この記事のポイント
- P&GがQ2決算で構造化データレイク構築とAIツール全社展開を発表
- リテールメディアで4倍のリターン実現、消費財業界のAI活用の先駆けに
- EC事業者はデータ統合とAI活用による「デジタル棚の最適化」が急務
P&GがQ2決算でAI・データ戦略を詳細説明

消費財大手P&Gがデジタル販売とAI投資を強化
www.digitalcommerce360.com2026年1月22日、世界最大の消費財メーカーProcter & Gamble(P&G)は、2026年度第2四半期(2025年10月〜12月)の決算を発表しました。純売上高は222.1億ドルで前年比1%増にとどまりましたが、同社はこの発表の場でEコマースとAI投資の全容を明らかにしました。
CEOのShailesh Jejurikar氏は決算説明会で、同社が「ペタバイト規模の関連データを保有する構造化データレイクを構築した」と発表。メディア制作、棚の最適化、サプライチェーン管理などの領域でAIツールを全社展開していることを説明しました。
背景と業界動向
消費財業界では、消費者の購買行動がオンラインとオフラインで複雑に交差する「オムニチャネル化」が加速しています。Marketing Diveの報道によると、Jejurikar CEOは「小売業者がメディアプラットフォームになり、メディアプラットフォームが小売業者になっている」と指摘しています。
特にAmazonやWalmart、Targetといった大手小売業者が運営する「リテールメディアネットワーク」の台頭は、ブランドメーカーの広告戦略を根本から変えつつあります。P&Gのような巨大企業でさえ、この変化に対応するためのデータ基盤とAI活用が不可欠になっているのです。
一方で、P&Gの足元の業績は決して楽観できる状況ではありません。CNBCの報道によると、CFOのAndre Schulten氏は「今年度で最も軟調な四半期を完了した」と述べ、米国市場での消費者支出の減速を認めています。
P&GのAI・データ戦略の全容
P&Gが構築したデータ・AI基盤は、消費財業界でも最先端の取り組みとして注目されています。
ペタバイト規模のデータレイク
WebProNewsの分析によると、P&Gは社内に「10ペタバイト規模のデータレイク」を構築しました。このデータレイクには、従来の製品・購買調査データに加え、ソーシャルメディアの監視データ、ファンコミュニティからの情報、小売店での購買行動データなどが統合されています。
これまで部門ごとに分断されていたデータのサイロを解消し、消費者の購買行動を360度の視点で把握できる体制を整えたのです。
Consumer 360データプラットフォーム
P&Gの独自プラットフォーム「Consumer 360」は、ターゲットオーディエンスに最適な広告を、適切な頻度で、年間を通じて配信することを可能にします。Jejurikar CEOは「プログラマティックかつアルゴリズムベースのメディア買い付けにより、メッセージを受け入れやすい消費者を見つけ出している」と説明しました。
AIファクトリーによる高速展開
社内の「AIファクトリー」と呼ばれる独自プラットフォームは、AIモデルの展開時間を従来比で6ヶ月短縮することに成功。現在、グローバル事業の約80%に統合されています。
具体的な成果として、以下の事例が挙げられています。
- パンパース製品アプリ: AIが90%の精度でおむつサイズを特定
- ブラジルでの在庫管理: AIにより在庫不足を15%削減
- 香料開発: 開発速度が5倍に高速化
- リテールメディア: 自動入札ツールにより「ブランド販売で4倍のリターン」を実現
Q2決算の詳細データ
今回発表されたQ2決算の詳細を見ていきます。
全体業績
オーガニック売上が横ばいとなった要因は、価格上昇(+1%)を販売量の減少(-1%)が相殺したためです。
セグメント別業績
P&Gの公式発表によると、セグメント別では明暗が分かれました。
- ビューティー: オーガニック売上+4%(最も好調)
- ヘルスケア: オーガニック売上+3%
- グルーミング: オーガニック売上横ばい
- ファブリック&ホームケア: オーガニック売上横ばい
- ベビー、フェミニン&ファミリーケア: オーガニック売上-4%(最も軟調)
Schulten CFOは、Q2の業績が「港湾ストライキやハリケーンへの懸念から生じた消費者の買いだめ」の反動を受けたと説明しています。
EC事業者への影響と活用法
P&Gの取り組みは、EC事業者に重要な示唆を与えています。
デジタル棚の視認性確保が最優先
Schulten CFOは「最も緊急の課題は、核となるブランドがランディングページで最も強く表示されることだ」と述べています。ECサイトにおける「デジタル棚」での視認性確保は、P&Gのような大企業でも最優先課題なのです。
中小のEC事業者にとっても、検索結果やカテゴリページでの上位表示、商品画像の最適化、レビュー獲得戦略は今後ますます重要になります。
データ統合の重要性
P&Gが示したように、分散したデータを統合し、消費者の購買行動を包括的に把握することがAI活用の前提条件です。EC事業者は、まず自社が保有する顧客データ、購買データ、Web行動データを一元管理する基盤づくりから始めるべきでしょう。
リテールメディアへの対応
AmazonやWalmartなどのリテールメディアで「4倍のリターン」を実現したP&Gの事例は、プラットフォーム上での広告投資がROIを大きく左右することを示しています。自社ECに加え、マーケットプレイスでの広告戦略の高度化も検討すべきテーマです。
まとめ
P&Gは足元の売上が軟調な中でも、ペタバイト規模のデータ基盤とAIツールへの投資を加速させています。Jejurikar CEOは「今後12〜18ヶ月で全事業・全地域にこの体制を展開する」と述べており、消費財業界のデジタル変革は新たな段階に入りつつあります。
また、同氏は「今後3〜5年でさらに激しい変化が起こる」と予測しており、2月中旬に開催されるCAGNY(Consumer Analyst Group of New York)カンファレンスで、さらなる戦略の詳細を発表する予定です。
EC事業者にとって、P&Gの取り組みは「大企業だから可能」と片付けるのではなく、データ統合とAI活用の方向性を示す重要な先行事例として注目すべきでしょう。




