この記事のポイント
- Elliott Investment ManagementがPinterestに10億ドルの転換社債を引き受け
- ビジュアル検索×AIの独自ポジションが「過小評価」から一転、大型投資で正当化
- EC事業者はPinterestのAI広告ツール「Performance+」による高意図トラフィック獲得に注目すべき
Elliottが10億ドル規模の転換社債を引き受け

AI‑driven shopping is already outperforming off‑the‑shelf models, driving high‑intent retail traffic, and rewriting how visual discovery translates into commerce.
retailboss.substack.com2026年3月3日、著名アクティビスト投資ファンドのElliott Investment Managementが、Pinterestに対して10億ドル規模の転換社債(コンバーティブルノート)を引き受けたと発表しました。転換社債の満期は2031年、転換価格は1株あたり22.72ドルで、3月2日終値に対して30%のプレミアムが付いています。年利は1.75%です。
Elliottは2022年にPinterestへの投資を開始しており、2025年12月時点で約7.25億ドル相当の4.8%の株式を保有する第3位の大株主でした。今回の追加投資により、同社はPinterestの最大株主への道を歩むことになります。発表を受けて、Pinterestの株価は9%上昇しました。
業界動向と背景
Pinterestは長年にわたり、SNSプラットフォームとしては「過小評価」されてきました。Simply Wall Stの分析では、Elliott発表前の時点で株価がフェアバリューの約60%下で取引されていたと推定されています。MetaやGoogleといった広告大手と比較して、Pinterestは収益規模こそ小さいものの、ユーザーの購買意図の高さという点で独自の強みを持っています。
転換点となったのは、2022年にGoogle出身のBill Ready氏がCEOに就任したことです。Ready氏はプラットフォームを「AIを活用したビジュアルファーストのショッピングアシスタント」と再定義し、コマース機能の強化に注力してきました。2026年1月にはLee Brown氏を初のチーフビジネスオフィサー、Claudine Cheever氏をチーフマーケティングオフィサーに任命するなど、組織体制もコマース重視に再編しています。
独自のAI「テイストグラフ」が生む商機
Pinterestが他のSNSと一線を画すのが、独自のAI基盤「テイストグラフ」です。これはユーザーが保存した画像やボードのデータから、個人の「好み」をAIで学習・マッピングするシステムです。過去2年間で75%以上拡張され、数十億規模のデータ接続を持つこのグラフにより、Pinterestのショッピング推薦AIは「汎用モデルを30ポイント以上上回る精度」を実現しています。
この技術が実際の数字に表れています。2025年12月時点で月間アクティブユーザー数は6億1,900万人に到達し、10四半期連続で過去最高を更新しています。月間検索数は800億件に達し、2025年後半には検索クエリが前年比44%増加しました。
特に注目すべきはGen Z(Z世代)の動向です。ユーザーの50%以上をGen Zが占め、ボード作成数は5年間で340%急増しています。さらに、Gen Zユーザーの85%が「商品発見」を目的にプラットフォームを利用しているという事実は、Pinterestが単なるSNSではなく購買起点のプラットフォームであることを裏付けています。
AI広告ツール「Performance+」の実力
EC事業者にとって最も実務的な関心事は、Pinterestの広告ツールがどれほど成果を上げるかでしょう。2024年に導入されたPerformance+は、AIによるキャンペーン自動最適化ツールです。
具体的な成果として、A/Bテストの80%でPerformance+が従来型キャンペーンを上回り、小売広告主のコンバージョンリフトは平均24%向上しています。キャンペーン設定の入力項目が50%削減されるため、運用工数も大幅に軽減されます。さらに、Performance+クリエイティブを利用した広告主は、Pinterest広告経由のチェックアウト収益が19%増加したと報告されています。
2025年第1四半期に導入されたROAS(広告費用対効果)入札も成果を上げています。第3四半期にはローワーファネル小売収益の22%がROAS入札経由となり、有料広告インプレッションを持つショッピングSKU数は前年比100%以上増加しました。
EC事業者への影響と活用法
今回のElliottの大型投資は、Pinterestが今後さらにコマース機能を強化するシグナルです。EC事業者が注目すべきポイントは3つあります。
まず、「高購買意図トラフィック」の獲得チャネルとしてのPinterestの再評価です。ユーザーの多くが購入前の商品リサーチ段階でPinterestを利用しており、広告主へのクリック数は前年比90%以上増加しています。GoogleやMetaに偏りがちな広告予算の一部をPinterestに振り向ける検討は合理的です。
次に、Performance+の活用による運用効率化です。特にビジュアル訴求が重要なファッション、インテリア、美容、食品カテゴリでは、テイストグラフによるパーソナライズ推薦との相乗効果が期待できます。
そして、Gen Zへのリーチです。若年層の購買力が拡大する中で、Gen Zの85%が商品発見に使うプラットフォームを無視するのはリスクといえます。
まとめ
Elliottの10億ドル投資は、PinterestのAIコマースプラットフォームとしてのポテンシャルに対する「プロの値付け」です。10億ドルの調達資金は自社株買いに充てられるため、直接的な事業投資ではありませんが、Elliottがボードメンバーとして経営に関与し続ける点が重要です。
今後の注目ポイントは、2026年後半に予定されるAIショッピングアシスタント機能の本格展開と、広告収益の成長率です。2025年第3四半期に初めて四半期売上10億ドルを突破したPinterestが、AIコマースの波に乗ってMeta・Googleの広告収益に食い込めるかが焦点となります。「ビジュアル発見」というユニークなポジションを持つPinterestの動向は、EC事業者にとって見逃せないものとなるでしょう。




