この記事のポイント
- AgentPassがPaz.aiにリブランドし、リテーラー向けエージェンティックコマースプラットフォームとして本格始動
- UCP・ACP・MCPの3大プロトコルに一括対応し、リテーラーのAIエージェント可視性を一元管理
- EC事業者はAIショッピングエージェントへの商品露出確保を今すぐ検討すべき段階に
AgentPass、Paz.aiとしてリブランドを発表

AgentPass, Inc., the agentic commerce infrastructure company, today announced it has rebranded as Paz.ai.
www.prnewswire.com2026年3月4日、エージェンティックコマースインフラ企業のAgentPass, Inc.が「Paz.ai」へのリブランドを発表しました。サンフランシスコに本社を置く同社は、リテーラーの商品カタログをAIショッピングエージェントに接続するインフラ基盤を提供しています。
CEOのDor Shany氏は、GigyaのSAPへの売却やOwnIDの買収など複数のイグジット経験を持つ連続起業家です。共同創業者兼プレジデントのRooly Eliezerov氏とともに、2024年にAgentPassを設立しました。投資家にはCervin Venturesが名を連ねています。
背景と業界動向
Paz.aiが解決しようとしている課題は明確です。消費者がChatGPT、Google AI Mode、Perplexity、Claudeなどの会話型AIを通じて商品を発見・購入する行動が急速に拡大する一方、大多数のリテーラーは自社カタログをこれらのAIエージェントに認識させる技術的手段を持っていません。
OpenAIによると、ChatGPTだけで1日あたり推定5,000万件のショッピングクエリが発生しています。WalmartやEtsyはすでにAIエージェントからの有意なリファラルトラフィックを報告し始めており、Googleは2026年1月のNRF 2026でUniversal Commerce Protocol(UCP)を発表しました。
問題は、これらのプラットフォームがそれぞれ異なるプロトコルを採用していることです。OpenAI/StripeのACP(Agent Commerce Protocol)、GoogleのUCP、AnthropicのMCP(Model Context Protocol)── リテーラーが個別に対応するには、エンジニアリングリソースと専門知識の両面でハードルが高い状況です。
Paz.aiの「プロトコル統合基盤」── 3つのコア機能
Paz.aiは、リテーラーが単一の統合ポイントから複数のAIエージェントチャネルに商品を配信できる「プロトコル統合レイヤー」を提供します。プラットフォームの機能は3つの柱で構成されています。
AI可視性モニタリング。ChatGPT、Google AI Mode、Perplexity、Claudeの各AIショッピングエンジンにおける商品ランキング、可視性スコア、クエリ表出率をリアルタイムで追跡します。競合との直接比較(ヘッド・トゥ・ヘッド勝率)やマルチエンジンでのランキング比較も可能です。
AIカタログ最適化。既存の商品フィードをShopify、Adobe Commerce(Magento)、Salesforce Commerce Cloudから取り込み、AIエージェントが推論・推薦しやすい構造化コンテンツに変換します。AIによる一括処理と人間の承認を組み合わせた「ヒューマン・イン・ザ・ループ」方式を採用し、品質を担保しています。
AIストアフロント&チェックアウト。ブランド専用のChatGPTアプリにエクスプレスチェックアウト機能を統合した「AIストアフロント」を提供します。Paz.aiによると、AIストアフロント経由のコンバージョン率は従来比3倍を記録しているとのことです。
対応プロトコルと連携先
Paz.aiの最大の差別化ポイントは、主要3プロトコルへの統合対応です。
UCP(Google)は商品発見から購入後サポートまでの完全なコマースライフサイクルをカバーし、Google AI ModeやGeminiアプリでのショッピング体験を支えています。ACP(OpenAI/Stripe)はチェックアウトと決済フローに特化し、Instant Checkoutを駆動しています。MCP(Anthropic)はLLMに対してリッチな商品コンテキストを配信するプロトコルです。
EC基盤との連携では、Shopifyとのネイティブ統合(リアルタイム同期対応)に加え、Adobe Commerce、Salesforce Commerce Cloud、CSVアップロード、カスタムAPIに対応しています。Shopifyストアは最短1週間、その他のプラットフォームでも2週間以内での稼働開始が可能とされています。
EC事業者への影響と活用法
Paz.aiの登場は、EC事業者に対して3つの重要なメッセージを発しています。
「AI可視性」が新たなSEOになる。従来のGoogle検索でのSEOと同様に、AIショッピングエージェント上での商品の可視性が集客の重要指標になりつつあります。自社商品がChatGPTやGoogle AI Modeで表示されているか、競合と比較してどの位置にいるかを把握することが第一歩です。
プロトコル乱立への対応は「統合基盤」が現実解。UCP、ACP、MCPをそれぞれ個別に実装するのは、特に中規模EC事業者にとっては非現実的です。Paz.aiのような統合プラットフォームを活用することで、エンジニアリングコストを抑えながら複数のAIチャネルに対応できます。
商品データの構造化が前提条件。AIエージェントに正しく認識されるには、商品名・説明・スペック・価格・在庫情報が正確かつ構造化されていることが不可欠です。Paz.aiのようなツールを導入する前に、まず自社の商品データの品質を見直すことが重要です。
ただし、Paz.aiは2024年設立のスタートアップであり、具体的な導入企業数や処理GMV、収益規模などの実績データは現時点で公開されていません。エージェンティックコマースインフラ市場自体がまだ初期段階にあり、競合環境やプロトコルの標準化動向を注視する必要があります。
まとめ
AgentPassからPaz.aiへのリブランドは、エージェンティックコマースが「概念」から「実装フェーズ」へ移行していることを象徴する動きです。AIショッピングエージェントが消費者の購買プロセスに深く関与するようになるなか、リテーラーの「AI可視性」をいかに確保するかが競争力の新たな源泉となります。
今後注目すべきは、Paz.aiの導入企業における具体的な成果指標(AI経由のトラフィック・売上貢献度)の開示、そしてUCP・ACP・MCPの各プロトコルの標準化・普及動向です。EC事業者にとっては、自社カタログが「AIエージェントに読める」状態にあるかを確認し、必要な対応を始めるべきタイミングに来ています。




