AI流入元の首位が分散し始めた、ChatGPT首位の小売が844社から722社に減りClaudeは1社から15社へ
Digital Commerce 360とReFiBuyの2026年Q2データで、Top 1000小売のAI経由トラフィックの流入元がどう動いたかを解説。首位カウントという指標の読み方と限界、Claude急伸とGemini倍増の背景、EC事業者が複数AI対応と計測で何を優先すべきかまで整理します。
この記事のポイント
- Digital Commerce 360とReFiBuyの2026年Q2データで、ChatGPTを最大のAI流入元とするTop 1000小売は844社から722社に減り、Geminiは16社から32社、Perplexityは8社から21社、Claudeは1社から15社に増えた
- この数字はシェアではなく「各小売にとっての首位」を数えたもので、ChatGPTの絶対量が減った証拠ではない。Similarwebの訪問数でもChatGPTは横ばいで、伸びた挑戦者に首位を譲った小売が増えたと読むのが正確になる
- 単一プラットフォームへの最適化は前提が崩れつつある。EC事業者は流入元ごとの計測を整え、どのエンジンでも読める商品データを先に整備する必要がある
AI経由の流入は量ではまだ小さく、質と伸び率で別格になった

上位オンライン小売へのAI経由流入は伸び続けており、新しいランキングはどのLLMが最も多くの訪問者をECサイトに送っているかを明らかにした。
www.digitalcommerce360.com入口の数字から確認します。Adobe Analyticsの2026年7月データによれば、米国小売サイトへのAI経由流入は前年同月比62%増、生成AIが普及し始めた2024年10月と比べると1,219%増です。訪問の質でも差がついており、AI経由の訪問者は1訪問あたりの売上が他の流入より53%多く、コンバージョン率は60%高い状態が11カ月続いています。5月時点の同じ指標はこちらの記事で扱いました。
それでも、Digital Commerce 360が書いているとおり、AI経由の流入は総量では従来の検索エンジン経由を上回っていません。太くなり続けている細い水路、というのが2026年夏の現在地です。Adobeは同じ7月の集計で、米国小売サイトのホームページの機械可読性が平均61%にとどまるという別の数字も出しており、受け皿側の遅れは依然として大きい状況です。
ここまでは「AI経由の流入が伸びている」という話でした。今回のDigital Commerce 360の記事が新しいのは、その流入がどのAIプラットフォームから来ているのかを、小売ごとに四半期で比べた点にあります。
首位のAI流入元はQ1からQ2でどう動いたか
データの出どころは、Digital Commerce 360とReFiBuyが2026年7月に始めたAI Commerce Rankingsです。北米の年間ウェブ売上上位1,000社を収録したTop 1000 Databaseを母集団に、各社のAIショッピング対応度を四半期ごとに採点しており、初回結果の読み方は以前の記事にまとめています。
Q2版で追加された切り口が、各小売について「AI経由の流入のうち最大の供給元はどのエンジンか」を数えたものです。ReFiBuyの創業者兼CEOであるScot Wingo氏は、Digital Commerce 360の取材にこう説明しています。
動いた項目のひとつを挙げると、Q1には844社の小売がChatGPTを首位としていました。それがQ2では722社に減りました。
減った分を埋めたのが後続のプラットフォームです。Wingo氏によればGeminiを首位とする小売は16社から32社に倍増し、PerplexityについてWingo氏は12社増と述べています。一方、ReFiBuyが公開しているQ2の集計ページでは、Perplexityは8社から21社、Claudeは1社から15社と示されています。
| AI流入元 | 2026年Q1(首位とする小売数) | 2026年Q2(同) | 変化 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT(OpenAI) | 844社 | 722社 | 122社減 |
| Gemini(Google) | 16社 | 32社 | 2倍 |
| Perplexity | 8社 | 21社 | 2.6倍 |
| Claude(Anthropic) | 1社 | 15社 | 15倍 |
4つのエンジンのうち、Q2に首位の座を減らしたのはChatGPTだけでした。ただし722社という数は、母集団1,000社の7割強です。首位が分散し始めたのは事実でも、ChatGPTが依然として圧倒的な最大供給源であることは動いていません。
この指標の読み方、シェアではなく首位カウント
ここが本記事でいちばん丁寧に扱いたい部分です。今回の数字は流入量のシェアではなく、「その小売にとって最大のAI流入元がどれか」を数えた小売の社数です。ReFiBuy自身も図表の注記で「トラフィックシェアではなく小売の数」と明記しています。
指標の性質上、ChatGPTの首位カウントが減っても、ChatGPT経由の訪問が減ったことにはなりません。ある小売でChatGPT経由の訪問が横ばいのまま、Gemini経由が急増して逆転すれば、それだけでカウントはひとつ動きます。したがって「ChatGPTを首位とする小売が122社減った」は、「122社でChatGPT以外のエンジンがChatGPTを追い越した」と読むのが正確です。
この読み方を裏づけるのが第三者データです。Similarwebの推計を整理したAI検索の統計によれば、生成AIサイトの訪問シェアでChatGPTは2025年6月の約76%から2026年5月には約53%へ下がりましたが、訪問数の絶対値はほぼ横ばいでした。同じ期間にGeminiは9%未満から27〜28%へ、Claudeは約2%から約9%へ伸びています。
| プラットフォーム | 2025年6月 | 2026年5月 | 訪問数の増減(2025年5月→2026年5月) |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 約76% | 約53% | 約2%増(ほぼ横ばい) |
| Gemini | 9%未満 | 約27〜28% | 450%増 |
| Claude | 約2% | 約9% | 855%増 |
Similarwebの数字は各アシスタントのサイトそのものへの訪問であり、小売サイトへの送客量ではありません。それでも、「ChatGPTが減ったのではなく、周りが伸びた」という構図は両方のデータで一致します。
留保も3つ必要です。第一に、比較はQ1とQ2の1四半期分しかなく、ReFiBuyは計測手法を版ごとに更新すると明記しているため、傾向と呼ぶには早い段階です。第二に、Gemini・Perplexity・Claudeを合わせても首位とする小売は68社で、動いた範囲は全体の1割に満たない規模です。第三に、ReFiBuyは「Agentic Commerce Optimization」という言葉を作り、それを事業として販売している当事者であり、複数エンジン対応の必要性を強調する動機を持ちます。データそのものの価値とは別に、解釈は割り引いて読む必要があります。
Claudeが1社から15社へ伸びた背景
社数では小さくても、増加率で見ればClaudeの動きが4エンジン中で最大です。Wingo氏は「1社から15社へ、これは本当に大きな動きだ」と述べ、この勢いが8四半期続けばGeminiやChatGPTと争う位置に来ると見ています。
背景としてWingo氏が挙げたのは、Claudeが商品を薦める際に表示する商品カードです。ReFiBuyの監視エージェントがClaudeの商品カードを最初に観測したと報告したのは2026年6月中旬でした。つまりQ2のうち商品カードが動いていたのは末尾の2週間ほどで、Q2の伸びの大部分は商品カード以前のClaudeで起きていることになります。カードが本格的に効くとすればQ3以降で、次の版で検証される項目です。
Anthropicの商流への姿勢は、OpenAIやGoogleが2025年に取り組んだチェックアウト統合とは方向が異なりました。Digital Commerce 360が整理したように、同社は社内実験のProject Dealでエージェント同士の取引を検証し、2026年8月末にはSalesforceとの提携でClaudeforceを発表しています。
そして今回の記事の前日にあたる9月2日、Anthropicはコマース向けのエージェント設計図を公開しました。小売サイトやアプリの中で商品検索からカート投入までを担うショッピングエージェントと、売上や在庫の質問に答えるマーチャントエージェントの2種類で、Accenture、Mastercard、Visaがパートナーとして名を連ね、Shopifyが参照実装を構築中です。注意点として、これらのエージェントは小売の自社サイトに組み込むもので、Claudeのアプリから小売サイトへ送客する仕組みとは別物です。送客の伸びと設計図の公開は、同じ会社の別々の動きとして分けて見る必要があります。
Gemini倍増とPerplexityの伸びをどう見るか
Geminiの首位カウント倍増は、利用者数の拡大とほぼ並行しています。Similarwebの推計では、Geminiの月間訪問数は2025年5月から2026年5月で450%増でした。Googleは検索結果とAI Modeに購入ボタンを組み込み、Universal Commerce Protocol(UCP)で小売のカタログと直接つなぐ経路を広げています。
UCPについてはReFiBuyの集計に興味深い数字があります。Top 1000のうちUCPエンドポイントを検出できたのは225社で、その225社のAI1000順位の中央値は304位、それ以外は550位でした。ReFiBuy自身が「関連であって因果ではない」と注記しているとおり、UCP対応が順位を上げたのか、対応する余力のある企業が元々上位なのかは分かりません。
Perplexityの8社から21社への伸びは、やや説明しにくい動きです。ReFiBuyは6月の時点で、Perplexityが購入機能と商品カードを取り下げたと報告しています。それでも首位とする小売が2.6倍になったのは、Perplexityが購買より調査の用途で使われ、その調査が小売サイトへの流入として現れている状況を示しています。購入機能の有無と送客量は、必ずしも連動しないという例です。
EC事業者への示唆、単一最適化から複数対応へ
AI Commerce Rankingsの4つの評価軸には、AI経由の流入量とは別に「AI流入元の多様性」が含まれています。指標にこの項目が入っていること自体が、特定のエンジンだけに最適化する戦略はリスクだと見なされていることの表れです。今回の首位カウントの分散は、その見方を1四半期分のデータで補強しました。
同じQ2版では、1,000社のうち972社が順位を変え、中央値で35位動いています。指数の平均値も42.0から39.7に下がりました。ReFiBuyはこれを、流入元と販売面が増えるほど合格ラインが上がる環境だと説明しています。AIショッピングは従来のSEOよりはるかに短い周期で盤面が入れ替わる、という指摘です。
実務で先に手を付けるべきは計測です。AI経由の訪問をひとまとめに「AI」として数えていると、今回のような流入元の入れ替わりを自社データで確認できません。リファラーごとにChatGPT、Gemini、Claude、Perplexity、Copilotを分けて集計し、四半期ごとに首位がどれかを見る体制が必要です。Similarwebの分析では、2026年5月以降ChatGPTからの参照の6割強がトップページに着地しており、商品ページに直接来ない訪問をどう追うかも分析の死角になります。
次が商品データです。Wingo氏は8月の時点で、AIショッピングは従来のECとは別の時計で動いており、対策を一度きりの取り組みとして扱えないと述べています。ReFiBuyの集計ページも、ひとつのエンジンに合わせたカタログは増え続けるAI面すべてで機能する必要があると指摘します。エンジンごとの個別対策より前に、JavaScript実行前のHTMLに価格・在庫・仕様が載っているか、構造化データが商品単位で揃っているかという共通の土台を整える方が、複数エンジンへの効き方が安定します。UCPやACPのような接続規格への対応は、その土台ができてからの話です。
まとめ
今回のデータが示したのは、ChatGPTの後退ではなく、AI経由の流入がひとつの入口に集中する時代の終わりの始まりです。首位カウントで見ればChatGPTはなお7割強を占め、Gemini・Perplexity・Claudeを合わせても68社にすぎません。
それでも、1四半期でこれだけ入れ替わったという事実は、次の版で確かめる価値があります。Claudeの商品カードが丸ごと効くQ3、Anthropicの設計図を採用したShopify系の店舗、そして年末商戦に向けたUCP対応の広がりが、Q3版の変数になります。EC事業者にとっての問いは「どのAIに賭けるか」ではなく、「どのAIが来ても読める状態になっているか」に移っています。


