小売・事例2026年9月11日

AmazonがOpenAIと提携、Amazon DSP経由でChatGPT広告の試験提供を開始。出稿ブランドの商品発見はどう変わるか

Amazon DSPからChatGPT広告を買える試験提供が米国で始まりました。Amazonが出稿窓口になる意味、Criteo経由との違い、未開示の計測条件、推薦と広告の2本立てになる商品発見への備えをEC事業者向けに解説します。

この記事のポイント

  1. Amazon Adsが9月10日、OpenAIとの提携を発表し、Amazon DSPからChatGPT広告を買える試験提供を米国の一部広告主向けに始めました。運用はAmazon、配信の判断はOpenAIが担い、広告は回答の下に表示されます
  2. 外部AIエージェントのアクセスを制限してきたAmazonが、ChatGPTを「見つけてもらう面」として使い、購入は自社に戻す線引きを広告主にも開いた形です
  3. ChatGPT上の商品発見は、回答内の推薦と回答下の広告の2本立てになりつつあります。広告は回答に影響しないため、商品データの整備と広告の計測設計は別々に進める必要があります

Amazon DSPから、ChatGPTの広告枠が買えるようになった

2026年9月10日、Amazon Adsは公式ブログでOpenAIとの提携を発表しました。Amazon DSP(複数媒体の広告枠をまとめて買う需要側プラットフォーム)を通じて、広告主がキャンペーンをChatGPTの会話型広告へ広げられるようにするもので、現時点では米国の一部広告主による試験提供です。

仕組みの肝は役割分担です。Amazonの広報担当者がCNBCに説明したところでは、キャンペーンの設定と管理はAmazonが行い、配信の判断はすべてOpenAIの広告システムが握ります。広告はChatGPTの回答の下に、テキストまたは画像で表示されます。

Marketing Diveによれば、提供形態はAmazonのチームが設定と最適化を支援するマネージドサービスで、課金はCPCとCPMの両方に対応します。商品カタログから素材を自動生成する商品フィード広告も用意され、広告主にはインプレッション、クリック、成果単価などの集計データが返されます。

逆に、最低出稿額、一般提供の時期、米国外への展開、ChatGPT広告の接触がAmazon上の購入にどれだけつながったかを追う計測の可否は、いずれも未開示です。広告の遷移先がAmazonの商品ページに限られるのかも示されていません。

Amazonが出稿の窓口になることの意味

締め出してきた相手を、集客面としては使う

Amazonは外部のAIエージェントに守りの姿勢を取ってきました。CNBCによれば2025年12月時点で主要AI企業を含む47のボットをブロックし、Perplexityのエージェントとは裁判で争っています

広告は別でした。Business Insiderは6月、Amazon自身がChatGPTに広告を出し始めたと報じています。コーヒーメーカーを探す会話の下にAmazonの広告が出て、クリックの先はAmazonのストアでした。CNBCが引くSensor Towerのデータでは、Amazonは4月から8月にChatGPTで最大の小売広告主でした。

今回の提携は、Amazonが自ら試してきた「ChatGPTで見つけてもらい、購入はAmazonで」という使い方を、広告主向けの商品にしたものと読めます。eMarketerも、Amazonは買い物客データと購買体験の主導権を手放すコマース提携を避けたまま、AI上の露出を得られると分析しています。同社とPublicisの調査では、AIを使って買い物をした人のうちAIの画面内で購入するのは10人に1人で、69%は小売事業者のアプリやサイトで購入していました。

購買データと会話文脈は、どこまで組み合わさるのか

eMarketerはAdweekの報道を引き、Amazonのファーストパーティデータを使ってChatGPT利用者をターゲティングできるとしています。ただしAmazonの公式発表自体は、ChatGPT上でのデータの使い方を説明していません。

OpenAI側には制約があります。同社のヘルプ記事によれば、広告主が会話や履歴、メモリーを受け取ることはなく、共有されるのは集計データだけです。Amazonのデータを広告設計に使えても、会話がAmazonに流れる設計ではありません。両者を具体的にどう突き合わせるのかは未開示で、試験提供で最も確かめるべき点です。

OpenAIにとっては、巨大な広告主基盤への接続

OpenAIは8月31日、ChatGPT広告が年換算10億ドルに達し、技術・計測パートナーが50社を超えたと発表しました(経緯はこちらの記事)。そこに、2025年に約700億ドル規模の広告事業を持つAmazonの広告主基盤がつながります。

Criteo経由との違いは、持ち込めるデータと運用体制

2026年3月にはCriteoが最初のアドテクパートナーとなり、6月からは日本の広告主もCriteo経由で出稿できます。

項目OpenAI Ads Manager(直接出稿)Criteo経由Amazon DSP経由
開始時期2026年5月(セルフサービス)2026年3月(最初のアドテクパートナー)2026年9月10日発表(試験提供)
提供形態広告主が自ら管理画面で運用Criteoの運用支援。セルフサービスのCriteo GOにも対応Amazonのチームが設定と最適化を支援するマネージドサービス
対象市場8月31日からインド、欧州、中東、北アフリカでも利用可能日本、英国、韓国を含む51市場米国の一部広告主のみ
持ち込めるものPixel、コンバージョンAPI、商品フィード、カスタムオーディエンス正規化した商品カタログとクロスチャネル計測Amazonの運用体制とファーストパーティデータ(ChatGPT上での活用方法の詳細は未開示)
配信の判断OpenAIOpenAIOpenAI

どの経路で買っても、配信の判断はOpenAIが持ちます。違いは持ち込めるデータと運用体制です。Amazon DSPの強みは、Amazonで予算を動かしている広告主が同じ体制のままChatGPTを加えられることにあります。Criteo側の運用実績はこちらの記事で扱いました。

Alexa for Shopping(旧Rufus)と並ぶ、もう一つの会話面

Amazonは自社内にも会話型の商品発見面を持っています。2026年5月にRufusはAlexa for Shoppingへ統合され、検索バーがAIの入口になりました。会話内のスポンサー枠もすでに動いています

Amazon Adsを使うブランドから見ると、会話型の広告面は2つになりました。Amazonの中で商品を探す人に届くAlexa for Shoppingと、Amazonの外で比較検討する人に届くChatGPTです。前者は購入までAmazon内で完結し、後者はクリックで送客するところまでです。

留保として見ておきたい、計測と信頼の問題

まずは計測です。MediaPostの取材では、ある代理店がOpenAIの管理画面で57クリックと出たキャンペーンで、Google Analyticsの訪問は20未満だったと述べ、別の代理店はクリック率が約0.6%にとどまったと語っています。Amazon経由で返るデータも集計値で、この課題が解消されたわけではありません。

Amazon側にも信頼の問題があります。FTCと22州の司法長官は、Amazonが検索広告のオークションに隠れた上乗せ料金を設けていたとして提訴しています。Amazonは損害はないと反論していますが、Digidayはこの訴訟が注目される時期にChatGPTへの拡大が重なった点を指摘しました。同じ記事でeMarketerのNate Elliott氏は、OpenAIがチームや技術、フォーマット、価格といった広告販売の基礎をまだ構築中だと述べています。広告が出るのは無料プランとGoプランの利用者だけで、PlusやProの利用者には届きません。

ChatGPT上の商品発見は、推薦と広告の2本立てになる

ChatGPTで自社商品が見つかる経路は、回答の中で推薦される経路と、回答の下の広告に分かれました。前者はLLMO(AIの回答に自社情報が取り上げられるようにする取り組み)の領域です。そしてOpenAIは、広告は別システムで動き、回答には影響しないと明言しています。予算で推薦は買えません。

2本は代替関係にありません。回答で推薦されても直下に競合の広告が並ぶことは構造上ありえますし、回答の比較対象に入っていなければ、広告を見る前に候補は絞られています。優先順位の考え方はこちらの記事で整理しました。

Amazonで出稿しているブランドにとっては、カタログの品質が広告にも直結します。商品フィード広告はカタログから素材を作るため、属性の欠落や曖昧な商品名はそのまま広告に出ます。これはECサイトのLLMO対策と同じ作業です。計測については、プラットフォームの集計値だけで売上への効果を判断するのは難しいため、試験に参加するなら指名検索の増減や購入者アンケートといった自社側の補助指標を先に決めておくほうが確実です。

なお今回の試験提供は米国限定で、日本でChatGPT広告を試す現実的な経路は現時点ではCriteo経由です。

まとめ

Amazonは外部のAIエージェントにカタログを明け渡さないまま、ChatGPTを見つけてもらう場所として広告主に開きました。発見はChatGPT、購入はAmazonという分業を、広告商品として売り始めたということです。

次に見るべきは、Amazonの購買データとChatGPTの会話文脈がどこまで組み合わさるか(Amazon上の購入まで追える計測を含む)と、試験提供が米国外に広がるかの2点です。