AIコマース2026年9月24日

AIコマース ニュースダイジェスト(2026年9月24日)

MetaのAIエージェント「Muse」にShop PayとPayPalが決済を提供し、Amazonは遮断。GoogleはUCP機能を拡張し、対象のShopify加盟店のAIチェックアウトを既定で開放しました。カナダ、デンマーク、英国の初のエージェント決済まで、9月21日から24日を中心としたAIコマース関連ニュースをEC事業者向けにまとめました。

この記事のポイント

  1. MetaのMuseにShop PayとPayPalが参加、Amazonは遮断
  2. GoogleがUCPを拡張、Shopify加盟店のAIチェックアウトを既定で開放
  3. カナダ、デンマーク、英国で初のエージェント決済が相次ぐ

今回は、前回(9月15日)以降、主に9月21日から24日にかけての動きをまとめました。最大の話題は、MetaのAIエージェント「Muse」をめぐる対応の分かれ方です。ShopifyとPayPalが決済の受け口を用意した一方、Amazonは無断の代理購入だとしてMuseを締め出しました。GoogleもMerchant CenterのUCP機能を広げ、対象のShopify加盟店のAIチェックアウトを既定で有効にしています。決済の領域では、カナダ、デンマーク、英国でエージェントによる「初の取引」が相次ぎ、大手銀行6行は信頼の原則を公表しました。EC一般では、EUの越境小包への追加手数料案やインドの新EC規則など、ルール面の動きも並んでいます。

今日の注目ニュース

MetaのAIエージェント「Muse」にShop PayとPayPalが決済を提供、Amazonは無断の代理購入として遮断

Metaが9月8日に公開した個人向けAIエージェント「Muse」で、買い物の受け口が一気に広がりました。ShopifyのTobi Lütke CEOはXで、全Shopifyストアで、Shop Payを使ったエージェンティックチェックアウトをMuseに提供すると表明しました。PayPalも9月22日、世界のPayPal加盟店でMuseから買い物と支払いができるようにすると発表しています。Museは公開時からStripeのLinkを組み込んでおり、Linkを受け付ける100万超の事業者で決済できる状態でした。

これと正反対の対応を取ったのがAmazonです。GeekWireによると、9月20日の夜からMuseでAmazonの買い物をしようとすると「無許可のAIエージェントによるアクセスは利用規約違反」という表示が出るようになりました。Amazonは、事前の通知がなかったこと、エージェントが身元を名乗らずに閲覧すること、顧客の認証情報を取得・保存しているとみられることを問題視しています。Metaは以前、Museはパスワードや支払い手段を見ることはないと説明していました。

Amazonは、Perplexityの訴訟で8月に仮差止命令を覆されています。今回は不正アクセスではなく利用規約を根拠にしている点が特徴です。ロイターによると、Museの公開後2週間ほどのダウンロード数は280万件に達しています(Sensor Tower調べ)。利用者が急増するエージェントに、自社の決済を差し出して流通を取りにいくのか、それとも締め出して顧客接点を守るのか。プラットフォームごとの判断がはっきり分かれた一週間でした。

詳細記事: Meta「Muse」のチェックアウトにShop PayとPayPalが参加、Amazonは遮断:AIエージェント決済は「提携型」と「無断代行」に分かれた

Google、Merchant CenterのUCP機能にカート移行やチェックアウト検証を追加、対象のShopify加盟店はAIチェックアウトが既定で有効に

Googleは、Merchant Centerで提供しているUniversal Commerce Protocol(UCP)の機能を拡張しました。UCP対応のチェックアウトを使う小売事業者は、小売サイトへのカート移行や、チェックアウトの流れの検証機能を有効にできるようになり、分析機能も近く追加される予定です。米国から段階的に展開し、オーストラリアとカナダには2027年初めに広げます。Coach、Kate Spadeを傘下に持つTapestryは、一部商品をGoogle検索のAIモードやGeminiアプリから直接買えるようにしました。

あわせて、Merchant Centerには自社ブランドの露出シェアを他社と比べる「AI performance insights」が加わりました。YouTube広告にBusiness Agentを埋め込む試験も始まり、Lululemonとのテストでは、ブランドが入力した会話用の属性がAIモードの関連する推薦の50%で反映されたといいます。

加盟店側にとって見逃せないのがShopifyの扱いです。Search Engine Landによると、Googleは対象のShopify加盟店に、AIモードとGeminiで商品を直接購入できるようになったと通知しています。米国拠点で米国向けに販売し、Merchant Centerと連携済みの対象ストアは、既定で直接チェックアウトが有効になります。「販売チャネル」の「Agentic」設定から停止でき、その場合は商品の表示は残り、購入時に自社サイトへ誘導されます。一方、一部のチェックアウトブロックや商品バンドル、カスタムピクセル、Google Analyticsのクライアント側計測は直接チェックアウトでは使えません。計測の欠落を防ぐ意味でも、ホリデー商戦の前に設定を確認しておく必要があります。

詳細記事: Google Merchant CenterのUCP統合ハブにカート移行を追加、Shopify加盟店はAIモードのネイティブチェックアウトが既定で有効に:ホリデー商戦前に確認すべき設定

エージェンティックコマース

JD Sports、Algoliaをエージェンティックコマース戦略の基盤に採用、導入後に検索経由の売上が22%増

検索・商品発見のAlgoliaは9月22日、英国のスポーツファッション小売JD Sportsが、同社をエージェンティックコマース戦略の「統制されたインテリジェンス層」に採用したと発表しました。会話的で意図の強い問い合わせにも、Webサイトと同じ商品カタログとランキングのロジックで、ミリ秒単位で応答できるようにするのが狙いです。

2024年の導入以降の数字も公表されています。検索経由の売上は22%増え、検索のクリック率が7.65%、商品一覧ページ(PLP)のクリック率が73%、PLPの売上が16%、それぞれ伸びました。クリックや購入のシグナルから商品の並びを自動調整する機能だけでも、カート投入率とコンバージョン率がそれぞれ4%向上したといいます。Webサイトを支える検索基盤が、そのまま同社のAIエージェントにも使われている点が要です。

エージェントが商品を探す時代には、検索窓の速さより、取り出されるデータが構造化され、最新で、正確かどうかが問われます。サイト用とエージェント用で別々の仕組みを持たず、関連性の管理を1か所にまとめる設計は、商品データ整備を考える小売にとって具体的な参考例です。

詳細記事: JD Sports、Algoliaをエージェンティックコマースの基盤に採用:サイトと同じ商品カタログとランキングでAIエージェントに応答、検索経由売上は22%増

Amazon、セラー向けSeller Assistantに24時間動く「ワークフロー」を追加、ClaudeとAmazon Quickにもプラグインで接続

Amazonは9月23日、出品者向けAIアシスタント「Seller Assistant」の新機能を発表しました。中心は「ワークフロー」です。セラーがセラーセントラルにログインしていない間も、在庫の閾値や競合価格、アカウントの健全性を監視し続け、条件に応じて対応する自動処理を、自然言語で設定できます。

例として挙げられたのは、「上位10商品のどれかが星4を下回ったら知らせて対応案を作って」といった指示です。提案だけにとどめるか、実行まで任せるかはセラーが選び、実行する場合も事前に承認します。すべての操作は監査ログに残ります。価格の傾向やアカウント状態を見るテンプレートも用意されました。Seller Assistantは各セラーの価格設定や在庫サイクル、成長目標を記憶するようにもなっています。

もう1つの柱が外部AIへの接続です。「Amazon Selling Partner」プラグインをまずAmazon Quickで、AnthropicのClaudeにはベータ版として提供します。プラグインは現在、米国ストアのセラー向けのベータ版です。Amazonによれば、セラーの90%はすでに外部のAIツールを業務に使っています。マーケットプレイスが自ら出品者の業務をエージェント化し、外部のAIにも窓口を開く動きといえます。

詳細記事: AmazonがSeller Assistantに24時間動く「ワークフロー」を追加、Claude・Quick連携プラグインでセラー業務をAIエージェントに任せる仕組み

AIコマースツール

SPINSが「Agentic Discovery」を提供開始、CPGブランドのAI推薦での見え方を販売データと結びつけて改善

CPG(消費財)のデータ分析を手がけるSPINSは9月22日、ブランド向けの新サービス「SPINS Agentic Discovery」を発表しました。AIアシスタントや会話型検索、自律エージェントが、商品やブランドをどう解釈し、要約し、推薦しているかを可視化し、改善すべき点を示すサービスです。

機能は3つに整理されています。AIの回答を商用レベルで監査する機能、売上への影響が大きい順にコンテンツ改善を優先づける機能、そして同社の「SPINS Product Knowledge Graph」から構造化された商品情報をエージェント側へ供給する機能です。同社は、露出だけを見る一般的なGEO(生成エンジン最適化)ツールと違い、商品属性や小売のPOSデータとAI上の見え方を結びつける点を差別化要因に挙げています。

AI上の露出を測るツールは増えていますが、店頭の販売実績と突き合わせて「どの改善が売上につながるか」を示せるかが次の競争軸になりつつあります。POSデータを持つ事業者ならではの切り口です。

True FitとGlanceが提携、AIショッピングの会話にサイズとフィットの推薦を組み込む(続報)

サイズ推薦のTrue Fitは9月21日、AIパーソナルショッピングのGlanceとの提携を発表しました。Glanceの会話型の商品発見と生成AIによるバーチャル試着に、True Fitのサイズとフィットの推薦を組み込みます。Glanceはモバイル、テレビ、デスクトップの6,000万台の端末でAIショッピング体験を提供しています。

True Fitの顧客データによると、ファッションの買い物客がAIエージェントに尋ねる質問の70%超はフィットとサイズに関するものです。見た目を確かめる試着と、実際の購入・返品の結果に基づく「合うかどうか」の判断は別物だというのが両社の主張です。True Fitの基盤は、約20年分、5,000億ドル超の取引と、9万1,000超のアパレル・靴ブランドのデータに基づいています。

Glanceへの組み込みは2026年のホリデーシーズンに間に合わせ、フィット情報を統合した試着機能は2027年にTrue Fitの加盟店へ広く提供する予定です。True Fitはすでに自社のAIショッピングエージェントを発表しており、今回はそのフィット情報を外部のエージェントにも供給する形になります。

Revieveが美容向けの「BeautyCatalyst」を発表、診断や推薦のデータを事業判断にまでつなぐ

美容・ウェルネス向けのAI技術を提供するRevieveは9月23日、新たな基盤「BeautyCatalyst」を発表しました。肌診断や商品推薦、バーチャル試着など、これまで個別に提供してきた機能から生まれるデータをつなぎ、消費者、商品、市場の理解を継続的に深める仕組みです。

構成は4本柱です。成分や処方、悩み、ルーティンを構造化する「Beauty Intelligence」、AIアドバイザーなどの体験を担う「Experience & Activation」、需要の変化を捉える「Audience & Market Intelligence」、品揃えや商品開発の判断を支える「Business Decision Intelligence」で、同社は各要素が次を強める「フライホイール」と説明しています。美容の知識を、AIエージェントが解釈して使える形に構造化することも狙いの1つです。

CEOのSampo Parkkinen氏は、エージェンティックコマースでの差はAIを持っているかではなく、その背後にある知識の深さで決まると述べました。美容のように商品選びに専門知識が要る分野では、ブランド側の知識をどう構造化して外部のAIに届けるかが課題になりつつあります。

ReFiBuy、AmazonのAlexa for Shopping向け最適化を一般提供、欧州ではNexiとも提携

エージェンティックコマース最適化(ACO)のReFiBuyは9月23日、AmazonのAIショッピング機能「Alexa for Shopping(AFS)」向けサービスの一般提供を始めました。Amazonの商品ページにあるデータの欠落を洗い出し、タイトルや箇条書き、属性の改善案を示したうえで、AFSの回答に自社商品がどう現れるかを追跡します。Amazonは2026年第2四半期の決算説明で、直近12か月で3億5,000万人超がAFSを利用し、第2四半期のやり取りは前年の5倍超になったとしています。

サービスは、同社の研究担当VPのAndrew Bell氏が率いた10万プロンプト規模の調査に基づいています。AFSは用途や商品タイプ、予算といったニーズごとに推薦を組み立て、素材やフィット、機能などの細部を推薦理由の説明に使う傾向があるといいます。商品ページは「Be Available」「Be Findable」「Be Trusted」「Be Chosen」の4領域で評価されます。

同社は前日の9月22日に、イタリアの決済大手Nexiとの提携も発表しました。The Paypersによると、NexiはReFiBuyのACOを自社の加盟店ネットワークに提供し、欧州の加盟店が商品カタログをAIエージェント向けに整えるのを支援します。Nexiが11か国約2万8,000人を対象に実施した調査では、半数超が過去1か月にAIを使って商品を調べたり購入したりしていました。決済事業者が、支払いより手前の「エージェントに見つけてもらう」段階まで支援を広げている点が注目されます。

Stitch Fix、AI試着「See it on me」の利用者で90日間の購入額が大きく伸びる

米オンラインスタイリングのStitch Fixは9月23日の決算説明会で、AIによるスタイル可視化機能「Stitch Fix Vision」を使う顧客で、オンデマンドの買い物「Freestyle」での90日間の購入額が大きく伸びていると明らかにしました。事前に登録した自撮り写真をもとに、推薦されたコーディネートを着た自分の画像を「See it on me」で生成できる機能です。

Matt Baer CEOによると、2025年10月の開始以降、顧客に届けたVision画像は2,200万枚を超えました。同四半期の純売上高は前年比4.2%増え、アクティブ顧客数は1.4%減ったものの、顧客1人あたりの売上は7.8%伸びています。米国のアパレル・靴・アクセサリー市場全体は横ばいだったといいます。

同社はAIを接客だけでなく、スタイリストの商品選定の支援や、物流センターの人員計画、カスタマーサービスの定型対応にも使っています。「着た姿を見せる」機能が顧客単価の伸びと結びついている点は、アパレルECでの生成AI活用の成果指標として参考になります。

ChannelSight、ブランドサイトから好みの小売へ送客する会話型「AI Shopping Assistant」を発表

アイルランドのChannelSightは9月22日、ブランドの自社サイトに置く会話型の「AI Shopping Assistant」を発表しました。買い物客は「敏感肌にはどれがいいか」「この2モデルの違いは何か」「今日どこで買えるか」といった質問をし、ブランド自身の商品データに基づく回答を受けたうえで、自分の好きな小売店へ移動して購入できます

同社は10年以上、ブランドサイトから商品を扱う小売店への導線を作る「Where to Buy」を提供してきました。新製品は商品案内、複数小売の在庫状況、販売の計測を1つの画面にまとめたもので、既存の「Agent Ready」やMCPサーバーと並ぶ「AI & Agentic Commerce」製品群に加わります。

汎用のAIプラットフォームが広告付きの商用体験を導入し始めるなか、ブランドにとっては「顧客との関係を誰が持つのか」「推薦をどう売上として測るのか」が問題になっています。自社で直販しないメーカーが、会話の接点を自社サイトに持ちつつ販売は小売に任せる形は、1つの現実的な選択肢です。

決済・フィンテック

Mastercard・Flybits・Rogers Bankがカナダ初のエージェント取引、デンマークでもDanske Bankが初の取引を実施

Mastercard、AIプラットフォームのFlybits、Rogers Bankは9月21日、カナダで初めてとなるエージェンティックコマース取引を実施したと発表しました。Flybitsが提供するAIアシスタントが、Rogers Redクレジットカードの会員が設定した指示に従って、指定の予算内で対象商品を見つけ、Mastercard Agent Payで購入まで完了しています。

事前に検証した消費者の指示と支出上限の範囲内でエージェントが動く点が強調されました。FlybitsはAIがなぜその商品を推薦したのかを説明する層も担い、今後は、許諾に基づく知見をエージェントが扱える「Mastercard Insight Tokens」の導入を計画しています。Mastercardのカナダでの調査では、41%がAIアシスタントを使ったオンラインの買い物に前向きでした。

同じ9月21日には、デンマークのDanske Bankも、Agent Payを使った同国初のエージェント決済を完了したとMastercardが発表しました。AIエージェントがMastercardの体験予約サイトPriceless.comでコーヒーのテイスティングを予約し、購入と支払いを代行しています。国ごとの「初取引」が続くなか、発行会社がエージェント発の取引をどう識別し、管理するかが実務の焦点になっています。

GoCardless、英国初のエージェントによる口座間決済を処理、FCAの試験プログラムで寄付に活用

口座振替の決済基盤を提供するGoCardlessは、英国で初めてとなるエージェントによる口座間(A2A)決済を処理しました。同社のWebサイト上で、慈善団体Trussellへの寄付を、AIエージェントとの会話を通じて受け付けたものです。

手続きはすべてAIチャットの中で完結します。寄付者はまずTrussellの活動について説明を受け、3つの月額寄付額から1つを選びます。金額ごとに寄付の使い道も示されます。選んだ後にエージェントが銀行口座情報の入力を促し、Direct Debit(口座振替)の委任が設定されます。AIに全権を渡すのではなく、支払う人が最後まで取引を管理する設計だと同社は説明しています。

この決済フローは、英国金融行動監視機構(FCA)の「AI Live Testing」プログラムの中で開発されました。英国政府はエージェントによる決済を金融分野のAI活用の優先事例に挙げ、国家決済ビジョンでもA2A決済をカードの代替として育てる方針を示しています。定期的な支払いをエージェントに任せる場面で、口座振替系の手段が存在感を持つ可能性を示す事例です。

世界の大手銀行6行が「信頼できるエージェンティックコマース」の原則を公表、詐欺対策や責任の所在を議論

ING Group、NatWest Group、ASB Bank、Bank of America、Capital One、Commonwealth Bank of Australiaの6行は、信頼できるエージェンティックコマースの発展に向けた共同の原則をまとめた文書を公表しました。AIエージェントが商品やサービスの選択と支払いにより深く関わる将来を見据え、顧客と加盟店が支払い方法の選択権と管理を保てるようにすることを目的としています。

原則は、透明性、安全性、プライバシーとデータ、選択、相互運用性の5領域です。完成した標準ではなく、議論の土台という位置づけで、6行はほかの銀行や決済関係者にも参加を呼びかけています。次は原則を実務に落とし込むための文書を公表する予定です。Bank of AmericaのMark Monaco氏は、本人確認、認可、詐欺防止、責任の管理、顧客保護への丁寧な取り組みが欠かせないと述べました。

エージェント取引で問題が起きたとき、誰が責任を負うのかは加盟店にとっても直接の関心事です。決済の中心にいる大手銀行が足並みをそろえて論点を示したことで、今後のルールづくりの方向性が見えやすくなります。

Baselayer、AIエージェントの本人確認「Know Your Agent」基盤で3,500万ドルを調達

企業の本人確認とリスク管理の基盤を手がける米Baselayer(正式社名はOsiris Ratings)は9月22日、シリーズAで3,500万ドルを調達したと発表しました。M13が主導し、Torch Capital、Picus Ventures、Afore Capitalなどが参加しています。あわせて、エージェント経済向けの不正防止基盤「Agentic Identity Suite」を公開しました。

製品の考え方は「Know Your Agent」です。AIエージェントの行動を、それを展開したプラットフォームと、代理を認めた事業者まで暗号的にたどれるようにし、パスワードに頼らずに責任の連鎖を監査できるようにします。取引相手の事業者が本物かをエージェント自身が確かめる機能や、公的な企業データで回答を裏づけるMCPサーバーも用意しました。

同社の企業確認ツールは、米国の銀行の5行に1行を含む2,300超の金融機関で使われ、これまでに1,000万件超の申請を審査してきました。FIDO Allianceの認証作業部会やx402の本人確認作業部会にも参加しています。エージェントが「誰の代理で、何を許されているか」を確かめる層が、決済の新たなインフラとして投資を集め始めています。

Ant Group、Alipay関連の3事業を統合し新組織に、エージェンティックコマースに経営資源を集中(続報)

中国のAnt Groupは、デジタル決済事業群、Alipay事業群、芝麻信用(Zhima Credit)事業群の3つを統合し、新たな「Alipay事業群」を発足させました。South China Morning Postが報じたもので、9月21日付のシリル・ハン(韓歆毅)CEOの社内書簡で明らかになりました。新組織は、最高人事責任者を兼ねる呉敏芝(Wu Minzhi)氏が率います。

ハン氏は書簡で、エージェンティックコマースは「爆発的で大規模な成長」の段階に入りつつあると述べ、技術、プロダクト、エコシステムの力を集約して加盟店サービスを強化する方針を示しました。利用者には個人向けのAIウォレットと生活アシスタントを、加盟店にはAlipayのAIプラットフォーム上での成長機会を提供するとしています。Antは5月にAI Walletなどの決済ツール、6月にAIアシスタント「Ah Bao」を投入してきました。

一方、Forkastによると、ハン氏は普及のペースが想定より遅く、昨年の業界予測は楽観的すぎたとも認めています。需要と供給の好循環がまだできていないという認識です。2024年末に2つに分けたAlipayの組織を、信用事業も含めて1つにまとめ直したことは、中国最大級の決済基盤がエージェント対応を実装段階へ進める意思表示といえます。

消費者動向

Global Payments調査、消費者はAIが5年以内に購買の15%を担うと予想、1年前の9%から上昇

決済大手のGlobal Paymentsは9月23日、年次の「Agentic Commerce Report」の結果を公表しました。消費者が「5年以内にAIエージェントが担う」と見込む購買の割合は15%で、1年前の9%から大きく上がりました。AIショッピングエージェントを使ったことがある、または使うことを検討するという人は45%でした。

小売の買い物でも、支出の上限を決めれば任せてよいという声が多数派です。100ドルまでなら食料品・日用品の購入をAIに任せてよいという人は69%で、衣料品・靴も69%、電子機器は58%でした。一方で、50%が支払い情報の安全性を、46%がプライバシーを、42%がAIの誤った購入を心配しています。33%はすべての取引を支払い前に自分で承認したいと答えました。

発表は米国の消費者の傾向として示されていますが、調査は米国、英国、フランス、ブラジル、中国、シンガポール、オーストラリアの8,027人を対象に2026年5月に実施されたものです。任せる意向の高まりと、承認や人のサポートを求める声が同時に強いことは、チェックアウト設計で「どこで人が確認するか」を決める重要性を示しています。

グローバルEC動向

EU、域外からの小口荷物に2ユーロの処理手数料を提案、中国発のEC出荷は8月に65%減

欧州委員会は、EU域外から届く小口荷物に課す処理手数料を1個あたり2ユーロとする案を示しました。欧州議会と加盟国は税関同盟改革ですでに合意しており、残っていた手数料額を委員会が定めた形です。議会と加盟国があと1か月意見を述べられる期間を経て、11月に適用される見通しです。

この手数料は、7月から150ユーロ未満の荷物に課されている3ユーロの関税に上乗せされます。狙いは、すべての荷物を検査しきれない税関の体制を支えることです。RetailDetailによると、昨年域内に入った小口荷物は58億個にのぼりました。

効果はすでに数字に表れています。Global Sourcesによると、Trade and Transport Groupのデータで、中国からEUへの低額EC出荷は8月に前年比65%減となり、7月の54%減からさらに落ち込みました。Temu、Shein、AliExpressなどは直送から域内在庫への切り替えを迫られる可能性があり、配送日数や価格の見え方が変わっていきます。

インド、2027年1月から新EC規則を施行、割引表示に直近30日の最低価格の併記を義務化

インド政府は、2020年の消費者保護(EC)規則を改正し、2027年1月1日から施行します。価格の見せ方、スポンサー付き掲載、検索の操作、ダークパターンに関する消費者の懸念に対応するものです。

割引表示では、値引き価格とあわせて「従来価格」の表示が必須になります。従来価格は、割引を告知する前の30日間で最も安かった価格と定義されました。セール直前に価格をつり上げて大幅な値引きに見せる手法は通用しにくくなります。検索では、利用者を誤解させたり関連性を損なったりする検索結果の操作が禁じられ、商品や出品者の順位を決める主な要素とその重みを平易な言葉で説明することも求められます。

専門家は、価格そのものを統制するものではなく開示義務だと指摘しています。ランキングの仕組みを捨てる必要はないものの、表示順の根拠を説明する責任が生まれる点は、インドで販売する事業者やマーケットプレイスにとって、システム改修を伴う対応になります。

欧州のB2C EC市場は2025年に9,110億ユーロ、前年比7%増

業界団体のEcommerce EuropeとEuroCommerceは「2026 European E-commerce Report」を公表し、欧州のB2C EC売上高が2025年に9,110億ユーロになったと明らかにしました。前年の8,420億ユーロから7%増え、インフレを除いた実質でも4%の伸びです。

報告書は、経済・地政学の不確実性や規制の複雑さのなかでも市場が伸びたと評価しています。AIの活用が中小企業を含めて広がり、新たな決済手段がチェックアウトを速くしていることにも触れました。一方で両団体は、EU域内と域外の事業者の間で公平な競争条件を確保するよう、税関、製品安全、環境ルールの執行強化を求めています。

EuroCommerceのChristel Delberghe事務局長は、成長が投資につながるには単一市場が実際に機能する必要があると述べました。前項の小口荷物への課金強化とあわせ、欧州では域外の低価格ECとの競争条件をそろえる動きが続いています。

Coupang、ファッションで「試してから買う」サービスを試験導入、最大6点を無料で受け取り7日後に決済

韓国のCoupangは、有料会員「WOWメンバーシップ」の一部を対象に、ファッション商品の「試してから買う」サービスの試験運用を始めました。韓国経済新聞によると、一度に最大6点を0ウォンで注文し、7日以内に返品しなければ代金が自動で決済される仕組みです。

対象はベビー服から男女の衣料までほとんどのファッションカテゴリーに及び、Nike、FILA、Tommy Hilfigerなどの商品も含まれます。出品者の商品をCoupangの物流網で配送する「ロケットグロース」の商品は対象外です。これまでの無料返品は支払い後に返品費用を免除する方式でしたが、今回は支払い自体を先送りする点で一歩踏み込んでいます。

同様の仕組みは、Amazonが2017年にプライム会員向けに始め、返品コストの負担から2025年1月に終了しています。NaverやKurlyが無料配送を強化し、価格と配送の速さだけでは差がつきにくくなったことが背景にあるとみられます。サイズの不安が大きいファッションで、返品コストと購買率のどちらが勝るかが試されます。

物流・フルフィルメント

Costco、Uber EatsとDoorDashで米国全土の配送に対応

会員制倉庫型店のCostcoは、UberとDoorDashを通じた配送を米国全土に広げました。9月16日にUberとの提携拡大を発表し、Uber Eatsでは600近いCostco店舗が利用できるようになりました。翌17日にはDoorDashの米国マーケットプレイスへの参加を発表し、47州とワシントンD.C.の約630店舗が対象になっています。

Uberは今回、Uber One会員向けの割引や、60ドルを超える対象の食料品・小売の注文でのUber手数料の免除に加え、Uber Eats上でCostcoの会員権を直接購入できる期間限定の特典も用意しました。DoorDashとは以前から海外で提携しており、今回はその関係を米国全土に広げた形です。米国のCostcoのECでは2017年からInstacartが中心的な役割を担ってきました。

Ron Vachris CEOは5月の決算説明で、米国の当日配送事業はデジタル事業全体を上回るペースで伸びており、最も支出の多い会員がよく使っていると述べていました。配送プラットフォームを1社に絞らず並行して使う形は、大手小売のラストマイル戦略として定着しつつあります。

Kuehne+Nagel、Amazonと長期の戦略的協業、AWSのインフラ関連物流も対象に

スイスの物流大手Kuehne+Nagelは、Amazonとの長期的な戦略的協業を結んだと発表しました。既存の取引関係を土台に、規模の拡大、イノベーション、Amazonとその関連会社向けのサービス開発に取り組みます。

協業にはAmazon Web Services(AWS)のインフラのライフサイクルも含まれます。インフラの建設、機器の設置、保守、更新、拡張といった工程を支える内容です。契約にはKuehne+Nagelの既存株式を対象とするコールオプションが付いており、現金か、Amazonの選択により株式で決済されます。権利の確定は、最長7年間の商業上のマイルストーンと提供サービスの実績に連動します。

Stefan Paul CEOは、同社の世界的なネットワークとデジタル能力がAmazonの事業の変化を支えられると述べました。ECとクラウドの両方で物流需要を抱えるAmazonが、フォワーダー大手との関係を株式オプションで長期に固定する点は、グローバルな物流の供給力を確保する動きとして注目されます。

広告・リテールメディア

Pinterest、検索結果に商品を出す「Visual Search Ads」など新しい広告ツール群を発表

Pinterestは広告主向けイベント「Pinterest Presents」で、新たな広告ツールと機能を発表しました。目玉の「Visual Search Ads」は、検索結果やピンの拡大表示の中で、ブランドが自社商品を目立つ形で広告できるものです。世界の各市場でベータ版として順次提供され、利用者は結果をクリックして販売者のサイトで購入できます。新たなクリエイティブを作らずに、手持ちの素材で下層ファネルの成果を狙えるといいます。

AIを使った広告自動化の「Performance+」にも、手動のA/Bテストや、季節の新商品など特定の商品を優先する機能が加わります。月間利用者は6億4,000万人で、半数超がZ世代です。月800億回を超える検索の半分以上は商品の購入や特定の商品探しに関するもので、96%はブランド名を含まない検索だとしています。

利用者向けには、部屋の写真を撮ると別の雰囲気に変えた姿を示し、関連商品を買える「Restyle」を米国とカナダでベータ提供する予定です。まだ何を買うか決めていない段階の検索意図を広告で押さえる戦略で、購入先への送客を強める方向がはっきりしてきました。

Best Buy、10月下旬にTikTok Shopへ出店、約1万点を扱いクリエイターやBest Buy Adsとも連動

米家電量販のBest Buyは9月22日、10月下旬からTikTok Shopに出店すると発表しました。Oura、Bose、Dyson、Microsoftなどのブランドを含む約1万点を扱い、ヘッドホンやカメラ、小型家電、ノートPCなど、SNSでの発見に向く商品をそろえます。

買い物客は、クリエイターの購入可能な動画、Best Buyのショップページ、TikTok Shopのタブ、アプリ内の商品ページから商品に触れ、TikTokの中で購入できます。注文はBest Buyが出荷し、対象商品は店舗での返品や郵送での返品にも対応します。Best Buy Adsの広告主は、クリエイターのコンテンツやアフィリエイトリンクを使ったキャンペーンを、Best Buyのファーストパーティデータと計測に結びつけられます

同社のEC担当VPのJonathan Greer氏は、SNSは何を買うかに影響するだけでなく、商品の見つけ方そのものを形づくっていると述べました。Chain Store Ageによると、Sephoraも9月19日に米国のTikTok Shopで試験的な店舗を始めています。大手小売がソーシャルコマースを、自社のリテールメディアと組み合わせる販路として位置づけ始めています。

まとめ

今回の期間は、AIエージェントによる購買を「受け入れる側」の判断がはっきり分かれました。ShopifyとPayPalはMuseに決済の受け口を開き、GoogleもShopify加盟店のAIチェックアウトを既定で有効にしました。一方でAmazonは、身元を名乗らない代理購入を利用規約違反として締め出し、自社のSeller Assistantでは出品者の業務を自らエージェント化しています。自社の決済や商品データをどのエージェントに、どんな条件で開くのかが、EC事業者にとっても現実の設定項目になりました。

決済の側では、カナダ、デンマーク、英国で「初のエージェント取引」が続き、大手銀行6行の原則、Baselayerの資金調達と、信頼と責任の所在を支える層が厚くなっています。Global Paymentsの調査でも、任せる意向の高まりと、承認や人の支援を求める声が同時に表れました。

EC一般では、EUの2ユーロの処理手数料案が11月の適用に向けて最終調整に入り、インドは2027年1月の新規則施行に向けた準備期間に入ります。今後は、Shopify加盟店のAIチェックアウトの利用実態と、Amazonと他社エージェントの対立が法的な争いに発展するかどうかに注目です。