AIコマース ニュースダイジェスト(2026年9月4日)
エージェントを作る側の動きが同じ日に揃いました。Anthropicのコマースエージェント設計図、MastercardのStart Path初回コホート22社、AI流入元がChatGPT一強から分散へ向かうDigital Commerce 360のデータまで、9月4日の小売EC・AIコマース動向をまとめます。
この記事のポイント
- Anthropicがショッピングとマーチャントの2種類のエージェント実装を公開し、Visa・Mastercard・Shopifyが採用を表明しました
- MastercardのStart Pathがエージェンティックコマース初回コホート22社を発表し、決済・ID・カタログ最適化の層が出そろいました
- AI流入元はChatGPT一強から分散へ。Gemini首位の小売が倍増し、Claudeを首位とする小売も1社から15社に増えました
9月4日のAIコマース関連ニュースをお届けします。本日は「エージェントを作る側」の動きが揃いました。Anthropicが小売向けエージェントの設計図を公開し、Mastercardはそれを支えるスタートアップ22社を選び、Digital Commerce 360のデータではAI流入元の勢力図が動いています。前日に取り上げたNIQとSimilarwebの計測提携が「AI経由の売上をどう測るか」だったのに対し、今日は「誰のエージェントが、どの決済とID基盤の上で動くか」という供給側の話が中心です。周辺では中国の即時小売、EUの関税改革、フランスの超ファストファッション法をめぐる応酬など、EC全体の地殻変動も続いています。
今日の注目ニュース
Anthropicが小売向けコマースエージェントのブループリントを公開

Claude上でコマースエージェントを構築するためのブループリントを公開しました。エンジニアリングチームが数日でコマースエージェントを稼働させるためのハーネス、パターン、ガードレールを含みます。
claude.comAnthropicは9月2日、Claudeでコマースエージェントを構築するための「ブループリント」を公開しました。小売、旅行、通信、チケットの4業種向けに、消費者に向き合うショッピングエージェントと、店舗運営者に向き合うマーチャントエージェントの動作するリファレンス実装を含みます。Claude Codeのプラグインも同梱され、Claude API、Amazon Bedrock、Microsoft Foundry、Google Cloud Vertex AIのいずれでもデプロイできます。
設計思想で目を引くのは、決済をEC事業者側に残している点です。ショッピングエージェントは事業者のサイトやアプリの中で商品検索、複数商品のカート組み立て、比較表示、注文状況や返品ポリシーへの回答までを担い、完成したカートは既存のチェックアウトかエージェント決済プロバイダーに引き渡します。価格や商品をカタログデータに拘束し、操作的なアップセルを避けるガードレールが組み込まれています。マーチャントエージェント側は在庫監視や価格・販促の提案まで行いますが、変更の反映には人間の承認が必須です。
パートナーとしてAccenture、Mastercard、Visaが名を連ね、ShopifyやPricelineなどが実装を進めています。Anthropicは、Claude上でショッピングエージェントを運用する小売でカートが最大35%大きくなり、購入完了率が60%高まったと説明しています。ただしこれらは発表側の数値であり、第三者による検証はありません。OpenAIやGoogleがチャット内チェックアウトから小売各社の自前アプリへ軸足を移しつつある中で、事業者側にエージェントの主導権を戻す設計は、年末商戦前のEC事業者にとって現実的な選択肢になります。
詳細記事: AnthropicがClaudeのコマースエージェント設計図をApache 2.0で公開、決済を小売側に残す自社サイト内エージェントの作り方
MastercardのStart Pathがエージェンティックコマース初回コホート22社を発表

MastercardのStart Pathが、決済とAIインフラにまたがる22社を初のAgentic Commerce & Servicesコホートに選出しました。
thepaypers.comMastercardのスタートアップ支援プログラムStart Pathは、2026年1月に新設したAgentic Commerce & Servicesトラックの初回コホートとして22社を発表しました。2014年の開始以来、Start Pathは60か国以上から500社超を受け入れており、今回の22社はエージェントが取引に参加するために必要な層を一通りカバーしています。
顔ぶれを層で見ると、Firmly、Wizard、SolvaPay、Neverminedはエージェント経由の販売と決済受け入れを、ReFiBuyはAIショッピングエージェントに向けた商品カタログの最適化を、Skyfireとt54はエージェントのID検証とリスク評価を、Crossmintはステーブルコインのウォレット基盤を、Tunic PayやPayOS、Simetrikはエージェント取引の不正検知と監査を担います。The Paypersによると、参加企業はMastercardのパートナーと顧客のネットワークにアクセスでき、エージェント環境向けの製品を共同で開発する機会を得られます。
Mastercardは既にAgent PayやGoogleのUniversal Commerce Protocolへの参加、MicrosoftのCopilot Checkoutとの連携を進めています。Forkastは今回の動きを「プロトコルを自前で作るのではなく、エコシステムを育てて既定のネットワークになる戦略」と読んでいます。EC事業者にとっては、カタログをエージェント可読にする層と、エージェント経由の決済を受け入れる層が、いずれも「製品」として選べる段階に入ったことを示す発表です。
詳細記事: Mastercard Start Pathがエージェンティックコマース初回コホート22社を発表、AIエージェント向け販売・カタログ・認証の各層を読み解く
エージェンティックコマース
AI流入元はChatGPT一強から分散へ、Digital Commerce 360が首位AIソースの変化を公表

上位オンライン小売へのAI流入は増え続けており、ランキングはどのLLMが最も多くの訪問者をECサイトに送っているかを示しています。
www.digitalcommerce360.comDigital Commerce 360は9月3日、北米の年間EC売上上位1,000社を対象にした「AI Commerce Rankings」のデータから、AI流入元の変化を公表しました。2026年第1四半期にChatGPTを首位のAI流入元としていた小売は844社でしたが、第2四半期には722社に減っています。
減った分を吸収したのは他のプラットフォームです。Google Geminiを首位とする小売は16社から32社へ倍増し、Perplexityも12社増えました。ReFiBuyのCEOであるScot Wingo氏は、Claudeを首位とする小売が1社から15社に増えた点を「非常に大きな動き」と評価しています。Anthropicがショッピング可能な商品カードを実装したことが背景にあると同氏は見ています。
Adobe Analyticsの7月データでは、ECサイトへのAI関連流入は前年比62%増、AI経由の訪問者は他の訪問者より1訪問あたりの売上が53%高くなっています。単一のAIプラットフォームに最適化する段階は終わりつつあり、複数のAIからの流入を計測し、商品データを各AIが読める形に整える必要性が数字で裏付けられました。
詳細記事: AI流入元の首位が分散し始めた、ChatGPT首位の小売が844社から722社に減りClaudeは1社から15社へ
Statista Strategyが「統合のジレンマ」を提示、小売に3つの選択肢

エージェンティックコマースは、チャネル主導のECから、自律的なAIシステムが購買プロセスを組み立てるエージェント主導の購買への移行を意味します。
futureiot.techStatista Strategyが公開した「State of Agentic Commerce」は、ChatGPTやGeminiなどの汎用モデルと、Amazon、Walmart、Zalandoが展開する専用ショッピングエージェントを、カスタマージャーニー全体にわたって体系的に評価した分析です。現時点でAIエージェントが高い精度で処理できるのは認知、発見、評価といった購買前半の段階だと結論づけています。
小売とマーケットプレイスが直面する「統合のジレンマ」が分析の核心です。AIエコシステムに統合すれば購買決定に近い流入を得られる一方、顧客接点を失うリスクとコストを負います。統合を拒めば、AI主導の購買環境から完全に排除される危険があります。
Statista Strategyは、完全統合、選択的統合、意図的な非統合という3つの戦略を示し、自社の市場ポジションを起点に統合の度合いを早急に決めるべきだと提言しています。商品データ、API、消費者の信頼といった基礎資産が、純粋なマーケティングリーチより重要になるという指摘は、本日のAnthropicやMastercardの動きとも重なります。
食品ブランドはエージェンティックコマースを生き残れるか、Bramble Intelligenceの見立て

エージェンティックコマースは食品小売を作り替えつつあります。栄養、信頼、データを押さえたブランドがAI主導の買い物で最も得るものが大きくなります。
www.foodnavigator.comFoodNavigatorは、食品業界向けコンサルティングのBramble Intelligenceでマネージングパートナーを務めるChris Mitchell氏へのインタビューを掲載しました。同社のレポート「Tomorrow's Appetites」は、食品・飲料を作り替える3つの力の1つにエージェンティックコマースを挙げています。
Mitchell氏はエージェントが2種類に分かれると見ています。1つは小売が自社環境に顧客を留めるために持つ「フードコンシェルジュ」型で、世帯人数や好み、アレルギーを聞き取ります。もう1つはOpenAI、Anthropic、Googleなどのモデル提供者が持つ小売横断型で、複数の小売にまたがる買い物を集約し、価格と栄養の両面で消費者を代弁します。
ブランドの価値については二面的な見方を示しています。AIはパッケージのキャラクターには関心がなく事実だけを見るため、商品情報を機械可読にする作業が避けられません。一方で、消費者の価値観と一致し高い信頼を得たブランドは「ブランドの再来」として力を増すとし、AIと消費者の推奨が食い違う場面でこそブランドの真価が問われると述べています。
消費者動向
Euromonitorが試算、AIは2029年に7,800億ドルの小売EC売上に影響

Euromonitorのレポートによると、ロイヤルティプログラムはAI主導の発見と購買をつなぎ、ブランドが顧客を認識して報いることを可能にしています。
retailasia.comRetail Asiaが伝えたEuromonitorのレポートは、AIが2029年に世界の小売EC売上のうち7,800億ドルに影響を与えると予測しています。接続された消費者の51%がChatGPTを利用しており、商品レビューの確認、割引の探索、プログラム規約の把握、特典の比較にAIを使う行動が既に定着していると指摘します。
ロイヤルティプログラムはAI主導の発見と購買をつなぐ接点になると同レポートは位置づけています。オーストラリアのAdore Beautyは、チャットボット「Ask Aura」の導入後、2026年8月時点でアクティブなロイヤルティ会員が前年比22%増の53万8,000人に達したと報告しています。
条件も明確です。AIが仲介する取引に影響を与えるには、会員のID、対象資格、特典が機械可読で、リアルタイムに参照でき、広いコマースエコシステムに接続されている必要があります。相互運用性、API、認証、安全なアクセスが戦略的能力になるという結論は、閉じたロイヤルティ設計の見直しを迫るものです。
UAEの買い物客の72%が直近の購入でAIを利用、82%は上限付きなら無人購入を許容

UAEの買い物客は昨日までのチェックアウトに忍耐を持ちません。スマートフォンは店頭、リサーチアシスタント、ウォレットを兼ねています。
www.pymnts.comPYMNTS IntelligenceとVisa Acceptance Solutionsの「2026 Global Digital Shopping Index: UAE Playbook」は、UAEの消費者1,270人を含む2026年3月の調査に基づき、72%が直近の購入でAIを使ったと報告しています。調査全体はUAE、ブラジル、米国の消費者5,241人と加盟店1,185社を対象にしており、UAEは3か国の中でデジタルショッピングの活動量が最も多い市場です。
日常の買い物行動も変化しています。UAEの消費者は1日平均2.3件のデジタルショッピング活動を行い、2024年比で5%増えました。店頭受け取りのためのオンライン注文は15%増、店内でのモバイル利用は11%増です。一方でデジタルクーポンを望む消費者は74%いるのに対し、提供している加盟店は60%にとどまるなど、機能面の供給不足も浮き彫りになりました。
AIによる購買の委任については、82%が支出上限を設定できれば無人での購入を許容すると回答し、半数以上は上限を100ドル以下に設定すると答えています。前日のダイジェストで紹介した英国の150ポンドという信頼の閾値と同様に、消費者は委任そのものより上限と制御の仕組みを求めています。
企業動向・提携
eComIDがNilumを買収、AIネイティブの二次流通体験を「Shopping Passport」に統合

eComIDは、ストックホルムを拠点にAIネイティブな二次流通ショッピングを手がけるNilumの買収を発表しました。金額は非公開です。
retailtechinnovationhub.comサイズ、フィット、好みといった買い物客のコンテキストを複数のショッピング先で持ち運べる「Shopping Passport」を構築するeComIDが、ストックホルムのNilumを買収しました。NilumはAIを活用して中古品の買い物を大幅に簡単にすることを目指してきた企業で、買収金額は非公開です。
Nilumの創業者Jonas Fagerlund氏はeComIDのHead of Recommerceに就任します。eComIDの共同創業者でCEOのOscar Rundqvist氏は「より多くの商品ではなく、正しい商品を見つける手助けをする」と買収の狙いを説明しています。
一次流通で蓄積した顧客のコンテキストを、そのまま二次流通の商品発見に使う設計は、AIエージェントが顧客の嗜好を持ち回る時代のリコマースの形を示しています。ファッションECにとっては、新品と中古を同じ嗜好データで扱う統合の先行例です。
SoftBankがMeesho株1.7%をブロック取引で売却へ

インドのEC企業Meeshoの株式1.7%、約165億ルピー相当がブロック取引で移動しました。売り手はSoftBankとみられています。
app.dealroom.coDealroomによると、インドのソーシャルコマース企業Meeshoの株式1.7%がブロック取引で移動し、売り手はSoftBankのSVF II Meerkat DEとみられています。約8,000万株が1株206.3ルピーで売却され、前日終値から2.5%のディスカウントでした。同ビークルは2026年6月末時点で8.60%を保有していました。
売却の背景には業績の改善があります。Meeshoの2027年度第1四半期は売上が前年比48%増の371億2,800万ルピー、純損失は28億9,400万ルピーから13億2,800万ルピーに縮小しました。
Meeshoは昨年上場したインドの主要ECの一角で、投資家の持分整理が進むことは、インドEC市場が成長投資の回収局面に入りつつあることを示しています。
広告・リテールメディア
米中小企業のAI活用率が87%に、Constant Contact調査

AIは中小企業の時間節約、データ分析、マーケティング判断の精度向上を支えており、ソーシャルメディアは顧客発見の主要チャネルになりつつあります。
www.ecommercetimes.comE-Commerce Timesが伝えたConstant Contactの2026年第2四半期調査によると、米国の中小企業のAI活用率は2023年の26%から今年は87%に上昇しました。調査は米国、英国、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドの中小企業3,340社と消費者2,255人を対象にしています。
顧客の発見経路も動いています。消費者の49%がソーシャルメディアで新しい中小企業を見つけると回答し、検索エンジンの40%を上回りました。中小企業の47%はソーシャルメディアの運用をすべて自分で行っており、AIと自動化はその負担への対応策として広がっています。
Constant ContactのDave Charest氏は、中小企業がコンテンツ作成を超えてデータ分析やマーケティング判断にAIを使い始めていると述べています。専任のアナリティクスチームを持たない小規模ECでも、意思決定の質を上げられる段階に入っています。
グローバルEC動向
中国ECは即時小売へ、配達補助金戦争の後に残った60分配送の期待

中国のフードデリバリー補助金戦争は収まりつつありますが、最大の遺産は消費者の期待の変化です。家電、花、医薬品までが注文から1時間以内に届くようになりました。
www.reuters.comReutersは、Meituan、Alibaba、JD.comがクーポン、無料配送、加盟店インセンティブに数十億ドルを投じた1年を経て、即時小売がオンラインショッピングの新たな主戦場になったと報じています。中国商務部の研究では、即時小売市場は年末までに1兆2,000億元(1,780億ドル)に達し、2030年まで年平均12.6%で成長する見通しです。
分析筋は、飲料や食事の配達で稼いだアプリ訪問を、利益率の高い非食品の購入に転換することが各社の本当の狙いだったと見ています。Meituanの最高財務責任者Shaohui Chen氏は決算説明で、クイックコマースが利便性と信頼性への消費者の期待を根本から作り替えた「不可逆的なライフスタイルの変化」だと述べました。
一方で代償も大きく、市場監督当局は昨年、各社を複数回呼び出し、4月には食事配達の安全違反で36億元の制裁を科しています。Analysysのデータでは第2四半期の即時小売でAlibabaがMeituanをリードしており、各社は倉庫やスーパーマーケットの整備で収益化を急いでいます。
中国の第15次五カ年計画が越境ECを支援対象に明記

中国の第15次五カ年計画(2026〜30年)の概要は越境EC活動の発展を支援しています。商務部はさらに、ECプラットフォームを通じた貿易のデジタル市場とモデルを発展させる指針を公表しました。
dig.watchDigital Watch Observatoryによると、中国の第15次五カ年計画(2026〜2030年)の概要は、越境ECをはじめとするデジタルビジネスの様式とモデルへの支援を明記しています。商務部は他の5つの政府部門と共同で指針を発出し、越境ECの発展、中欧班列(中国・欧州間の貨物列車)とEC活動の統合、事業者による商標登録と特許申請を促しています。
背景には、越境ECを通じた輸出が中国の貿易の中で存在感を増していることがあります。国家レベルの計画で越境ECが位置づけられたことで、物流や決済のインフラ整備にも政策的な後押しが続く見通しです。
本日のフランスの超ファストファッション法をめぐる応酬や、EUの関税改革の最終承認と合わせて読むと、中国発の越境ECを後押しする政策と、受け入れ側の規制強化が同時に進んでいる構図が見えてきます。
韓国7月の小売売上6.4%増、オンラインが牽引

韓国の主要小売26社(実店舗15社、オンライン11社)の7月の売上は前年同月比6.4%増でした。
retailasia.com韓国の産業通商資源部によると、主要小売26社の7月売上は前年同月比6.4%増でした。オフラインが3.2%増にとどまる一方、オンラインは8.5%増と伸びが大きく、チャネル別の売上シェアはオンライン小売が60.8%を占めています。
オフラインでは百貨店が17.9%増と全カテゴリで伸び、プレミアムブランドや休暇関連商品、冷房家電が牽引しました。対照的に大型マートは5か月連続、SSMは8か月連続で前年割れが続いています。
オンラインではサービス・その他が17.5%増となり、配達サービスなどが成長を支えました。韓国はオンライン比率が6割を超える先行市場であり、実店舗の中でも百貨店と大型マートの明暗が分かれる構図は、他国のEC化が進んだ後の小売の姿を先取りしています。
(続報)中国がフランスの超ファストファッション法に撤回要求、対抗措置を示唆

中国は9月3日、衣料品1着あたり最大約20ユーロの課金を課す超ファストファッション新法を「明らかに差別的」だとして、フランスに撤回を求めました。
www.france24.com9月1日のダイジェストで紹介したフランスの超ファストファッション法は同日に施行され、9月3日には中国商務部が「直ちに実施を停止するよう求める」と表明しました。報道官のHuang Ling氏は、SheinやTemuなどアジアのECプラットフォームを狙った同法を「明らかに差別的」と批判し、対抗措置の可能性に言及しています。
同法は環境負荷と地域経済への影響を抑える目的で、対象商品に段階的に1着あたり最大約20ユーロの課金を課します。施行から2日で外交問題に発展した形です。
越境ECの受け入れ側の規制は本日のEU関税改革でも強化されており、中国の政策が越境ECを後押しする一方で、欧州側は課金と輸入者責任の両面から圧力を強めています。
EU理事会が関税制度改革を最終承認、非EUのECプラットフォームを輸入者に

新しいEU関税枠組みは、ECの急増などの新たな課題と傾向に対応するための、より現代的な手段を当局に与えます。
www.consilium.europa.euEU理事会は9月3日、数十年で最も包括的とされるEU関税枠組みの改革を最終承認しました。改正された関税法典は、EU域外のECプラットフォームがEUに販売する際に「商品の輸入者」とみなされることを明確にし、関税手続きと関税支払いの責任を最終消費者ではなくプラットフォームに負わせます。
義務を果たさないEC事業者への新たな制裁制度も導入されます。最も重大な違反では、前年の年間輸入額の最大6%の罰金、関税上の特典の剥奪、オンラインプラットフォームへのアクセス制限まで科される可能性があります。小包の増加に伴う監視コストを賄うため、EU全域の取扱手数料も設けられます。
8月に取り上げた3ユーロの小口貨物課金に続き、EUは越境ECの責任主体をプラットフォームに固定しました。EUに販売する事業者にとっては、DDP(関税込み配送)への移行と関税コンプライアンス体制の整備が避けられない段階に入っています。
決済・フィンテック
HashKeyのオンチェーン決済プロトコルHSPとONERWAYが提携

HashKey On-Chainの決済プロトコルHSPと、越境決済サービスプロバイダーのONERWAYが戦略的提携を発表しました。
www.prnewswire.comHashKey On-Chainの決済プロトコルHSPと、越境決済のONERWAYが9月3日に戦略的提携を発表しました。ONERWAYは英国のEMI、欧州のPI、香港のMSO、米国のMSB、シンガポールのMPIといった複数のライセンスを持ち、世界で2,000社以上の加盟店にサービスを提供しています。
HSPにとっては初めての従来型(Web2)決済機関との接続であり、ONERWAYにとっては初めて導入するオンチェーン決済プロトコルです。加盟店はデジタル通貨による決済を新たな選択肢として持ちつつ、既存の法定通貨決済とその出金の仕組みを維持できます。
越境ECの決済にステーブルコインを持ち込む動きは、決済ネットワークやフィンテック各社で相次いでいます。ライセンスを持つ決済機関がオンチェーン決済を「選択肢の1つ」として組み込む形は、規制対応と新技術の両立の現実的な落としどころを示しています。
物流・フルフィルメント
韓国TechTaka、フルフィルメント基盤ARGOでAIとロボティクスへ

TechTakaのCTOであるLee Kyung-wook氏は、同社を物流会社ではなく、データとソフトウェアで物流ネットワークを最適化するフルフィルメントテック企業だと位置づけています。
www.mk.co.kr韓国のTechTakaは、商品、注文、倉庫、輸送、サプライチェーン管理を1つに統合した物流プラットフォーム「ARGO」を展開しています。CTOのLee Kyung-wook氏は毎日経済のインタビューで、同社を配送を担う物流会社ではなく、データとソフトウェアでネットワークを最適化するフルフィルメントテック企業だと説明しました。
ARGOでは、Amazon、TikTok Shop、Qoo10といった海外マーケットプレイスとNaverなどの国内プラットフォームからの注文を、別システムを構築せずに一元管理できます。1日あたりの出荷成功率は平均99.95%以上で、日本のQoo10のメガ割セール期間に特定顧客の出荷量が通常の16倍に急増した際も、逆直購(韓国から日本への越境注文)で1件のエラーも出なかったとしています。
AIとロボティクスを組み合わせた次世代物流システムの構築を急ぐ方針で、次の段階として、季節性やマーケティングイベント、消費パターンを分析して在庫の移動と供給計画を自ら決める自律型サプライチェーン管理システムの構築を掲げています。越境ECの出荷を複数マーケットプレイス横断で扱う基盤に、AIによる需要予測を重ねる方向性です。
PPWR対応で越境EC事業者がパッケージを再設計、FlavorCloud CEOが指摘

パッケージのコンプライアンスは、文書中心の義務から、計測可能な設計とデータの規律へ進化するとFlavorCloudのCEOであるRathna Sharad氏は述べています。
www.packaginginsights.comPackaging Insightsは、越境EC物流のFlavorCloudでCEOを務めるRathna Sharad氏へのインタビューを掲載しました。8月に適用が始まったEUの包装・包装廃棄物規則(PPWR)への対応が、世界のEC事業者にとって大きな課題になっていると同氏は指摘します。
事業者はまず規制上の自社の役割を理解し、技術文書を維持する必要があります。パッケージ設計も、見た目重視のサステナビリティから、証拠に基づく最適化へ移行すると同氏は見ています。
将来のECパッケージはサプライチェーン全体で統合され、設計、調達、フルフィルメント、コンプライアンスの各プロセスを接続する必要があると述べています。EU向けに販売する事業者には、本日の関税改革とあわせて、規制対応をデータ基盤の問題として扱う体制が求められます。
まとめ
本日は、エージェンティックコマースの「供給側」が一斉に動いた日でした。Anthropicはショッピングとマーチャントの2種類のエージェントを動作するコードとして公開し、決済を事業者に残す設計を明示しました。Mastercardは、そのエージェントが決済とIDと不正対策の各層で使う部品を22社の顔ぶれで示しています。Digital Commerce 360のデータは、それらのエージェントがどのAIプラットフォームから客を連れてくるかが、ChatGPT一強から分散へ動いていることを裏付けました。
周辺では、Statista Strategyが小売に統合の度合いを決めるよう迫り、EuromonitorとPYMNTSの調査が、消費者がAIへの委任に上限と制御を求めていることを重ねて示しました。EC一般では中国の即時小売、EUの関税改革、フランスの超ファストファッション法をめぐる応酬と、越境ECの制度環境が大きく動いています。
明日以降は、Anthropicのブループリントを実際に導入する小売の事例と、Start Pathの各社がMastercardのAgent Payとどう接続されるかに注目します。年末商戦に向けて、エージェント経由の売上を計測し、決済と在庫のAPIを整える動きが各社で本格化するかが焦点です。
