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AIコマース2026年10月16日

DRESSXがAIコマース分析を開始、ChatGPT・Geminiでの推薦から購入までを測る仕組みと限界

DRESSXがAIでの見え方と売上をつなぐAIコマース分析を発表しました。測れる指標、データの取り方、料金、Profoundとの違い、AI回答の揺れという計測の限界まで、EC事業者向けに解説します。

DRESSXがAIコマース分析を開始、ChatGPT・Geminiでの推薦から購入までを測る仕組みと限界

この記事のポイント

  1. DRESSXが、AIでの見え方を測る「AI Visibility」と、AI経由の訪問を注文まで追う「AI Revenue Tracker」を組み合わせたAIコマース分析を発表しました
  2. AI経由の流入は伸びている一方で、アクセス解析では「Direct(直接流入)」に埋もれやすく、AIの見え方と売上の関係は測りにくいものでした
  3. 推薦の順位は回答ごとに大きく揺れるため、EC事業者は「何位か」より「何割の回答に出るか」と「どのAIから何円売れたか」を分けて読む必要があります

DRESSXが発表した「AIコマース分析」の中身

2026年10月15日、DRESSXがブランド・小売向けのAIコマース分析を発表したとRetail Timesが報じました。消費者がAIに何を尋ね、どんな推薦を受け、その後どれだけ店舗サイトに来て、カートに入れ、購入したか。この一連の流れを1つの計測でつなぐ、というのが発表の主張です。

中身は2つのツールです。AI Visibilityは、消費者がAIに「何を買えばいいか」と尋ねたときに何が表示されるかを調べます。もう1つのAI Revenue Trackerは、どのAIが自社サイトに送客し、その訪問者がカートや注文へどう進んだかを示します。

DRESSXはデジタルファッションで知られ、小売向けにバーチャル試着やAIスタイリングを提供してきた企業です。今回は、顧客と接する技術から、顧客の行動を測る分析へと事業を広げた形です。

提供窓口は、DRESSXが運営するMore Dash Adsです。More Dash Adsのプライバシー通知によると、運営主体は「More Dash Inc.(DRESSXとして事業を行う)」で、OpenAIの広告サービスを通じて表示される広告の作成・運用・計測を代行する独立した仲介事業者だと説明されています。つまり今回の分析ツールは、ChatGPT内の広告を売る事業の周辺に置かれた計測製品という位置づけです。

共同創業者のDaria Shapovalova氏とNatalia Modenova氏は、発表で次のように述べています。

私たちは検索とソーシャルを測る方法を身につけてきました。いまはAIを同じように理解する必要があります。

なぜ今、AIの「答え」を測る必要があるのか

数字の面では、AIはすでに無視できない流入元になっています。Adobe Analyticsの集計を伝えたDigital Commerce 360の記事によると、2026年7月の米国小売サイトへのAI経由の訪問は前年同月比62%増でした。2024年10月と比べると1,219%増です。AI経由の訪問は購入率が60%高く、訪問あたりの売上も53%高いとされています。

ところが、その訪問はアクセス解析で正しく数えられていません。分析ツールを提供するClickportの解説記事は、ChatGPTからのクリックが参照元(リファラー)を失う経路を整理しています。アプリ内ブラウザなどで参照元が届かず、utm_source=chatgpt.comのタグもなければ、GA4では「Direct(直接流入)」になります。同社の2026年4月の集計では、AIからと判別できたセッションの35.7%が、タグはあるのに参照元がない状態でした。

GA4も2026年5月13日に「AI Assistant」のチャネルを追加しましたが、GoogleのAIによる概要やAIモードからの流入は自然検索に含まれたままです。そもそも、AIの回答で自社が推薦されたのか、競合が推薦されたのかは、自社サイトのログには残りません。DRESSXのCTO、Ivan Zaparovannyi氏は、この状況を一言で表しています。

答えが新しい棚です。どのブランドが見つかり、どのブランドが推薦され、どのブランドが購買の流れに一度も入らないかを、答えが決めます。

AI Visibility:質問を投げて、答えを数える

AI Visibilityの製品ページを見ると、計測の方法はシンプルです。ブランドを登録し、買い手が実際に尋ねそうな質問を3つ入力します。するとツールがChatGPT、Google、Gemini、Perplexity、Copilotに同じ質問を投げ、その回答を集計します。ページ内では「7つのAIを1回で確認」とも書かれており、対象の数の表記は揃っていません。

集計される指標は6つです。

  • Visibility:自社の質問に対する回答のうち、自社名が出た割合
  • Share of voice:自社より前に名前が出た競合とその割合
  • Cited sites:AIが回答の前に読んだサイト
  • Links to you:自社サイトへのリンクを含む回答
  • Ads in answers:回答の中に広告を出している企業
  • Gap analysis:競合の名前は載っていて自社の名前がない、AIが引用したページ

見本のレポートでは、41件の回答のうち21件で自社名が出たので「Visibility 51%」と表示されます。「繰り返すと答えが入れ替わる質問が2つある」といった指摘や、次の打ち手の提案も付きます。

注目すべきはGap analysisです。AIが引用しているのに自社名が載っていないページを洗い出すことで、AI検索対策(GEO・LLMO)で「どの媒体に取り上げてもらえば推薦に入れるか」が具体的になります。

料金は、ブランドの初回チェックが無料で、3日間の無料体験があると案内されています。継続利用の料金、追跡できる質問の数、計測の頻度は公開ページでは未開示です。

AI Revenue Tracker:AI経由の訪問を注文まで追う

今回の新しさは、見え方と売上を同じ製品に置いた点にあります。売上側を担うのがAI Revenue Trackerです。

仕組みは、店舗サイトの全ページに貼るピクセル(計測用の短いコード)です。ピクセルはページ閲覧、商品閲覧、カート、チェックアウト、注文の5つのイベントを自動で見つけて記録します。Shopify、WooCommerce、Magento、BigCommerce、自社構築のサイトに対応し、開発者の作業は不要としています。

AIからの訪問の見分け方は4段階で説明されています。

  1. 参照元(chatgpt.comなど)、リンクのUTMタグ、クリックに付くパラメーターからAIを判別する
  2. 判別した流入元を、最初のページだけでなくセッション全体にわたって訪問者に保持する
  3. 商品閲覧、カート、チェックアウト、注文の各イベントに流入元を付ける
  4. それらをAIごとの売上として集計する

対象のAIは、ChatGPT、Perplexity、Gemini、Copilot、Claude、GoogleのAIモードの6つです。各数値には「どの方法で流入元を判別したか、どの程度確かか」が付くとされています。月曜にスマートフォンでChatGPTから来た人が木曜にノートPCで注文しても、その注文はChatGPTの成果として残ると説明しています。

料金は公開されています。

プラン月額主な内容
Starter49ドルAI別の売上の概要、基本的な商品・ページの計測、履歴30日、月2.5万AIイベント、1店舗
Growth149ドル流入元・商品・ピクセルの状態、カート・チェックアウト・注文の金額、履歴90日、月10万AIイベント
Scale249ドル購買経路の全体の分析、通貨・国・端末での絞り込み、履歴12か月、月25万AIイベント、判別ルールを言葉で書き換え

いずれも3日間の無料体験があり、年払いは2か月分が無料です。

ただし、端末をまたいだ訪問を同じ人と見なす方法(ログイン情報で結びつけるのか、推定なのか)と、その精度は公開ページでは説明されていません。製品ページの売上の数字も「説明用の例」と明記されています。導入企業の数や実際の成果は未開示です。

既存のAI可視化ツールとは何が違うのか

AIでの見え方を測るツールは、すでに数多くあります。代表格のProfoundも、料金ページで「Agent Analytics」としてAI経由の流入と帰属の計測を掲げています。違いが出るのは、データの取り方と、どこまでを売上として扱うかです。

項目DRESSX(More Dash)ProfoundGA4のAI Assistantチャネル
見え方の計測あり(AI Visibility。質問3つから開始)あり(体験版は50の質問を7日間、継続利用は個別設計)なし
対象のAI(見え方)ChatGPT、Google、Gemini、Perplexity、Copilotなど体験版3つ、継続利用は最大9つなし
流入・売上の計測店舗のピクセルで5イベント(閲覧〜注文の金額)Agent Analytics(CDN・GAなどと連携)AIアシスタントからの流入を分類(AIモード等は自然検索)
料金見え方は初回無料・継続は未開示、売上計測は月49〜249ドル体験版は無料、継続利用は個別見積もり無料
事業の背景ChatGPT内の広告の運用代行AI検索対策とマーケティングのAIアクセス解析

Profoundの流入計測は、CDN(コンテンツ配信網)やGoogleアナリティクスと連携する仕組みです。AI Revenue Trackerは、店舗のピクセルでカートや注文の金額まで直接取ります。価格も月49ドルからで、継続利用が個別見積もりのProfoundより中小のブランドが試しやすい設定です。

一方で、Profoundは継続利用で最大9つのAIを追跡し、質問の数も個別に設計できます。AIでの見え方を深く分析したい大手には、Profoundのほうが厚い選択肢です。DRESSXの強みは分析の深さよりも、見え方と売上を1つの画面に並べることにあります。

計測の限界:揺れる回答と、測る側の立場

推進側の説明だけでは見えない課題が3つあります。

1つ目は、AIの回答そのものの揺れです。SparkToroのRand Fishkin氏とGumshoe.aiのPatrick O'Donnell氏が行った調査を伝えたSearch Engine Landの記事によると、600人のボランティアが同じ12の質問をChatGPT、Claude、GoogleのAIに約3,000回投げたところ、同じブランドの一覧が返る確率は100分の1未満でした。調査は、推薦の順位は不安定すぎて実質的に意味がないと結論づけています。

DRESSXの製品画面には「あなたは3位です」という表示があります。この調査に照らせば、順位の上下を追うのは危ういということになります。同じ調査は、回答の何割に自社名が出るかという出現率は比較的安定していたとも報告しています。DRESSXのVisibilityは出現率に当たるため、こちらは使える指標です。ただし、3つの質問だけで市場全体を代表させるのは無理があり、質問を増やして何度も回すことが前提です。なお、調査の実施者の一方はAI可視化ツールの販売企業で、査読も経ていない点は差し引いて読む必要があります。

2つ目は、売上の計測が届く範囲です。AI Revenue Trackerは店舗サイトに貼るピクセルで動きます。AIの画面の中で購入が完了する場合、店舗のページは開かれません。こうした購入をどう扱うのかは、公開情報では触れられていません。参照元もUTMタグも届かない訪問は、どのツールでも判別できない点も変わりません。

3つ目は、測る側の立場です。More Dash Adsの本業は、ChatGPTの回答の下に出る広告の販売です。OpenAIは2026年5月にセルフサーブの広告管理画面とクリック課金を導入しています。AI Visibilityには「回答の中に広告を出している企業」という指標があり、可視化の結果が広告の購入につながる導線になっています。広告の売り手が効果測定も担う以上、数字を読む側は計測の前提を自分で確かめる必要があります。

EC事業者はまず何をすべきか

いきなり有料ツールを入れる前に、無料でできる準備があります。最初は、GA4のAI Assistantチャネルと、utm_source=chatgpt.comなどのタグを使って、すでにAIからどれだけ人が来ているかを見ることです。ここで動きが小さいなら、高度な帰属の計測はまだ急ぐ必要がありません。

見え方の計測を始めるなら、主力カテゴリについて買い手の言い回しで質問を作り、何割の回答に自社名が出るかを定点で観測します。順位ではなく出現率を、1回ではなく繰り返しの平均を見ます。そのうえで、AIが引用しているのに自社名がない媒体を、広報やコンテンツの打ち手に落とし込みます。

売上の帰属まで測る段階では、DRESSXのようなピクセル型のツールが候補になります。導入前に、端末をまたぐ訪問の結びつけ方と、AIの画面の中での購入の扱いを確認しておくべきです。

まとめ

DRESSXの発表は、AIでの見え方と売上を1本の線でつなごうとする試みです。月49ドルからの価格で、小さなブランドでもAI経由の売上を確かめられるようになりました。

それでも、AIの回答は質問のたびに変わり、AIの画面の中で終わる購入は店舗のピクセルには届きません。「答えが新しい棚」だとしても、その棚の並びは毎回入れ替わります。この揺れを前提にした指標を誰が先に定着させるのか。それが、AIコマース分析が検索やSNSの分析と並ぶ道具になれるかの分かれ目になります。