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2026年2月26日

Stripeが年次レターでエージェンティックコマースの「5段階」を提唱 ── 現在はレベル1〜2、完全自律型購買への道筋を示す

目次
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この記事のポイント

  1. Stripeが2025年年次レターでエージェンティックコマースの5段階フレームワークを発表、業界は現在レベル1〜2の初期段階に位置
  2. ボット決済は増加中だが全体の1%未満、Stripe自身も「過度な期待」を率直に認める慎重な姿勢
  3. EC事業者はAIエージェント対応の段階的な準備と、複数の新プロトコルへの対応検討が必要

Stripe共同創業者が年次レターでAIショッピングの段階的進化を分析

2026年2月24日、決済インフラ大手のStripe2025年年次レターを公開しました。共同創業者のPatrick Collison氏とJohn Collison氏は、AIエージェントが消費者に代わって商品を検索・購入する「エージェンティックコマース」について、5段階のフレームワークを提示しています。レターではこの分野の将来性を高く評価しつつも、現在の業界は初期段階にとどまっているとの慎重な見解を示しました。

Stripeの2025年の総決済取扱高は1.9兆ドル(前年比34%増)に達し、世界のGDPの約1.6%に相当する規模まで成長しています。500万以上の事業者が同社のインフラを利用しており、エージェンティックコマースの動向を語るうえで無視できないプレイヤーです。

業界動向

エージェンティックコマースとは、AIエージェント(自律的なソフトウェア)が消費者に代わって商品の発見・比較・購入・決済を行う仕組みを指します。2025年後半から急速に注目を集めており、主要な調査会社もその市場規模を巨大と予測しています。

Boston Consulting Group(BCG)の調査によると、消費者の約81%がエージェンティックコマースツールの利用に前向きで、影響を受ける支出規模は1.3兆ドルに上ります。またMcKinseyが2025年10月に公表したレポートでは、2030年までに米国だけで最大1兆ドル、グローバルでは最大5兆ドルの小売売上がエージェンティックコマースの対象になると推計しています。

しかし現実はまだ追いついていません。Payments Diveの報道が指摘するとおり、ボットによる決済は増加傾向にあるものの、全体に占める比率は依然として1%未満です。Stripe自身もレターの中で、エージェンティックコマースは「一部で早期に過度な期待を受けている」と率直に認めています。

Stripeが定義する「エージェンティックコマースの5段階」

年次レターの中でStripeが最も注力したのが、エージェンティックコマースの成熟度を5段階で整理するフレームワークです。eMarketerの分析と合わせて、各レベルを解説します。

レベル1:フォーム自動入力。 AIが購入フォームを自動で入力し、消費者のチェックアウト作業を効率化します。現在のAIアシスタントが主に提供している機能です。

レベル2:説明型プロンプト。 消費者がAIに対し、具体的な商品名ではなく状況を説明して検索を依頼します。例えば「アウトドア好きの姉へのプレゼント」とAIに伝えれば、適切な候補を提示してくれます。Stripeによると、業界は現在レベル1と2の境界付近に位置しています。

レベル3:長期記憶と嗜好学習。 AIが消費者の過去の購買履歴や好みを記憶し、毎回説明しなくても最適な提案ができるようになる段階です。

レベル4:委任型購買。 消費者がAIエージェントを信頼し、一定の範囲で購入判断を任せます。予算や条件を設定すれば、AIが自律的に購入を完了します。

レベル5:完全自律型購買。 AIエージェントが消費者の生活パターンを完全に把握し、プロンプトなしで必要な商品を購入します。Stripeが挙げた例では、子どもの新学期用品をカレンダーと過去の予算に基づいて自動購入し、完了通知だけが届く世界です。

OpenAIとの共同開発やスタートアップへの出資で基盤整備を推進

Stripeは理論だけでなく、具体的な技術開発にも着手しています。年次レターによると、OpenAIと共同で「Agentic Commerce Protocol(ACP)」を開発し、AIプラットフォームと事業者間の共通技術仕様を策定しました。さらに「Agentic Commerce Suite」を提供開始し、事業者がACPやGoogleのUniversal Commerce Protocolなど複数のプロトコルに一括対応できる環境を整えています。

決済トークンの共有機能も導入されました。AIエージェントがクレジットカード番号などの機密情報に直接触れることなく決済を完了できる仕組みです。

スタートアップへの投資も進めています。Stripe元幹部のLouis Amira氏とDavid Noel-Romas氏が設立したCircuit & Chiselは、2025年9月に1920万ドルの資金調達を完了しました。同社が開発する「ATXP」は、AIエージェントがウェブ全体で商品の発見から決済まで自律的に完了するためのプロトコルです。Stripe自身も出資者に名を連ねています。

一方でJohn Collison氏はポッドキャスト出演で、ステーブルコイン(法定通貨に価値を連動させたデジタルトークン)と高スループットブロックチェーンがエージェンティックコマースを支えるインフラになるとの見通しを示しています。StripeはすでにUSDCによるAIエージェント決済をx402規格経由で統合しており、2025年にBridgeを買収したステーブルコイン基盤の取扱高は前年比で4倍以上に拡大しています。

EC事業者への影響と活用法

Stripeの5段階フレームワークは、EC事業者がエージェンティックコマースへの対応を段階的に計画するための指針となります。

短期的にはレベル1〜2への対応を優先すべきです。 具体的には、構造化データ(商品名、価格、在庫情報)の整備、APIの公開、AIが解釈しやすいチェックアウトフローの実装が重要です。AIエージェントがサイト上の商品情報を正確に取得できなければ、候補に挙がることすらありません。

複数のエージェンティックプロトコルへの対応を検討してください。 StripeのACP、Googleの Universal Commerce Protocol、Circuit & ChiselのATXPなど、複数の規格が並立する状況です。Stripeの「Agentic Commerce Suite」のように、一つの統合レイヤーで複数プロトコルに対応する手段が現実的な選択肢です。

決済トークンとセキュリティの対応を進める必要があります。 AIエージェントに決済を委任する消費者が増えるにつれ、カード情報をエージェントに直接渡さない仕組みが標準になります。トークン化された決済への対応は、消費者の信頼を獲得するうえで重要な差別化要因となります。

過度な先行投資は避け、段階的に対応してください。 eMarketerの予測によると、2026年にAIプラットフォーム経由で発生するEC売上の95%は、依然としてAIプラットフォーム外の加盟店サイト上で完了する見込みです。完全自律型の購買が主流になるのはまだ先であり、現時点では基盤整備に集中することが最適な戦略です。

まとめ

Stripeの年次レターは、エージェンティックコマースに対する業界の過度な期待を冷静に整理しつつ、その長期的な可能性を明確に示しました。レターの中でCollison兄弟はこの状況を1990年代半ばのインターネット黎明期になぞらえており、HTTPやHTMLが定まる前の試行錯誤の時代に相当するとの認識を示しています。

注目すべきは、Stripeが慎重な姿勢を取りながらも、OpenAIとのプロトコル共同開発、ステーブルコイン決済の拡充、スタートアップへの出資と、実際のインフラ整備を着実に進めている点です。EC事業者にとっては、AIエージェントが商品を「発見」できる環境の整備と、新たな決済プロトコルの動向監視が、今後12か月間の重要アクションとなります。