Google Merchant CenterのUCP統合ハブにカート移行を追加、Shopify加盟店はAIモードのネイティブチェックアウトが既定で有効に:ホリデー商戦前に確認すべき設定
GoogleがMerchant CenterのUCP統合ハブにカート移行とチェックアウト検証を追加し、Shopify加盟店にはネイティブチェックアウトを既定で開放しました。3つの接続経路の違い、失う機能と停止手順、未開示の条件をEC事業者向けに解説します。
この記事のポイント
- Googleは2026年9月16日、Merchant CenterのUCP統合ハブにカート移行とチェックアウトの検証機能を追加し、9月22日前後には対象のShopify加盟店へ、AIモードとGeminiのネイティブチェックアウトを既定で有効にしたと通知し始めました
- 独自基盤の小売は「自社サイトへカートを移す」「Google上で決済まで完了させる」を選べるようになり、Shopify加盟店は設定なしで後者に組み込まれます。ホリデー商戦を前に、Google側の購買導線が一段広がりました
- ネイティブチェックアウトではGoogleアナリティクスやカスタムピクセルが発火せず、サブスクリプションや同梱商品も対象外です。EC事業者は有効か無効かを自分で決め、計測の穴を先に埋める必要があります
ホリデー商戦を前に、Googleは「買える場所」を2方向に広げた

Googleによるエージェンティックコマースのアップデートと商品フィードのベストプラクティスで、ホリデー商戦の売上を伸ばしましょう。
blog.google2026年9月16日、GoogleのMerchant Shopping担当VP/GMであるAshish Gupta氏は、公式ブログでホリデー商戦向けの小売支援策を発表しました。その柱の一つが、AIエージェントと小売のシステムをつなぐオープン標準Universal Commerce Protocol(UCP)の統合ハブの拡張です。
発表によれば、Merchant Centerの統合ハブでUCPチェックアウトを使う加盟店は、自社サイトへのカート移行と、強化されたチェックアウトフローのテストを有効にできるようになりました。分析機能なども「近日提供」とされています。提供は米国で段階的に始まり、オーストラリアとカナダは2027年初頭に続く予定です。Googleは、UCPがすでに数十万のブランドと小売の直接購入を支えているとも述べています。
6日後には、もう一つの動きが表に出ました。Search Engine Roundtableによると、Merchant Centerから「あなたの商品はネイティブチェックアウトの対象になりました」という通知メールが届き始めています。対象は、UCPを組み込み済みのEC基盤を使う加盟店で、代表例がShopifyです。Search Engine Landも同日、対象のShopify加盟店がAIモードとGeminiのネイティブチェックアウトへ自動で登録されると報じました。
独自基盤の小売には選択肢を増やし、Shopify加盟店は既定値で取り込む。性格の異なる2つの拡張について、「何を設定すれば何が起きるか」を順に整理します。
UCP統合ハブで選べる3つの経路
統合ハブはMerchant Centerの「設定」にある「UCP integration」から開きます。開発者向けガイド(9月16日更新)で目を引くのは、加盟店が選んだ機能に応じて検証手順そのものが変わることです。ハブで選べる機能は3つあり、それぞれ実装の重さも購入が完了する場所も異なります。
| 経路(ハブ上の名称) | 購入が完了する場所 | 加盟店が実装するもの | 本番前の確認項目 |
|---|---|---|---|
| Transfer to merchant cart(カート移行) | 自社サイト(Googleで作ったカートを引き継ぐ) | Cart API(作成は必須、取得・更新・取消は任意) | 商品IDの照合設定、カート移行のテスト |
| Native checkout on Google(ネイティブチェックアウト) | Googleの画面内(加盟店が販売者のまま) | チェックアウトの作成・更新・完了の3つのRESTエンドポイント、注文状況のWebhook | アカウント設定一式、決済画面の検証、注文状況の検証、UCP Program Addendumへの同意 |
| Identity linking(ID連携) | 上記どちらかと組み合わせて使う | OAuth 2.0のエンドポイントとメタデータの公開 | ID連携の検証(ネイティブチェックアウトでは任意) |
最も軽いのはカート移行です。ガイドは、この経路を選んだ場合は商品フィードの完全な整備、商品に関する警告への対応、カスタマーサポート情報の登録が不要な「ファストトラック」になると明記しています。必要なのは、Merchant Centerの商品IDと自社サイトの商品IDの照合設定と、Cart APIのテストだけです。
ネイティブチェックアウトは手順が重くなります。3つのエンドポイントに加えて注文状況を送るWebhookを整え、UCP Program Addendum(追加規約)に同意したうえで、Googleのサポートチームのレビューを受けて本番稼働が決まります。
「強化されたテスト」の中身はサンドボックスです。検証用と本番用で別々のAPIキーを用意し、/.well-known/ucp(対応機能を宣言するプロファイル)の場所を登録すれば、カートやチェックアウトの各リクエストを画面から送って応答を確かめられます。本番検証では、ハブで選んだ機能とプロファイルの宣言が完全に一致していることが求められます。
ただし、誰でもすぐ使えるわけではありません。ヘルプページの手順は、技術実装を先に済ませ、関心表明フォームを出し、参加者に選ばれてから統合ハブにアクセスできる、という順番です。選定の基準と所要期間は示されていません。
カート移行は「自社サイトに客を戻したい」小売への回答
Cart機能は3月に草案として仕様に入り、5月のGoogle Marketing Liveでも触れられていました。今回それがMerchant Centerの検証フローで選べる正式な経路になりました。
Google上で決済まで完結することには、小売側に根強い抵抗があります。Search Engine Journalは、1月に報じた懸念をあらためて紹介しています。客が店のサイトを訪れず、関連アクセサリーの提案も見ないまま、ブランドとのつながりが薄れる、というものです。同誌はカート移行をこの懸念への回答と位置づけています。カートを積んだ状態で客を自社のチェックアウトに迎えれば、会員ログインや同梱提案、計測タグといった従来の仕組みをそのまま使えます。
その代わり、買い手にはサイト遷移という手順が1つ増えます。カート移行とネイティブチェックアウトのどちらを選ぶかは、自社サイトで得られる情報と、遷移で失う購入の数とのトレードオフです。どちらが得かを示すデータは、Googleからまだ出ていません。
Shopify加盟店は「何もしなくても」有効になる
Shopify加盟店にとって、これは選択ではなく既定値の問題です。Search Engine Roundtableが紹介した通知メールは、ShopifyストアとMerchant Centerが照合され、ネイティブチェックアウトが有効になったと伝え、「設定は不要です」と添えています。
Shopifyのヘルプが示す主な条件は次のとおりです。
- 米国を拠点とし、米国の顧客に販売していること
- 有効なMerchant Centerアカウントがあり、商品がそこに登録されていること
- 利用規約、プライバシーポリシー、返品・返金ポリシーを設定済みであること
Shopifyによれば、このチャネルでの販売に追加料金はなく、かかるのは通常の決済処理手数料だけです。Shopify Functions(配送・割引・カート検証のカスタムロジック)と割引コードは、ネイティブチェックアウトでも動きます。
問題は、動かないものの一覧が長いことです。Shopifyのヘルプは、次の機能がネイティブチェックアウトで使えないと明記しています。
- Googleアナリティクスとカスタムピクセル(発火するのはサーバー間の「開始」「完了」だけ)
- サブスクリプション、同梱商品(バンドル)、カスタマイズ商品、B2B専用商品
- ローカル配送、店舗受け取り、受け取りポイント
- チェックアウト前のログイン必須設定
- 一部のチェックアウトブロック(アップセル、ロイヤルティ表示、同意取得、チャット、信頼バッジなど)
これらに頼っている店舗では、知らないうちに購入の一部が自社の分析から見えなくなります。Search Engine Landも、意図せず有効になっている加盟店がいるとして設定の確認を勧めています。
止める手順は短く済みます。Shopify管理画面で「販売チャネル」から「Agentic」を開き、「Allow Shopify to manage for me」をオフにします。続けて「Google AI Mode and Gemini」を選び、「Direct checkout」を無効にして保存します。無効にしても商品はAIモードとGeminiで見つかり続け、購入時だけ自社サイトへ送られます。GoogleもShopifyも、顧客関係とデータ、売上の所有権は加盟店に残ると説明しています。
計測は2つの粒度に分かれた
Merchant Center側の計測は、見る段階によって2つの道具に分かれました。
1つは、米国など5か国で一般提供となったAIパフォーマンス分析です。AIモードやAIによる概要でのシェア・オブ・ボイス(他ブランドと比べた露出の割合)を示しますが、Search Engine Journalによると対象は英語のクエリと自然流入に限られ、クリック指標はありません。
もう1つが、統合ハブの「Analytics」タブにあるUCPの分析ダッシュボードです。開発者向けドキュメントには、購入ボタンのクリック数、購入数、購入率、平均注文額、キャンセル数などの指標が並びます。ドキュメントは「UCPを有効にしたすべての加盟店が利用できる」と書く一方、公式ブログは「近日提供」としており、Search Engine Journalはこの食い違いを指摘しています。
露出と購入の指標はMerchant Centerの中で分かれ、ネイティブチェックアウトの購入は自社のGoogleアナリティクスに流れてきません。AI経由の売上を社内の数字とつなぐ作業は、加盟店側に残っています。
Tapestryの事例と、数字が語らないこと
採用事例としてGoogleが挙げたのは、CoachとKate Spadeを傘下に持つTapestryです。Chain Store Ageによると、同社はUCPチェックアウトを組み込み、両ブランドの一部商品を検索(AIモードを含む)とGeminiアプリから直接買えるようにしました。同誌の別の記事によれば、AIの回答に「購入」ボタンが表示され、Google Payで数回タップすれば決済が終わります。
Googleはこのほか、フィードの基本的なベストプラクティスを取り入れた加盟店は翌月のコンバージョンが平均5%増えたとしています。
ただし、これはGoogle自身の数字です。「数十万のブランドと小売」の内訳も、UCP経由の購入件数や売上も開示されていません。Search Engine Landは、ホリデー商戦が「会話型コマースが発見から購入まで客を動かせるか、小売が追加投資に見合う売上増を得られるか」を試す場になると留保を付けています。PYMNTSが紹介したPYMNTS Intelligenceの調査でも、AIエージェントに買い物を任せてよいとする消費者は24%、AIアプリにカード情報を預けてよいとする人は14%にとどまります。
開示されていないこと
公式ブログ、ヘルプ、開発者向けドキュメントを突き合わせても、次の点は示されていません。
- UCP統合ハブの参加者の選定基準と、関心表明から利用開始までの期間:未開示
- 実際の購入件数、売上、ネイティブチェックアウトとカート移行の購入率の比較:未開示
- 分析ダッシュボードの提供時期:ブログは「近日提供」、ドキュメントは「利用可能」と記述が分かれている
- 日本を含む米豪加以外での提供予定:未開示
- ネイティブチェックアウトでの返品・チャージバック時の責任分担の詳細:未開示(加盟店が販売者である点のみ明記)
EC事業者が今確認すべきこと
米国向けにShopifyで販売している事業者は、まず管理画面の「Agentic」設定を開き、Google AI Mode and Geminiのダイレクトチェックアウトが有効かどうかを確かめてください。有効のまま進めるなら、GA4に届かない購入の集計方法と、返品ポリシーがMerchant Centerと一致しているかを確認しておく必要があります。
独自基盤の事業者にとっての論点は、どの経路から入るかです。カート移行は検証が軽く、自社チェックアウトの資産を保てるため、最初の一歩として現実的です。どちらの経路も関心表明と選定を経るため、ホリデー商戦に間に合うかは動き出しの早さ次第です。
日本の事業者は現時点で対象外ですが、Merchant Centerの商品データが「見つかる」だけでなく「買える」の入口になったという前提は同じです。商品IDの一貫性や返品ポリシーの整備は、提供地域が広がる前から進められます。
まとめ
今回のGoogleの拡張は、UCPを「使うか使わないか」から「どの経路で使うか」の段階へ進めました。独自基盤の小売はカート移行とネイティブチェックアウトを選べるようになり、Shopify加盟店は既定値として後者に組み込まれています。
次に注目すべきは、ホリデー商戦を終えた時点で、Googleがネイティブチェックアウトとカート移行の成果を数字で示すかどうかです。分析ダッシュボードの実際の提供状況と、米国以外への展開時期も、自社の判断を左右する材料になります。



