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2026年3月3日

Stripe・Affirm・Klarnaが「Shared Payment Tokens」でBNPLをAIエージェント決済に統合

目次
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この記事のポイント

  1. AffirmとKlarnaがStripeのShared Payment Tokensに対応し、AIエージェント経由のBNPL決済を実現
  2. Visa・Mastercardのエージェンティックネットワークトークンも統合され、決済インフラが一元化
  3. EC事業者はStripe既存連携だけでAIエージェント経由の多様な決済手段を自動的に受け入れ可能に

AffirmとKlarnaがStripeとの提携を同時拡大、AIエージェント向けBNPL基盤を構築

2026年3月3日、BNPL(後払い決済)大手のAffirmKlarnaが相次いでStripeとの提携拡大を発表しました。両社はStripeが開発した「Shared Payment Tokens」(SPT)に対応し、AIエージェントがBNPL決済を処理できる基盤を構築します。

同日、Stripeは公式ブログでVisaとMastercardの「エージェンティックネットワークトークン」への対応も発表しています。これにより、SPTという単一のプリミティブ(基本構成要素)を通じて、カード決済・BNPL・ネットワークトークンを一元的に処理できる体制が整いました。

Affirm SVP of ProductのVishal Kapoor氏は、AIが購買を支援する時代でも消費者は総コストの透明性と明確な返済プランを求めるとし、AffirmをAIネイティブとして設計してきた意義を強調しています。

背景と業界動向

エージェンティックコマースの決済基盤は、2025年後半から急速に整備が進んでいます。Stripeは2025年にSPTをローンチし、OpenAIと共同開発したAgentic Commerce Protocol(ACP)によってChatGPT上での即時チェックアウトを実現しました。EtsyやURBN(Anthropologie、Free People、Urban Outfitters)といった大手がすでにSPTを導入しています。

一方で、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の調査では、米国消費者の81%がエージェンティックコマースツールの利用意向を示し、影響を受ける消費額は1兆ドル超に達する可能性があるとされています。McKinseyの2025年10月のレポートも、2030年までに米国だけで最大1兆ドル、グローバルでは5兆ドル規模の小売機会を予測しています。

こうした市場ポテンシャルの中で、課題となっていたのがAIエージェント経由の決済における「支払い方法の選択肢の制限」でした。従来のエージェント決済は「カード・オン・ファイル」(登録済みカード)に限定されがちで、BNPLなどの代替決済手段が使えない状態が続いていました。今回の動きはこの構造的な課題を解消するものです。

Shared Payment Tokensの技術的仕組みとVisa・Mastercard対応

StripeのShared Payment Tokens(SPT)は、エージェンティックコマース専用に設計された決済プリミティブです。その仕組みは以下の通りです。

消費者がAIプラットフォーム上で購入を承認すると、Stripeは対象取引にスコープされたSPTを発行します。AIエージェントはこのトークンを使って決済を開始しますが、消費者の実際のカード情報や認証情報には一切アクセスできません。SPTは利用金額や期間の制限を設定でき、いつでも無効化が可能です。さらに、Stripeの不正検知システム「Radar」と連携し、リアルタイムで不正取引を検出します。

今回の拡張では、このSPTの裏側で3種類のトークンが処理されるようになりました。

まず「Visa Intelligent Commerce」と「Mastercard Agent Pay」への対応です。消費者がエージェントに購入を許可すると、StripeがVisa・Mastercardからエージェンティックネットワークトークンをプロビジョニングします。Visa SVPのRubail Birwadker氏は、Stripeとの提携によりエージェント駆動の決済に信頼性とセキュリティを提供すると述べています。Mastercard CDOのPablo Fourez氏も、Agent PayがネットワークトークナイゼーションをAI決済に拡張する基盤となると位置づけています。

次にBNPL対応です。消費者がBNPLを選択した場合、StripeはBNPLプロバイダの確認ページをエージェントのUI上に表示し、加盟店の認証情報をBNPLプロバイダに安全に渡します。Affirmの場合、リアルタイムの適格性チェックを経て返済プランを選択し、AIプラットフォーム上で購入を完了できます。

重要な点として、Stripeと直接連携していない加盟店でも、SPTを自社の決済システムに転送することでエージェンティック決済を受け入れることが可能です。Affirm対応については、Stripe直接加盟店は先行対応し、非Stripe加盟店への展開は2026年後半を予定しています。

Stripe共同創業者が示す「段階的進化」の現実認識

一連のインフラ整備を進める一方で、Stripe自身はエージェンティックコマースの進展に慎重な見方を示しています。Patrick CollisonとJohn Collisonの共同創業者は、先週公開した年次書簡の中でエージェンティックコマースを5段階に分類しました。

現在の業界は「レベル1〜2の境界」にあるとされ、特定の商品属性を指定して検索する段階から、状況を説明して購入を依頼する段階への移行期にあたります。最終形であるレベル5では、エージェントが予算やスケジュールを把握して自律的に購入・配送まで完了します。

Stripe出資のスタートアップCircuit & ChiselのCEO Louis Amira氏(元Stripe暗号資産・AIパートナーシップ責任者)も、現時点では各社のプロトコルが乱立しており、大規模な投資判断を下す段階ではないとの認識を示しています。Stripe年次書簡では、現在の状況を1990年代半ばのインターネットプロトコル形成期になぞらえています。

EC事業者への影響と活用法

今回の動きがEC事業者にもたらす実務的なインパクトは3つあります。

第一に、「導入の手軽さ」です。すでにStripeで決済を処理し、AffirmやKlarnaを提供している加盟店は、追加の統合作業なしにAIエージェント経由のBNPL決済を受け入れられるようになります。Stripeのブログによれば、既存のStripe連携を最小1行のコード変更でエージェンティック決済に対応させることが可能です。

第二に、「コンバージョン向上への寄与」です。Stripeの検証では、BNPL対応セッションで最大14%の収益増加が確認されています。AIエージェントが代替決済手段を提示できるようになることで、カート放棄率の低下と平均注文額の向上が期待されます。

第三に、「KYA(Know Your Agent)対応への備え」です。PYMNTSの報道によれば、エージェンティックコマースではKYC(Know Your Customer)に加え、AIエージェント自体の本人確認「KYA」が新たなコンプライアンス要件として浮上しています。TruliooのCPO Zac Cohen氏は、エージェントの身元確認と権限委譲の範囲管理が取引拡大の鍵になると指摘しています。EC事業者は、決済インフラの選定においてこうしたセキュリティ・コンプライアンス面の対応力も評価軸に加える必要があります。

まとめ

Stripe・Affirm・Klarnaの同時発表は、エージェンティックコマースの決済インフラが「カード決済だけ」の段階から「多様な決済手段をAIエージェント経由で提供できる」段階へ移行したことを象徴しています。Visa・Mastercardのネットワークトークンとの統合により、既存の決済ネットワークとの互換性も確保されました。

ただし、Stripe自身が認めるように、業界はまだ初期段階にあります。ACP、Google A2A/UCP、Mastercard Agent Payなど複数のプロトコルが並行して発展しており、最終的な標準がどこに収斂するかは不透明です。EC事業者としては、まずStripeなど主要プロセッサのエージェンティック決済機能を把握し、自社のBNPL・決済手段の対応状況を確認しておくことが重要です。2026年後半にかけて、非Stripe加盟店への展開やさらなる決済手段の追加が見込まれます。