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2026年3月6日

EC・AIコマース ニュースダイジェスト(2026年3月6日)

目次
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この記事のポイント

  1. Visa・Mastercardがエージェンティックコマース標準化で主導権争い、Mastercard「Verifiable Intent」発表
  2. OpenAIがChatGPT内の直接チェックアウト計画を断念、サードパーティ経由に方針転換
  3. 決済・物流・セキュリティの各レイヤーでエージェンティックコマース対応が同時進行

今日の注目ニュース

Visa・Mastercard、エージェンティックコマースの標準設定で主導権争い

Visa と Mastercard が、AIエージェントが消費者に代わって購買を行うエージェンティックコマースの標準化をめぐり、それぞれ異なるアプローチで主導権争いを繰り広げています。

Mastercard は「Verifiable Intent」と呼ばれるオープンスタンダードを発表しました。これは暗号学的証明によってAIエージェントの取引が本当にユーザーの意図に基づくものかを検証する仕組みで、Google、Fiserv らが初期パートナーとして参画しています。一方のVisaは、Visa Intelligent Commerce を通じてDBS銀行とのパイロットを進めるなど、自社エコシステム内での統合を重視するアプローチを取っています。

両社ともビッグテック企業やデジタル決済事業者との連携を強化しており、エージェンティックコマースのインフラ構築が本格的な競争フェーズに入ったことを示しています。

詳細記事: VisaとMastercard、エージェンティックコマースの「標準化」で覇権争いが本格化

OpenAI、ChatGPT内の直接チェックアウト計画を断念

OpenAI は ChatGPT 内で商品を直接購入できるチェックアウト機能の開発計画を縮小し、取引はサードパーティのアプリやウェブサイトを経由して完了させる方針に転換しました。The Information が報じたこの動きは、OpenAIのECコマース戦略の大きな転換点です。

当初 OpenAI は ChatGPT を包括的なショッピングプラットフォームにする構想を持っていましたが、決済処理やカスタマーサービスなどの複雑さから、商品の検索・比較・推奨に特化する方向へとシフトしたとされています。EC事業者にとっては、ChatGPT が直接的な競合ではなく送客チャネルとしての位置づけが明確になったことで、既存ECプラットフォームの株価にはポジティブな反応が見られています。

詳細記事: OpenAI、ChatGPT内の直接チェックアウト計画を断念

エージェンティックコマース

Walmart、Morgan Stanleyカンファレンスでエージェンティックコマース戦略を詳説

Walmart は Morgan Stanley の Technology, Media & Telecom Conference に登壇し、エージェンティックAIコマースへの取り組みを詳細に語りました。

同社は Google の Universal Commerce Protocol(UCP)の初期パートナーとして、AIエージェントが商品検索から注文、配送追跡、返品処理まで一貫して行える基盤の構築を進めています。Walmart の巨大な商品カタログと物流ネットワークが、エージェンティック時代においても競争優位を維持する鍵になると位置づけています。

詳細記事: Walmart、Morgan Stanleyカンファレンスでエージェンティックコマース戦略を詳説

Meta、Meta AI内でエージェンティックコマース機能を試験運用

Meta は米国で Meta AI アシスタントにショッピング機能を静かに統合し始めています。ユーザーが Meta AI に商品の相談をすると、具体的な商品提案や購入リンクが返されるようになっており、ChatGPT や Google Gemini に対抗する会話型コマースの布石と見られています。

Facebook、Instagram、WhatsApp という巨大なユーザーベースを活かした展開が期待されますが、現時点では限定的なテスト段階にとどまっています。

Klarna、Stripe経由でエージェンティックコマース向けBNPLを拡大

Klarna は Stripe との連携を通じて、エージェンティックコマースにおける後払い決済(BNPL)オプションを拡大しました。AIエージェントが消費者に代わって購入する際にも、Klarnaの分割払いを選択できるようになります。

現在は米国のマーチャント向けに提供開始されており、今後さらなる市場拡大が予定されています。先日の Stripe × Affirm 連携に続き、エージェンティック決済エコシステムにBNPLプレイヤーが続々と参入しています。

Splitit、Google Universal Commerce Protocol(UCP)への支持を表明

カードリンク型分割払いの Splitit が、Google の Universal Commerce Protocol(UCP)への支持を正式に表明しました。UCP は Shopify、Target、Walmart、Etsy、Wayfair らが共同で構築したオープンスタンダードで、AIエージェントによる商品検索からチェックアウト、購入後体験までの一連のプロセスを標準化するものです。

Splitit の参画により、UCP エコシステムに分割払いオプションが加わることになり、エージェンティックコマースにおける決済の選択肢がさらに広がります。

AIエージェントが購買を始める時代、セキュリティチームが備えるべきこと

Chargebacks911 の CTO Donald Kossmann 氏が、エージェンティックコマースにおけるセキュリティ・不正・ガバナンスリスクについて警鐘を鳴らしています。

AIエージェントが消費者に代わって購買決定を行う場合、従来の本人確認や認証の仕組みでは対応しきれない新たなリスクが生じます。エージェントの権限範囲の設定、取引の監査ログ、不正検知の再設計など、セキュリティチームは根本的なアプローチの見直しを迫られています。

詳細記事: AIエージェントが購買を始める時代、セキュリティチームが備えるべきこと

AIコマースツール

Stord、コマース運営を変革するAIアシスタントを発表

評価額15億ドルの EC イネーブルメントプラットフォーム Stord が、コマース運営の次世代を担うAIアシスタントを発表しました。

AG1、True Classic、Native といったD2Cブランドを顧客に持つ同社は、年間約100億ドルのコマースを支えています。新たなAIアシスタントは、在庫管理・注文処理・出荷最適化といったフルフィルメント業務を自動化し、ブランドがより迅速に動ける体制を構築します。

詳細記事: Stord、コマース運営を変革するAIアシスタントを発表

グローバルEC動向

JD.com、3年超ぶりの四半期赤字 ── 補助金効果の減退と競争激化

中国EC大手の JD.com(京東集団)が、3年以上ぶりとなる四半期赤字を計上しました。2025年通期では利益が52%減少しています。

政府の家電補助金プログラムの効果が薄れるなか、Pinduoduo や Douyin(TikTok中国版)との激しい価格競争が続いています。即時配送サービスへの積極投資も利益を圧迫しており、中国EC市場の競争環境の厳しさを改めて示す結果となりました。

TikTok Shop、米国のフルフィルメント管理方針を撤回

TikTok Shop は、米国マーチャントの出荷・フルフィルメントを自社管理下に置く計画を撤回しました。この方針転換の背景には、出品者の離反リスクがあったとされています。

セラーからは「自社の物流パートナーを使い続けたい」という声が強く、TikTok Shop がフルフィルメントを握ることへの反発がありました。マーケットプレイスとして成長途上のTikTok Shopにとって、出品者のリテンションが最優先課題であることが浮き彫りになっています。

Back Market、2025年のGMVが32%増の35億ユーロ超に成長

フランス発のリファビッシュ製品マーケットプレイス Back Market が、2025年のGMV(流通取引総額)が前年比32%増の35億ユーロ超に達したと発表しました。

中古スマートフォン、ノートPC、その他電子機器を扱う同社の成長は、サステナビリティ意識の高まりとコスト意識の両面から支えられています。新品市場が成熟するなか、リファビッシュ市場の拡大トレンドが続いています。

決済・フィンテック

Coupang、ステーブルコイン事業の法務チーム構築に着手

韓国EC大手 Coupang の決済子会社 Coupang Pay が、ステーブルコイン事業の法務チーム構築に向けた採用を開始しました。韓国の与党がウォン(KRW)建てステーブルコインの法的枠組みを議論するなか、先手を打つ動きです。

NYSE上場のEC企業として、年間数億ドル規模の手数料削減が見込まれるステーブルコイン決済は、Coupang にとって大きなコスト優位性をもたらす可能性があります。

企業動向・提携

Kroger、新CEO就任後初のQ4決算 ── EC成長とAI投資を強調

米食品スーパー大手 Kroger が、新CEO Greg Foran 就任後初となる第4四半期決算を発表しました。EC売上は堅調な成長を記録しています。

Foran 新CEOは、店舗体験の改善と価格引き下げを軸にした成長加速を掲げるとともに、AI・ECへの投資継続を明言しました。食品ECの競争が激化するなか、Walmart や Amazon Fresh に対抗するための戦略転換が注目されます。

まとめ

本日のニュースは、エージェンティックコマースの「インフラ整備」が複数のレイヤーで同時に進んでいることを示しています。決済標準(Visa vs Mastercard)、プロトコル(Google UCP への Splitit 参画)、セキュリティ(Chargebacks911 の警鐘)、そして BNPL 連携(Klarna × Stripe)と、エコシステムの各構成要素が急速に形を成しつつあります。

一方で OpenAI の ChatGPT チェックアウト断念は、AIコマースにおける「取引の完結」がいかに複雑であるかを物語っています。検索・比較・推薦までは AI が得意とする領域ですが、実際の決済・配送・返品という商取引の核心部分は、既存のECインフラとの連携が不可欠であることが改めて浮き彫りになりました。