小売・事例2026年8月1日

日本のEC42社のAIエージェント対応調査 — 対応済みは6社、すべて自力ではなかった

国内の主要EC・小売42社について、AIエージェント経由の購買に対応できているかを実測しました。対応が成立していたのは楽天・Yahoo!ショッピング・ZOZO・メルカリ・Amazon・成城石井の6社で、いずれもプラットフォームの力による到達です。残る36社はどの経路にも乗れておらず、過半は外部のAIに商品を読ませる入口で止まっていました。最大の理由は遮断ではなくJavaScript依存です。

この記事のポイント

  1. 国内の主要EC・小売42社について、AIエージェント経由の購買に対応できているかを実測しました。何らかの経路で対応が成立していたのは6社で、そのすべてがプラットフォームの力による到達でした。自力で対応した企業はゼロです
  2. 残る36社は、どの経路にも乗れていません。しかも過半の20社は、外部のAIエージェントに商品を読ませる入口にすら達していませんでした。最大の理由は遮断ではなく、JavaScriptが動かないと価格が出ないことです
  3. 唯一外部プロトコルに対応していた成城石井も、用意したのは同社ではなくShopifyでした。日本語で運営される17店を追加で調べると、Shopifyの6店は全店対応済み、それ以外の11店はゼロ。いま対応を決めているのは、事業者の投資判断ではなくEC基盤の選択です

42社を調べて分かった、対応の実像

AIエージェントが買い物を代行する時代に、日本のEC事業者はどこまで対応できているのか。この問いに答えられる横断データが、これまでありませんでした。海外事例の翻訳か、楽天やYahoo!ショッピングの発表を紹介した記事しか見当たりません。

そこで当社は2026年8月1日、国内の主要EC・小売42社を実際に調べました。モール6社、家電量販8社、アパレル8社、食品・スーパー7社、化粧品7社、専門小売6社です。

前提として、エージェント購買への対応には3つの経路があります。AIの中で完結させる経路1、外部のAIに発見されて自社サイトで売る経路2、外部を閉じて自社AIで完結させる経路3です。対応とは、このいずれかで取引が成立していることを指します。42社を仕分けると、次のようになりました。

区分経路社数企業
対応済み(モール内エージェント)経路1 AI内完結2社楽天市場、Yahoo!ショッピング
対応済み(ChatGPTアプリ)経路1 AI内完結2社ZOZO、メルカリ
対応済み(閉じて自社AIで完結)経路3 閉じたエコシステム1社Amazon.co.jp
対応済み(外部プロトコル)経路2 AIで発見し自社サイトで購入1社成城石井(Shopifyが自動で有効化)
どの経路でも未対応36社残りすべて。外部開放度の分布は本文で

対応が成立していたのは6社。そのすべてが、プラットフォームの力による到達でした。自力で対応を作った企業は、42社の中に1社もありません。

対応済み6社は、どうやって到達したのか

6社の中身を見ると、「プラットフォームの力」の意味がはっきりします。

楽天とYahoo!ショッピングは、自社モールの中でエージェント購買を成立させました。楽天は2025年12月の全面展開後に平均注文額が約26%向上し、Yahoo!ショッピングはAIエージェント経由の取扱高が全体の15%を超えています。外部の規格を待たず、自社の決済と物流で完結させる経路1です。

ZOZOとメルカリは、ChatGPTの中に公式アプリを出しました。ZOZOは2026年3月9日、メルカリは同年6月23日です。自社サイトを機械可読にしたのではなく、消費者がすでにいる場所へ商品を持っていく形で、これも経路1に当たります。SephoraやWalmartがChatGPT上でやっていることと同じパターンです。

Amazon.co.jpは逆に、外部を閉じました。robots.txtで14種類のAIクローラーのうち12を名指しで拒否し、購買体験はAlexa for Shoppingという自社AIで完結させています。外部から読めないのは実装の遅れではなく、経路3という戦略の実行です。

そして成城石井だけが、外部プロトコル(経路2)に対応していました。ただし後で見るように、これは同社の判断で作られたものではありません。

6社に共通するのは、自社サイトを自力で外部のAIに開いた企業がいないことです。モールの面か、ChatGPTという面か、自社AIか、基盤の自動対応か。いずれもプラットフォームが用意した道の上にあります。国内プレイヤーの戦略の違いは日本のAIコマース勢力図で詳しく扱っています。

残る36社を測る — 外部のAIから見た5段階

ここからは、どの経路にも乗れていない36社を見ていきます。使う物差しは「外部のAIエージェントから見て、自社サイトがどこまで開いているか」の5段階です。

段階AIエージェントから見た状態判定に使った条件
段階0:読まれない商品も価格も取得できないAI検索クローラーを全面遮断、またはボット判定で遮断、または生HTMLに価格が出ない
段階1:読まれる商品名と価格をテキストとして読める商品ページの価格が生HTMLにあり、AIクローラーが許可されている
段階2:構造で読まれる商品・価格・在庫を構造として理解できる段階1に加えて Product / Offer の構造化データがある
段階3:機械可読な接続があるまとまったデータを継続的に取得できる段階2に加えて フィード / MCP / llms.txt のいずれかがある
段階4:取引できるカートに入れて決済まで実行できる段階3に加えて UCP または ACP のプロファイルがある
DEFINITION
到達段階

外部のAIエージェントが商品を発見し、理解し、取引を実行するまでの過程を5段階に分けたもの。測っているのは経路2(AIで発見し自社サイトで購入)への準備度であり、段階が低いことは事業として劣っていることを意味しません。ただし本章の36社は経路1にも経路3にも乗っていないため、この物差しがそのまま「AIエージェントとの接点の有無」を意味します。

測定したのは6項目です。robots.txtでのAIクローラーの扱い、/.well-known/ucp などプロトコルのプロファイル、商品ページの構造化データ。加えて、JavaScriptなしで価格が読めるか、MCPエンドポイントがあるか、商品URLを含むサイトマップを出しているか。判定に使った生データと、自動判定を人が修正した箇所はすべて記録に残しています。

36社の分布 — 過半が入口で止まっている

結果は次のとおりです。

到達段階社数36社に占める割合該当する企業の例
段階0:読まれない20社55.6%エディオン、ニトリネット、イオンネットスーパー、ビックカメラ
段階1:読まれる9社25.0%ユニクロ、GU、Qoo10、ヤマダデンキ、オルビス、ハンズ
段階2:構造で読まれる7社19.4%ヨドバシカメラ、無印良品、ロフト、アスクル、DHC
段階3:機械可読な接続がある0社0%該当なし
段階4:取引できる0社0%該当なし(成城石井は対応済み6社側に集計)

20社、55.6%が段階0です。外部のAIエージェントは、これらのサイトの商品も価格も取得できません。エージェント購買に乗る乗らない以前に、AI検索の回答で商品を挙げてもらう入口にも立てていない状態です。

もう1つ目を引くのが、段階2と段階4のあいだの空白です。構造化データまで整えた企業は7社あります。ヨドバシカメラ、無印良品ネットストア、ロフトネットストア、アスクル、@cosme SHOPPING、DHC、楽天西友ネットスーパー。決して少なくありません。ところが、そこからフィードやMCPエンドポイントへ進んだ企業は1社もないのです。

これは偶然ではないと考えています。構造化データは既存のSEO施策の延長線上にあり、担当者が判断できる範囲の仕事です。しかしフィード配信やMCPサーバーの公開は、「AIエージェントに対応する」という別の意思決定を必要とします。予算も体制も違います。その線を自力で越えた企業が、いまの日本にはまだありません。

読まれない理由は、遮断ではなかった

段階0で止まる原因を、外から読めない23社(対応済み側のAmazon、ZOZO、メルカリを含む)の内訳で見ます。ここで想定と違ったのが、止まっている理由でした。

段階0にとどまる理由社数何が起きているか
JavaScriptがないと商品も価格も出ない13社SPAとして作った副作用。遮断していないのに読まれない
ボット判定(WAF)で遮断される7社転売・スクレイピング対策がAIエージェントも弾いている
robots.txtでAI検索クローラーを全面遮断3社Amazon.co.jpは戦略的な選択。他2社は判断の経緯が不明

最も多かったのはJavaScript依存で、13社にのぼりました。robots.txtで明示的にAIクローラーを遮断していたのは3社だけです。

具体例を挙げます。エディオンの検索結果ページは、HTTPステータス200で20.8KBのHTMLを返します。ところがその中に、商品へのリンクは1本もありません。価格の文字列も1つもありません。中身はすべてJavaScript実行後に描画されます。ニトリネットの検索結果も同様で、生のHTMLは15.5KBの枠だけでした。

多くのAIクローラーはJavaScriptを実行しません。遮断していないのに、事実上読まれない状態がここで生まれています。SPA(シングルページアプリケーション)として作った副作用であり、ほとんどの場合そもそも意識されていません。閉じたつもりがないのに閉じているというのが、日本のECの現在地でした。

2番目に多かったのがボット判定による遮断で、7社です。ビックカメラとユナイテッドアローズは、通信の確立まではできるのにサーバー側が接続を切ります。ZOZOTOWNはブラウザと同じヘッダーを送っても403を返しました。転売対策やスクレイピング対策として導入されたものが、AIエージェントのアクセスも同じように弾いています。ただしZOZOはChatGPTアプリで対応済みの企業でもあります。自社サイトが読めないことと、エージェント対応の有無は、必ずしも一致しないことを示す例です。

robots.txtで明示的に遮断していた3社のうち1社が、前章で見たAmazon.co.jpです。これは戦略の実行なので、残る2社(判断の経緯は外形からは不明)とも性格が違います。

唯一の経路2到達は、Shopifyが作った

対応済み6社の中で唯一、外部プロトコルに対応していた成城石井の話をします。

同社のサイトで /.well-known/ucp を開くと、UCP(Universal Commerce Protocol)のプロファイルが返ってきます。カート、チェックアウト、配送、在庫検索といった機能が定義され、Google Payでの支払いにも対応しています。AIエージェントが接続するためのMCPエンドポイントも記載されています。

間違いなく取引可能な状態です。 ただし、そのMCPエンドポイントのアドレスは seijoishii.myshopify.com でした。つまりこのプロファイルを生成したのは成城石井ではなく、Shopifyです

確かめるため、日本語で運営されている店舗17件を別のサンプルとして調べました。

EC基盤調査した店舗数UCPプロファイルありなし
Shopify6店6店0店
Shopify以外11店0店11店

Shopifyで運営している6店は、すべて同じ版のプロファイルを持っていました。成城石井、Yogibo、ARC'TERYX Japan、土屋鞄製造所、COHINA、KURAND。業種も規模もばらばらですが、対応状況は完全に一致しています。一方でShopify以外の11店は、1店も持っていませんでした。

背景にあるのは、Shopifyが2026年3月24日にAgentic Storefrontsを対象マーチャント全体で有効化したことです。しかもオプトアウト方式でした。事業者が申し込んだのではなく、止めなければ有効になる形です。つまりこの6店は、エージェント対応を検討して導入したのではありません。気づかないうちに、対応済みになっていたわけです。

ここから言えることは、日本のEC事業者にとってやや居心地の悪い事実です。いまエージェント対応を決めているのは、自社の投資判断ではなくEC基盤の選択です。Shopifyを使っていれば、何もしなくても対応済みになります。使っていなければ、自分で全部作ることになります。この差が、担当者の努力とは無関係に生まれています。

出典: 当社調査(2026年8月1日実施、国内EC42社および日本語店舗17件)

家電量販が、いちばん手前にいる

42社全体を業種別に見ると、はっきりした差が出ました。

業種社数段階0段階1段階2段階4
モール・プラットフォーム6社3社1社2社
家電量販8社6社1社1社
アパレル8社3社5社
食品・スーパー7社5社1社1社
化粧品7社4社1社2社
専門小売6社2社1社3社

家電量販は8社中6社が段階0で、段階2に届いたのはヨドバシカメラだけでした。型番と価格という、本来もっとも構造化しやすい商材を扱っているにもかかわらずです。

この結果は、当社が2026年7月に実施した別の調査とも一致します。主要家電量販9ブランドのAI可読性を調べたところ、Product/Offerの構造化データを実装できていたのは1ブランドのみという結果でした。発見面で手前だった業種は、取引面でも手前だったわけです。

一方でアパレルは、8社中5社が段階1に届いています。専門小売も6社中3社が段階2に達しました。業種の差は、扱う商材の性質より、サイトをどう作ったかで決まっているように見えます。なおモール・プラットフォームの枠には、別経路で対応済みの企業(Amazon、メルカリなど)が含まれる点は割り引いて読んでください。

意思表示をした事業者は、ほとんどいない

対応の手前にある「方針を決める」という段階でも、空白が見えました。

/llms.txt というファイルがあります。AIエージェントに対して、このサイトをどう扱ってほしいかを書いておく場所です。42社のうち、これを公開していたのは2社でした。うち成城石井のものはShopifyが自動生成したものです。自ら書いていたのは、Qoo10(eBay Japan)の1社だけでした。内容は「LLM Access & Citation Policy」と題され、AIアシスタントが公開ページを参照・引用することを認めたうえで、帰属表示と情報の鮮度確認を求めるものです。

robots.txtでAIクローラーを名指しで指定していたのも9社にとどまりました。残る33社は * の指定に任せています。つまり許可も拒否も、意思表示をしていないことになります。開くのか、閉じるのか、モールに任せるのか。どの判断をした形跡も、外形からは見当たりませんでした。

この調査で測れていないこと

公開情報の外形を観察したものであり、各社への取材はしていません。商品ページは1社あたり最大3ページのサンプルで、サイト全体の実装を保証するものでもありません。JavaScript実行後の画面も見ていないため、「生のHTMLに価格がない」ことは、JavaScriptを実行するクローラーなら取得できる可能性を否定しません。

「対応済み」の判定は、公表された実績に基づいています。楽天・Yahoo!ショッピングのモール内エージェント、ZOZOとメルカリのChatGPTアプリ、AmazonのAlexa for Shoppingは、いずれも公式発表があるものです。裏を返せば、公表されていない自社アプリ内のAI購買までは、外形調査では検出できません。ACPへの対応も、標準の公開パスが確定していないため検出できていません。調査日時点のスナップショットである点も併せてご了承ください。

自社の位置を、いま確かめる方法

この調査は外形から観察したものです。自社について正確に知るには、次の3つを順に確認してください。所要時間はいずれも数分です。

EC基盤を確認する

ブラウザで https://自社ドメイン/.well-known/ucp を開きます。JSONが返ってくれば、すでに外部プロトコルに対応しています。Shopifyを使っているなら、対応した覚えがなくても返ってくる可能性が高い

JavaScriptを切って商品ページを開く

ブラウザの設定でJavaScriptを無効にし、商品ページを表示します。価格と在庫が見えなければ段階0です。読めない23社の最多原因がここでした

ボット対策の設定を見直す

転売対策として入れたWAFが、AIエージェントのアクセスも弾いていないか確認します。robots.txtで許可していても、WAFが手前で切っていれば結果は同じです

構造化データやフィードの整備は、この3つの後で構いません。段階0の事業者にとって、いま効くのは構造化データの追加ではなく、読める状態に戻すことです。順序を間違えると、読まれないページに構造化データを足すことになります。

よくある質問

外部AIを遮断しているAmazonが、なぜ「対応済み」なのですか

同社は外部のAIを閉じる代わりに、Alexa for Shoppingという自社AIで購買体験を完結させています。閉じたエコシステム(経路3)はエージェント対応の形の1つであり、実装の遅れとは区別しています。遮断は戦略の実行です。

段階0だと、AIの検索結果に出なくなりますか

商品ページが読まれない状態なので、商品を指定した質問で候補に挙がりにくくなります。ただしブランド名の知名度や外部メディアでの言及があれば、企業として言及されることはあります。読まれないことと、存在しないことは別です。

Shopifyに乗り換えれば解決しますか

UCPプロファイルの公開という一点だけを見れば、そのとおりです。ただし基盤の移行は決済も在庫も物流も巻き込む判断なので、この一点だけを理由に決めるものではありません。既存基盤のまま、読める状態と構造化データを固めるほうが、投資対効果は高いことが多いはずです。

AIクローラーは遮断すべきですか

目的次第です。Amazonのように自社プラットフォームへ囲い込む戦略を取るなら、遮断は合理的です。AI経由の流入を取りたいなら、遮断は自社を候補から外すことになります。いま問題なのは、33社が*任せで、どちらの判断もしていないことです。

調査対象の42社はどう選びましたか

売上規模と知名度を基準に、モール・家電量販・アパレル・食品/スーパー・化粧品・専門小売の6業種から選定しました。業種ごとの差を見るため、各業種6社から8社を配置しています。無作為抽出ではないので、日本のEC全体の平均を示すものではありません。

この結果はいつまで有効ですか

2026年8月1日時点のスナップショットです。Shopifyのようにプラットフォーム側が一括で有効化する動きがあるため、分布は短期間で変わりえます。とくに対応済みの社数は、基盤事業者の判断ひとつで大きく動きます。

まとめ

日本のEC42社を調べて分かったのは、次の3つです。

第一に、エージェント購買への対応が成立しているのは6社で、すべてプラットフォームの力による到達でした。モールの面、ChatGPTアプリ、自社AI、基盤の自動有効化。形は違っても、自力で道を作った企業はありません。

第二に、残る36社はどの経路にも乗れていません。過半の20社は外部のAIに商品を読ませる入口で止まっており、その最多原因は意図的な遮断ではなくJavaScript依存でした。閉じるつもりがないのに閉じている状態が、業種を問わず広がっています。

第三に、これは裏を返せば空白の大きい局面だということです。構造化データまで到達した企業が7社ある一方、そこから先へ自力で進んだ企業はゼロでした。この一段を越えるだけで、国内では突出した位置に立てます。エージェンティックコマース全体の構造はエージェンティックコマースとはにまとめています。

まずは自社の /.well-known/ucp を開き、JavaScriptを切って商品ページを見ることから始めてください。それだけで、自社がどの位置にいるかが分かります。

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