この記事のポイント
- TrustpilotがEC大手・AI企業との提携を拡大し、AIエージェントの購買判断にレビューデータを供給する戦略を発表
- AI検索からのクリックスルーが前年比1,490%増、ChatGPTで世界5位の引用ドメインに浮上
- EC事業者はAIエージェントに「選ばれる店」になるため、レビュー品質の管理と構造化データ整備が急務
Trustpilot CEOが語るエージェンティックコマース戦略

Reviews website Trustpilot is reportedly seeking partnerships with eCommerce giants amid the rise of AI-powered shopping.
www.pymnts.com2026年3月17日、レビュープラットフォーム大手のTrustpilotが、AIエージェントによる購買判断を見据えた大規模な提携戦略を明らかにしました。同社CEOのAdrian Blair氏はBloomberg Newsのインタビューで「AIエージェントが買い物をする時代には、企業に関する情報をできる限り多く必要とする。最良のAIエージェントは、Trustpilotが持つようなデータを活用するものになる」と述べ、EC大手との連携強化に意欲を示しました。
同日発表された2025年通期決算では、売上高が前年比24%増の2.611億ポンド、税引前利益が172%増の1,410万ポンドと大幅な増収増益を記録しています。
背景と業界動向
エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者に代わって商品の検索・比較・購入までを自律的に行うコマースの新形態です。Google・Shopifyが共同開発したUniversal Commerce Protocol(UCP)により、AIエージェントが商品データにアクセスし、チェックアウトまで完結できる標準仕様の整備が進んでいます。
この流れの中で、AIエージェントが「どの店で買うか」を判断する際の信頼性指標として、第三者レビューの重要性が急速に高まっています。McKinseyのレポートは、2030年までにエージェンティックコマースの取引規模が最大5兆ドルに達すると予測しており、AIエージェントが参照するデータソースのポジション争いは激化しています。
従来の検索エンジン経由のトラフィックが減少する一方、AI経由のトラフィックが急増しているのも見逃せない変化です。PYMNTS Intelligenceのレポートによると、AIプラットフォームを主要な情報源とする消費者の43%が従来の検索を「完全に置き換えた」と回答しています。
AI検索トラフィック1,490%増の衝撃
Trustpilotの戦略転換を裏付けるのが、AI検索経由のトラフィック急増です。AI Newsの報道によると、AI検索からのクリックスルーは前年比1,490%増加しました。この急増の背景には、Googleが「AIによる検索」をデフォルト化した判断が大きく影響しています。
さらに、Promptwatchのデータでは、Trustpilotは2026年1月時点でChatGPTにおける世界第5位の引用ドメインとなっています。大規模言語モデル(LLM)がユーザーの質問に回答する際、信頼性の高いレビューデータとしてTrustpilotのコンテンツを頻繁に参照しているのです。
Blair氏は「LLMは我々にとってまったく新しい露出面を作り出した。LLMからのトラフィックと露出の増加は劇的だ」と述べています。同社は2030年までに営業利益率30%の達成を目標に掲げており、AI関連のトラフィック成長がその原動力になると位置づけています。Proactive Investorsの分析では、2026年の売上成長率はハイティーンズ(10%台後半)、調整後EBITDAマージンは2〜3ポイントの改善が見込まれています。
EC業界のAIエージェント対応とTrustpilotの位置づけ
Trustpilotの動きは、EC業界全体のAIエージェント対応の文脈で理解する必要があります。すでに主要プレイヤーの提携が急速に進んでいます。
AmazonとOpenAIは2026年2月に戦略的提携を発表し、AWS上での生成AIシステム展開を進めています。WalmartとGoogleはGeminiチャットボット内での商品購入機能を実装しました。ShopifyのUCPは「エージェンティック・ストアフロント」として、AI上での取引完結を可能にしています。
一方、Wall Street Journalの報道によれば、Amazonは無許可のAIエージェントによるプラットフォームアクセスに対抗し、独自のAIアシスタント(Amazon Rufus)でデータと広告収入の管理を維持する戦略を取っています。
こうした「囲い込み」が進む中で、Trustpilotの立ち位置は独特です。特定のECプラットフォームに依存しない中立的な第三者レビューデータは、どのAIエージェントにとっても有用です。AIエージェントが複数のECサイトを横断比較する際、統一的な信頼性指標としてレビュースコアを参照できるためです。
EC事業者への影響と活用法
Trustpilotの戦略転換は、EC事業者に直接的な影響を及ぼします。AIエージェントが購買判断にレビューデータを組み込むようになると、「人間の消費者に選ばれる店」だけでなく「AIに選ばれる店」であることが求められます。
具体的に取り組むべき点は3つあります。第一に、Trustpilotをはじめとするレビュープラットフォームでの評価管理を強化することです。ネガティブレビューへの迅速な対応、レビュー依頼の仕組み化が従来以上に重要になります。
第二に、構造化データの整備です。AIエージェントが商品情報を正確に取得できるよう、Schema.orgマークアップやUCPへの対応など、機械可読性を高める技術的な準備が必要です。
第三に、AI経由のトラフィック分析の導入です。従来のSEO指標に加え、AIプラットフォームからの流入を計測・分析する仕組みを構築すべきです。Trustpilotの事例が示すように、AI検索からのトラフィックは急激に増加する可能性があります。
まとめ
Trustpilotの提携拡大は、エージェンティックコマース時代における「信頼データ」の価値を鮮明にしました。AIエージェントが自律的に購買判断を行う世界では、第三者レビューが「デジタル上の信用情報」として機能します。
今後注目すべきは、TrustpilotがどのEC大手と具体的な提携を締結するか、そしてレビューデータのAPI提供がどのような形で実現するかです。同社の2026年通期決算では、AI関連トラフィックの収益化の進捗が明らかになるでしょう。EC事業者にとっては、「AIに見つけてもらい、AIに信頼される」ための準備を今から始めるべき段階に入っています。




