底から揺らぎます。韓国最大のポータルサイトNaverは、この構造変化に正面から向き合い、ショッピング事業への全面転換を加速させています。

オンラインショッピング業界関係者の言葉が、Naverの現在の立ち位置を端的に表しています。「Naverは、Coupangと競争できるショッピングサービスの構築に総力を挙げている」。

Nepleus──777万MAUの急成長

その具体的な成果が、ショッピングアプリ「Naver Plus Store(Nepleus)」の急成長です。IGAWorksのMobile Indexデータによると、3月のMAU(月間アクティブユーザー)は過去最高の777万人に達しました。前月の710万人から9%増という伸び率で、Coupang(3,503万人)、11番街(815万人)に次ぐ3位のポジションを固めています。

Coupangとの差はまだ大きいものの、新規インストール数ではTemu(75万件)に次ぐ67万件で2位。昨年3月のローンチからわずか1年で累計1,500万ダウンロードを突破しました。Open Surveyの「オンラインショッピングトレンドレポート2026」では、Nepleusの顧客満足度が84%を記録し、Coupangの72%を逆転しています。前年はCoupang 83%、Nepleus 79.7%だったことを考えると、短期間で満足度の逆転を実現したことになります。

限定品トレーディングプラットフォーム「Cream」も好調です。売上は前年比14%増の2,025億ウォン、営業赤字も8.8%改善しました。スニーカー中心だった初期から、スマートフォンなどのテック製品が第2のカテゴリに成長し、アパレル・ラグジュアリー・ライフスタイルへと取扱いカテゴリが多角化しています。

ショッピングAIエージェントが成長を後押し

Naverがショッピング事業の成長ドライバーとして位置づけているのが、2月末に導入したショッピングAIエージェントです。パーソナライズ情報の提供とAIによる最適商品のレコメンドを核とし、リアルタイムのショッピングトレンド分析、関連商品の自動推薦、カート保存機能などを搭載しています。

さらに6月からは、スマートストア(セラーが出品するプラットフォーム)で低パフォーマンスの商品の販売を自動停止する施策を開始します。一部のセラーがページ露出を増やすために同じ商品を繰り返し出品するケースがあり、これを是正することでAIレコメンドの精度を高める狙いです。Naverの広報担当は「重複や在庫切れ商品の過剰露出を減らすことで、検索品質が向上し、ショッピング体験が改善される」と説明しています。

新たに立ち上げたファッションプラットフォーム「Knockit(ノッキッ)」は、20〜30代をターゲットに「ランニングに最適な日」「近所に軽く出かけるとき」といったシチュエーション別のファッション推薦を提供します。ショッピングAIエージェントとの連携で、より精緻なパーソナライズサービスを展開する計画です。

検索からフィンテックへ──Dunamu合併の意味

Naverの事業重心の移動を象徴するもう一つの動きが、仮想通貨取引所Upbitを運営するDunamuとの合併計画です。この合併が実現すれば、Naverの中核事業は「検索・ニュース」から「ショッピング・フィンテック」へ明確にシフトします。

FnGuideの予測では、2026年Q1の売上は3兆1,510億ウォン(前年比約13%増)、営業利益は5,647億ウォン(同約12%増)と過去最高を更新する見通しです。証券業界の関係者は「今年のNaverの業績の中心はショッピングにある。送料無料・返品無料の特典強化に加え、ショッピングAIエージェントによるユーザー利便性の向上が、ショッピングユーザーと取引量のさらなる増加を促す」と分析しています。

まとめ

Naverの変革は、検索ポータルがAI時代にどう生き残るかという問いへの一つの回答です。検索広告が生成AIに侵食されるリスクを座視するのではなく、ショッピングという実需に直結する事業に軸足を移し、AIエージェントでその体験を強化する。Coupangという巨大な競合との差はまだ大きいものの、満足度の逆転やMAUの急成長は、この戦略が機能し始めていることを示しています。

韓国EC市場では、新世界がAIインフラの再構築に動き、Naverがショッピング×AIエージェントで攻勢をかけ、CoupangやSSGもそれぞれの道を模索しています。各社のアプローチは異なりますが、「AIをどう小売に実装するか」が次の競争軸になっている点では共通しています。