この記事のポイント
- Manhattan AssociatesがActivePlatform上に「Manhattan Marketplace」を開設し、パートナーや顧客がAIエージェント・拡張機能・アクセラレータを発見・展開できる共有エコシステムを発表
- 公開される全エージェントはActivePlatformの「決定論的な背骨」と運用ガードレールを継承するため、複雑な統合プロジェクトなしに安全に組み込める
- サプライチェーンソフトのAI化が「単体の機能」から「共有されるエコシステム」へ移行する転換点であり、EC・物流事業者にとっては自社業務に特化した拡張を調達する選択肢が広がる
Manhattan Marketplaceが示すサプライチェーンAIの新しい形

Manhattan Associates announced a major addition to ActivePlatform: Manhattan Marketplace, a shared ecosystem where customers and partners discover and deploy intelligent agents, extensions, and accelerators for Manhattan's Active solutions.
www.manilatimes.net2026年6月25日、サプライチェーン・コマースソフトウェアの世界的リーダーであるManhattan Associates(Nasdaq: MANH)が、同社の中核基盤ActivePlatformに大きな機能追加を発表しました。その名はManhattan Marketplace。顧客とパートナーが、ManhattanのActiveソリューション向けの知的エージェント、拡張機能、アクセラレータを発見し、展開できる共有エコシステムです。
スマートフォンのアプリストアを思い浮かべると分かりやすいかもしれません。OSを提供する事業者が土台を整え、その上で外部の開発者がアプリを作り、利用者は必要なものを選んで導入する。Manhattan Marketplaceは、これをサプライチェーンとコマースのAIエージェント領域で実現しようとする試みです。
注目すべきは、これが単発の製品リリースではなく、ここ1年あまり続いてきた一連のAI戦略の到達点だという点です。発表のなかで同社CTOのSanjeev Siotia氏は、その狙いを次のように語っています。
イノベーションはもはや単独の営みではなく、コミュニティ全体の英知をひとつの安全な環境に集めることです。Manhattan Marketplaceは、その協働を駆動するエンジンであり、パートナーと顧客が同じ土台の上に構築し、互いの最良のアイデアから恩恵を受けられるようにします。
「Active」までの道のりとAgent Foundry
Marketplaceの意味を理解するには、Manhattanがこの数年で積み上げてきたAIエージェント基盤を押さえておく必要があります。同社は2025年のイベント「Momentum」でエージェンティックAIへの本格投資を打ち出し、2026年1月にはAIエージェント群の商用提供を開始しました。これらは倉庫管理(WMS)、注文管理(OMS)、輸配送管理(TMS)といったActiveソリューションに直接組み込まれ、リアルタイムの業務文脈を踏まえて自律的に行動するエージェントとして設計されています。
その心臓部にあたるのがAgent Foundryです。これはノーコードでAIエージェントを構築・運用できるツールで、現場の業務担当者からプロの開発者まで、二通りの開発経路を用意しています。業務担当者は「計画段階で積載率を確認して」といった自然言語の指示を与えるだけで、システムが部品ライブラリから関連する「ヘルパーエージェント」を提案し、新しいエージェントの組み立てを助けます。プロンプトテンプレート、条件分岐を含む複数ステップのワークフロー、そして社内外のAPIや基盤エージェントの呼び出しを、ひとつの環境で扱える点が特徴です。
Manhattanは、こうしたエージェント活用によって意思決定が速まり、コストのかかる誤りが減ることで、最大60%の生産性向上が見込めると説明しています。Agent FoundryはすべてのManhattan Activeソリューションに同梱されており、顧客は追加導入なしにエージェント構築の能力を手にできる構造になっています。
Manhattan Marketplaceは、この流れの自然な延長線上にあります。自社で内製したエージェントを使うだけでなく、パートナーが作った成果物を取り込めるようにすることで、エコシステム全体の開発速度を引き上げる。それがMarketplaceの役割です。
「決定論的な背骨」がもたらす安心感
エンタープライズのサプライチェーン領域で、AIエージェントの導入が一筋縄でいかない最大の理由は、業務の正確性が問われる場面が多いからです。在庫数の計算、配送ルートの確定、注文の引き当て。こうした処理で生成AIが確率的に「それらしい」答えを返すだけでは、現場は安心して任せられません。
Manhattanが繰り返し強調するのが「決定論的な背骨(deterministic spine)」という考え方です。Marketplaceに公開される全てのエージェントと拡張機能はActivePlatform上でネイティブに動作し、中核ソフトと同じ決定論的な基盤と運用ガードレールを継承します。つまり、AIが裁量を発揮する部分と、システムが厳密に保証する部分が明確に切り分けられている設計です。
この設計には、現場が安心して使えること以上の意味があります。Marketplaceで配布されるエージェントが、Manhattan純正であろうとパートナー製であろうと、すべて同じ土台の上で動くため、品質や挙動のばらつきを抑えられます。AICommissionの報道でも、この「共通の決定論的な土台」が、Manhattan・パートナー・顧客の三者がエージェントを構築する際の信頼の基礎になると指摘されています。
加えて、Agent Foundryを使えばパートナーは複雑で重い統合プロジェクトを経ずに自社ソリューションをエコシステムへ直結できます。Manhattanの基盤がもともと「徹底したオープン性」を掲げてきたことの、AI時代における具体化と言えます。
パートナーが先行、顧客提供は今後の四半期に
Marketplaceの立ち上げにあたり、すでに複数のパートナーが開発に着手しています。実装パートナーであるVeridianの共同創業者Sandeep Patel氏は、その手応えを次のように述べています。
ManhattanのAIエージェント、Agent Foundry、そしてMarketplaceのエコシステムが市場にもたらす柔軟性とイノベーションの可能性に期待しています。顧客が運用環境を素早く強化・拡張する方法を求め続けるなか、Marketplaceを活用して顧客固有の実用的なソリューションを届ける大きな機会があると見ています。
提供のスケジュールについて、Manhattanはパートナーが先行して開発を進めている段階だと説明しています。顧客がMarketplaceにアクセスできるようになるのは今後の四半期で、コンテンツや機能は時間をかけて拡充されていく見通しです。すぐに全機能が出揃うわけではなく、エコシステムとして段階的に育てていく構えです。
EC・物流事業者にとっての示唆
この発表を、自社にどう関係づければよいのでしょうか。Manhattanの顧客であるEC・小売・物流事業者にとって、最も大きな変化はAI機能の「調達の仕方」が変わることです。これまでは自社開発か、ベンダーの標準機能を待つかの二択に近かったものが、業界・業務・地域に特化したパートナー製の拡張を、検証済みの土台の上から選んで導入できるようになります。
たとえば特定の業種に固有の在庫ルールや、ある地域の配送規制に対応したエージェントを、ゼロから内製するのではなくMarketplaceから取り込む。そうした選択肢が現実味を帯びてきます。導入の摩擦が下がれば、AI活用の試行錯誤を速く回せるようになります。
より広い視点で見ると、これはサプライチェーンソフトのAI化が「単体の賢い機能」から「共有されるエコシステム」へ移行していることの象徴です。Salesforce、Adobe、SAPといった大手も、自社プラットフォーム上でAIエージェントを流通させる仕組みづくりを進めています。エージェントが企業の業務を横断して動く時代には、誰の基盤の上に、どんなガードレールでエージェントが動くのかという「土台選び」が、これまで以上に重要な意思決定になっていきます。エージェント同士が連携して購買や在庫補充を進めるエージェンティックコマースの広がりを見据えるうえでも、押さえておきたい動きです。
まとめ
Manhattan Marketplaceは、AIエージェントを「作る」段階から「分かち合い、組み合わせる」段階への移行を示す一手です。決定論的な土台というManhattan固有の強みを保ちながら、外部の知恵を取り込むエコシステムを開く。顧客提供は今後の四半期となるため、どのようなパートナー製エージェントが並ぶのか、そして「土台に依存しない移植性」をどこまで担保できるのかが、次に注目すべきポイントになります。





