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AIコマース2026年10月29日

AIコマース ニュースダイジェスト(2026年10月29日)

10月26日から28日までのAIコマースニュース。McKinseyの約2万1,000人調査で米国のAI利用者のAI購入率が1年で10%から17%に増え、Chargebacks911はAIエージェントによる購入のチャージバックを加盟店向けに補償し始めました。Fanatics、Omnichat、快手など、売る側でAIを使う動きもまとめて紹介します。

AIコマース ニュースダイジェスト(2026年10月29日)

この記事のポイント

  1. McKinsey調査で米国のAI購入経験者が1年で7割増えました
  2. Chargebacks911がエージェント購入のチャージバックを補償します
  3. エージェント取引の責任の所在を決める動きが広がっています

今回は10月26日から28日までの3日分をお届けします。McKinseyが11か国の約2万1,000人を調べた調査では、米国でAIを使う人のうちAIの中で購入まで済ませた人が1年で10%から17%に増え、AIのチャットや検索を「最も影響を受けた情報源」に挙げた人は従来の検索エンジンの3倍に達しました。一方で、エージェントの買い物が増えるほど「誤った購入の責任を誰が負うか」が問題になっており、Chargebacks911は加盟店向けにエージェント購入の補償を始め、米国の銀行や決済各社もルールの不在に懸念を示しています。前回のダイジェストで紹介したWalmartのAgent Gatewayなど、受け入れの仕組みが整いつつあるなかで、その後の紛争と補償の設計に焦点が移ってきました。店舗の運営側でも、快手の出店者向けAIデジタル店員やOmnichatのチャット内で販売するエージェントなど、売る側の作業をAIに任せる動きが目立ちます。

今日の注目ニュース

McKinsey調査、米国でAIを使う人のAI購入率が1年で10%から17%に

McKinseyは10月28日、エージェンティックコマースに関する消費者調査の結果を公表しました。2026年6月に、日本を含む11か国の約2万1,000人を調べたものです。過去3か月に買い物でAIを使った人は平均53%で、中国が80%、インドが76%と高く、米国は48%、日本は37%で11か国の中で最も低い水準でした。

注目すべきは、AIが「調べる道具」から「買う場所」に移り始めている点です。米国でAIを使う人のうち、AIの中で購入まで済ませた人は2025年12月の10%から17%に増え、伸び率は70%に達しました。直近の購入で最も影響を受けた情報源にAIのチャットや検索を挙げた人は29%で、従来の検索エンジンの9%を大きく上回っています。

小売にとって示唆的なのは、入口と出口で勝者が違うことです。商品のアイデア探しではChatGPTやGeminiなどの汎用AIが小売のAIアシスタントのほぼ2倍使われていますが、購入の段階では小売のアシスタント(15%)が汎用AI(14%)をわずかに上回りました。在庫、決済、配送の仕組みをすでに持っていることが効いています。McKinseyは、小売の商品カタログにつながったAI検索は、スクレイピングした古い情報に頼る検索のおよそ2倍の率で購入に至るとも指摘しています。AIに見つけてもらう対策と、正確な商品データを渡す仕組みの両方が、年末商戦の差になります。

Chargebacks911、AIエージェントによる購入のチャージバックを加盟店向けに補償(続報)

米国でチャージバック(支払いの取り消し請求)の対応を手がけるChargebacks911は10月27日、AIエージェントによる購入を対象にした補償サービスを始めました。消費者が自分で許可したエージェントの購入を、後から「頼んでいない」と争った場合に、条件を満たすチャージバックの損失を同社が肩代わりします。

同社は自社のAI、行動の分析、蓄積した紛争データを使って、エージェントが関わった取引を見分け、補償の対象になるかを判断します。既存の不正検知やチェックアウトはそのままで、追加の機能として組み込めます。同社は以前から、エージェント経由の購入が新しい種類の紛争を生むと警告しており、今回はその対策を商品として出した形です。

エージェントを識別する仕組みはVisaのTrusted Agent ProtocolやMastercardのAgent Payなどで整いつつありますが、購入後に争いになったときの負担は加盟店に残っていました。創業者のモニカ・イートンCEOは、加盟店が自分のリスクで受け入れるしかない取引にしてはならないと述べています。受け入れの判断を左右するのは、識別の精度だけでなく、こうした事後の補償の有無になりそうです。

詳細記事: Chargebacks911、AIエージェント経由の購入のチャージバックを加盟店に補償するサービスを開始

エージェンティックコマース

Fanatics、OpenAIのCodexで在庫連動の「Shop the Look」を構築、推薦商品の閲覧が10%増

スポーツのライセンス商品を販売するFanaticsは、OpenAIのCodexを使って、商品ページにコーディネートを提案する「Shop the Look」を作ったと明らかにしました。ユニフォームを見ている人に、同じチームで在庫のある帽子や靴下などを組み合わせて示します。

同社は常時150万点を超える商品を扱い、毎週1,000点以上の新商品が加わります。買い物の時間は平均30分を超えていました。撮影でコーディネートを作る従来のやり方では、優勝記念のTシャツのような急ぎの商品に間に合いません。Codexで作った仕組みは商品とカタログのデータを読み、チームと選手の組み合わせを守りながら推薦を組み直します。公開後、推薦された商品の閲覧は10%増えました。

チームの商品は年70億ドルを超える同社のコマース事業の柱です。広大なカタログを持つEC事業者にとって、AIで「一緒に買うもの」を在庫と結びつけて示す方法の具体例になります。

詳細記事: FanaticsがOpenAIのCodexで「Shop the Look」を構築、150万SKUから在庫のあるコーディネートを推薦し閲覧10%増

Dubai Chambers、商工会議所として初めてAIエージェントのマーケットプレイスを開設

ドバイの商工会議所であるDubai Chambersは10月26日、企業がすぐに使えるAIエージェントを選んで導入できるマーケットプレイス「Chamber AI Hub」を開設しました。商工会議所が作ったエージェンティックAIのマーケットプレイスとしては世界初だとしています。

現在はコンプライアンス、調達、業務、財務、営業、人事、物流の7分野で22のエージェントがそろい、今後100まで増やします。仕入れ先の評価、契約書の確認、請求書の照合、見込み客の評価などに使えます。導入前に試せる環境と無料の利用枠があり、料金は利用量に応じたサブスクリプションです。

民間企業29万5,000社超のエージェンティックAI導入を支える2年間の計画の一部です。調達や請求書の処理といった企業間取引の実務を、エージェントに任せる流れを公的機関が後押ししています。

AIコマースツール

Omnichat、シリーズAで1,000万ドルを調達、チャットの中で販売まで担うAIエージェントを拡大

チャットを使ったマーケティングと接客の基盤を提供するOmnichatは10月26日、シリーズAで1,000万ドルを調達したと発表しました。Openspace Capitalが主導し、Darwin VenturesとAcorn Pacific Venturesが参加しています。

資金は2026年に公開した「Omni AI Agents」の拡大に使います。顧客の分類と配信を作るマーケティング、商品を薦めてチャットの中で注文まで受ける販売、24時間対応の接客、店舗ごとの売上をチャットに結びつけて分析する「OmniClaw」の4種類です。OmniClawは6月の公開から2か月で約300ブランドが導入しました。WhatsApp、LINE、Instagram、WeChat、KakaoTalk、TikTokなどで動きます。

Dyson、FILA、Watsonsなどが顧客で、同社によれば5,000社の売上1億ドル超を支えてきました。アラン・チャンCEOは、会話型コマースからAIが売るコマースへの移行と位置づけています。アジアで普及したチャット購買が、人手を介さない販売へ進む動きです。

詳細記事: Omnichatが1,000万ドルを調達:LINE・WhatsAppのチャットで販売まで担うAIエージェントの中身とEC事業者への示唆

快手、出店者向けにAIデジタル店員を導入、店の診断から動画、ライブ配信、アフターサービスまで代行(続報)

中国の動画プラットフォーム快手(Kuaishou)は、EC事業「快手小店」の出店者向け管理画面に、AIのデジタル店員を加えました。1人や副業で店を運営する小規模な出店者が主な対象で、24時間いつでも呼び出せます。

出店者が「この7日間で流入が落ちた理由は」などと普通の言葉で聞くと、中枢のAIが店のデータやプラットフォームの規則を集め、8つの役割の担当に仕事を振ります。仮想の店長は店全体を診断して新規客の獲得や商品名の改善を提案し、動画担当は商品選びから動画の生成、自動投稿までをこなします。ライブ配信、データ分析、アフターサービス、接客、配送、規約順守の担当もいます。

診断、提案、代行、振り返りを一続きで回す設計です。快手は7月に買い物客向けのAIアシスタントも始めており、今回は売る側の作業をAIに任せる番です。動画編集者の採用をほぼやめた茶葉の業者の例も紹介されています。

詳細記事: 快手(Kuaishou)が出店者向けAIデジタル店員を投入、8役のエージェントが店舗診断から動画・ライブ配信・アフターサービスまで代行

Cover Genius、AIエージェントの会話の中で購入時の保護を提案する仕組みを発表

購入時の保護(保険)を販売サイトに組み込むCover Geniusは、AIエージェントが会話の中で保護を提案できる「Agentic Embedded Protection」を発表しました。同社として初めての、エージェンティックコマース専用の商品です。

エージェントから取引の内容を受け取ると、高額な商品の購入や国をまたぐ配送などに合った保護の提案を、価格と規制上の説明つきでチャットの中に返します。取引に自動で含めるか、利用者に承認を求めるかを選べます。同社の調査では、78%の消費者がエージェントに購入を任せることに前向きでしたが、有料の保護まで自動で選んで買ってほしい人は7%未満でした。

エージェントが勧め、人が承認するという分担を前提にした設計です。購入の手前で安心材料を示せるかどうかが、会話の中の購買の成約率を左右します。

Fast Simon、Shopify向けのAI商品並べ替えに加盟店の制御とプレビューを追加

EC向けのサイト内検索と商品発見を手がけるFast Simonは10月27日、Shopifyのブランド向けに「Commerce-Native AI」を発表しました。買い物客の閲覧や操作に合わせて、商品の並び順と推薦をその場で変える仕組みです。

並べ替えには、クリックされやすさだけでなく、新商品、在庫、販促、ブランドの方針も反映します。除外する商品、キャンペーンの優先度、在庫の条件、編集上の固定枠は売り場の担当者が決め、AIの並べ替えをどの程度混ぜるかも調整できます。どの要因で順位が決まったかを確かめ、公開前に結果をプレビューできます。初めての来訪者にもログインなしで対応します。

検索、一覧、推薦、ショッピングエージェントの体験に共通の仕組みとして説明されています。AIに売り場を任せつつ、売りたい商品の方針を崩さないための制御が、導入の条件になってきました。

Virid、ECの管理をClaudeやChatGPTから行えるMCPコネクターを公開

EC基盤を提供する米Viridは10月28日、自社のECプラットフォーム「marketAgility」のストアを、AnthropicのClaudeやOpenAIのChatGPTなどにつなぐ「marketAgility MCP Connector」を公開しました。接続にはMCP(Model Context Protocol)を使います。

接続すると、商品、顧客、在庫、販促コードなどを、管理画面ではなく普通の言葉で検索、作成、更新できます。「15%引きの販促コードを月末までの期限で作って」と頼むと、変更内容を確認したうえで実行します。注文、カート、店舗ごとの在庫は読み取りだけです。認証はOAuth 2.1で、接続の設定にAPIトークンは要りません。

中堅のEC事業者が自前で開発しなくても、AIアシスタントから店の運営ができるようになります。管理画面の操作がAIとの会話に置き換わる流れが、大手以外にも広がっています。

Live2.ai、13億ルピーを調達、SNSの声を販売につなげるAIエージェントを開発

インドのベンガルールに拠点を置くLive2.aiは10月27日、プレシリーズBで13億ルピー(約1,400万ドル)を調達したと発表しました。IvyCap Venturesが主導しています。

同社は、Instagram、TikTok、YouTube、Redditなどでのブランドに関する発言を追い、その内容をマーケティングと販売につなげる基盤を提供しています。トレンドの発見、炎上の検知、インフルエンサーの分析など8つのAIエージェントを持ち、利用の許諾を得た投稿は、ブランドのサイトやマーケットプレイスで購入できるコンテンツに変えられます。

Shiseidoやヘンケルのシュワルツコフなど200超のブランドが使い、売上はこの1年で4倍に、その9割はインド国外からです。SNSで商品が見つかり買われる流れを、エージェントで一続きにする狙いです。

Strawberry、営業や接客などの担当者が自分でAIの同僚を作れる基盤を公開

スウェーデン・ストックホルムのスタートアップStrawberryは、技術職ではない営業、採用、カスタマーサポート、マーケティングのチーム向けに、AIエージェント基盤のバージョン1.0を公開しました。EQTとGeneral Catalystから600万ドルを調達しており、続いてシリーズAの調達を予定しています。

利用者は「コンパニオン」と呼ぶAIの同僚を作ります。ブラウザとして動き、チームの文脈、業務の流れ、ログイン情報がそこにまとまっているため、使うほど仕事の進め方を覚えます。1人が育てたコンパニオンをチーム全員で使えるのが特徴で、無料で試せます。

小売やECの現場でも、接客やマーケティングの担当者が開発者に頼らずにエージェントを作る道具が増えています。ブラウザがAIの作業の場になりつつあることを示す例です。

Shopify、AIエージェントに渡す店舗情報「Knowledge base」を管理画面に統合

Shopifyは10月26日、AIエージェントに渡す店舗の情報を管理する「Knowledge base」を、管理画面の「販売チャネル」の中の「Agentic」に移しました。これまでの独立したKnowledge Baseアプリは、2027年1月15日以降は使えなくなります。

加盟店は、連絡先やギフト対応など、エージェントに伝える店の情報を確認、編集、公開できます。Shopifyは公開中のストアのページから情報の下書きを自動で作り、出典のページにリンクします。下書きは加盟店が公開するまでエージェントに渡りません。旧アプリで情報が1,000件未満の店は、自分で書いた情報が移行・公開済みです。1,000件を超える店は移行されておらず、期限までに残したい情報を追加する必要があります。

AIエージェントに店をどう説明するかが、商品データと並ぶ管理項目として管理画面に組み込まれました。返品条件や配送などの説明を整えることが、エージェント経由の販売の前提になります。

決済・フィンテック

Mastercard、エージェントの買い物は「転換点」、x402を使うAgent Payで少額決済も

Mastercardの製品責任者ジョーン・ランバート氏はFortuneの取材に、エージェンティックコマースは「転換点」にあり、本格的な普及に急速に近づいていると話しました。1年前は、技術的な知識が要るMCPやACPのような規格が普及の柱になると考えていましたが、MetaのMuseのような一般向けのパーソナルエージェントが一気に広がったことで、その前提は古くなったといいます。

同社はエージェントが小売だけでなく、駐車違反の罰金など行政サービスの支払いもできる「Agent Pay」を展開しています。仕組みは、Coinbaseが復活させた決済プロトコルx402の上に作られています。x402はクレジットカード、デビットカード、ステーブルコインなど、当事者が合意した支払い手段を扱えるオープンな規格です。

数十セント単位の少額決済が現実的になる点も大きな変化です。記事は、月額の購読を求める代わりに、エージェントが必要な分だけ買う形の商売が広がると見ています。Mastercardは6月に機械間決済の基盤「Agent Pay for Machines」も発表しています。

米銀行と決済各社、エージェントの買い物の「責任のルール」不在に懸念

米国の銀行や決済の関係者の間で、AIエージェントによる買い物の責任の所在を問う声が強まっています。Payments Diveによると、ZelleとPazeを運営するEarly Warning Servicesのキャメロン・ファウラーCEOは、息子がMetaのMuseで買った赤いコートのサイズが合わなかった例を挙げ、誰が責任を負うのかと問いかけました。

PNCのビル・デムチャックCEOは10月19日のMoney20/20で、テック企業が大きな責任を引き受けない限り受け入れられないと強く批判しました。Wells Fargoは顧客に、AIにIDとパスワードを渡せばAIの誤りの責任を負う可能性があるとメールで警告しています。StripeとAmerican Expressはエージェント取引向けの購入保護を打ち出しましたが、ファウラー氏は数社だけのルールでは足りないと述べています。

カードの世界ではチャージバックの規則で責任を分けてきましたが、外部のエージェント基盤にはその仕組みが届きません。Googleの決済責任者は、数週間から数か月のうちに標準的な仕組みへの移行が進むと見ています。

Visa、AIパートナーは数か月で倍の約100社へ、決算で「信頼が最大の壁」と説明

Visaは10月27日の決算説明会で、本番で稼働しているAIのパートナー約50社が今後数か月で倍になる見通しを示しました。ライアン・マキナニーCEOは、エージェントの取引では信頼が普及の最大の壁だと述べ、エージェントを特定し、顧客と結びつけ、支出が指示どおりかを確かめる仕組みづくりを進めていると説明しました。

エージェントの初期の用途としては、請求書の支払いなど企業間の決済を挙げています。下地になるのはトークン化で、利用可能なカード情報の半分超、ECの取引の60%超がすでにトークン化されています。発行済みのカード情報は52億件で、7〜9月期の純収益は前年同期比13%増の121億ドルでした。

2027年度もトークン化、エージェンティックコマース、ステーブルコインへの投資を続けます。カードを持つ人とエージェントを結びつける仕組みを、決済網の側が標準として押さえにいく構えです。

American Express、AIで「どこで買うか」にも関与、エージェント決済の基盤づくりを継続

American Expressのスティーブン・スクエリCEOは10月23日の決算説明会で、OpenAIとの連携、利用者ごとの推薦、AIエージェントによる購入を支える技術への取り組みを説明しました。ChatGPTでのレストランの発見と予約や、会員向けの特典「American Express Offers」をChatGPTで使えるようにする計画が含まれます。

エージェントの購入に向けては、開発者キット「Agentic Commerce Experiences」と「Intent Intelligence Framework」で、利用者の承認、購入の指示、カード情報の扱いを整えています。ただし経営陣は、エージェントによる取引の量はまだ小さいと認めています。

カナダの小売専門メディアRetail Insiderは、AIの推薦の段階で会員特典を見せられれば、支払いだけでなく店選びにも影響できると分析しています。小売にとっては、集客の仲介者がまた一つ増える可能性があります。

欧州の決済各社、エージェンティックコマース向けの協議会を設立、域内の決済手段の採用を目指す

欧州の決済事業者が、業界団体「Local Payments Council for Agentic Commerce」を設立しました。英国のPPRO、ポーランドのBLIK、ベルギーのBancontact、欧州共通のウォレットWeroを開発したEuropean Payments Initiative、ギリシャの決済清算機関DIASなどが創設メンバーです。

協議会は、利用者がエージェントに権限を与え、銀行がそれを確認する方法の標準化を目指します。エージェントによる加盟店の識別や、紛争と返金の扱いも議題です。

各国の取り組みと違うのは、欧州の国内の決済手段を最初からエージェントの決済に組み込むことを重視している点です。エージェントが商品だけでなく支払い手段まで選ぶようになれば、組み込みやすいカードやステーブルコインに流れかねないという危機感があります。

lululemon、米国とカナダのECサイトにShopifyのShop Payを導入

スポーツウェアのlululemonは、米国とカナダのECサイトにShopifyの決済手段「Shop Pay」を導入したと発表しました。ワンタップでの購入、支払いと配送先の情報の保存、Shopアプリでの注文の追跡が使えます。

lululemonのデジタル体験の責任者ニック・エンゲル氏は、利用者が慣れた信頼できる方法で購入でき、欲しいものを手に入れるまでの手順を一つ減らせると説明しています。Shopifyは、既存のシステムを変えずに上乗せできる点を強調しています。

自社でECを構築する大手ブランドが、プラットフォーム外でもShop Payだけを取り入れる例です。数億人の利用者を抱える決済の仕組みが、ストアの基盤とは別に広がっています。

Taobao、タイでPromptPayを決済手段に追加

Alibaba傘下のTaobaoは、タイでの決済画面にPromptPayを加えました。Bangkok Postによると、タイは、多言語で展開するTaobao Tmall Worldの海外市場の中で、利用者数が最も速く伸びている市場です。

PromptPayはタイで広く使われる、QRコードなどによる即時の送金・決済の仕組みです。中国から直接商品を届ける越境ECにとって、現地の人が日常で使う支払い手段に対応することは、購入をためらわせる壁を一つ取り除くことになります。

企業動向・提携

L Catterton、AIショッピングエージェントのGlanceに戦略出資(続報)

消費者分野に特化した投資会社L Cattertonは、InMobi傘下のAIショッピングエージェント「Glance」に戦略出資しました。金額は開示されていません。スコット・ダーンケCEOは、エージェンティックコマースが消費者の行動の最も大きな変化の一つになると述べています。

Glanceは利用者の好みを覚え、似合う商品と安い価格を探し、バーチャル試着を見せてから購入の承認を求めます。アプリのほか、SamsungやAndroid TV、DirecTVとの提携で、米国の6,000万台を超える端末から使えます。創業者のナビーン・テワリCEOによると、米国の月間利用者は1,000万人で、1人が月に約120回買い物の相談をし、約15%が月に何かを購入しています。

収益はアフィリエイトのように販売額の一部を受け取る形で、ブランドからは追加の学習の費用も受け取ります。10月にはPayPalのネイティブ決済の導入も伝えており、調達した資金はモデルの学習と規模の拡大に充てます。

Etsy、7〜9月期は2年ぶりに買い手が増加、AIの活用と手作りの価値の両立を強調

ハンドメイド品のマーケットプレイスEtsyは10月28日、7〜9月期の決算を発表しました。流通総額は前年同期比8.8%増の26億ドル、売上高は約11%増の6億9,250万ドルで、活動中の買い手は2年ぶりに増えて約8,800万人になりました。通期の流通総額の見通しも約7%増に引き上げています。

クルティ・パテル・ゴヤルCEOは、AIは人々の商品の探し方と買い方を根本から変えると述べ、その変化に積極的に乗る姿勢を示しました。出品者向けのアシスタントのベータ版を公開し、ギフト選びの機能も広げます。一方で、AIで作ったレシピや型紙などの販売を禁じ、出品に実物の写真を1枚以上求める新しい規則も導入しました。

AIで商品の量産が簡単になるほど、人の手による創作の価値が上がるというのが同社の見方です。AIを発見に使いつつ、AIの生成物で売り場が埋まらないようにする線引きが、マーケットプレイスの課題になっています。

広告・リテールメディア

Google、小売ではなく「仲介役」として、AIの推薦にブランドを載せる役割を売り込む

Googleは、AIエージェントが商品発見の中心になるなかで、ブランドがAIの推薦に載るための欠かせないパートナーとして自らを売り込んでいます。Adweekによると、同社は小売になるのではなく、買い手とブランドを結ぶ「仲介役」だと位置づけています。

Googleは1月にエージェント向けの買い物の規格UCP(Universal Commerce Protocol)を発表し、今月は米国のGeminiアプリと検索で「Universal Cart」の提供を始めました。消費者が小売のサイトを訪れなくても買い物を進められる一方で、注文の処理などECの中核の業務は小売が担います。

小売にとっては、自社サイトへの来訪が減る代わりに、Googleの面で選ばれるための商品データや広告の重要性が増します。商品発見の主導権をどこが握るかをめぐる争いが、検索広告から会話の中の推薦へ移っています。

消費者動向

Deloitte調査、AIに年末の買い物の購入まで任せられる消費者は16%

Deloitteが8月から9月に米国の消費者4,000人に行った調査で、AIエージェントに購入の完了まで任せられると答えた人は16%にとどまりました。Adweekが伝えています。

66%はAIアシスタントによるデータの使われ方を心配していると答えました。一方で、37%は半年前よりエージェントを使うことに抵抗がなくなったと答えています。年末商戦を前にしたほかの調査でも、エージェントによる買い物には慎重な結果が出ています。

小売がエージェントの受け入れ準備を急ぐ一方で、消費者が決定権を手放すまでには時間がかかりそうです。McKinseyの調査でも、AIの中での購入はまだ一部にとどまっており、当面は「AIで調べ、自分で買う」使い方が中心になります。

韓国の消費財50社、AIで作った「仮想の買い物客」で商品を事前に検証

韓国の小売や消費財の企業が、AIで作った仮想の買い物客を使い、商品や価格、店の配置を事前に試しています。技術を提供するIntelliciaは消費財の50社で120件の実証を行い、500人の実在の買い物客への調査との相関は91.2%だったと報告しています。

ロッテメンバーズは、会員4,500万人の購買履歴とネット上の声を組み合わせた「AI Twin Consumer」を作り、新しいパッケージや価格への反応を担当者が直接たずねられるようにしています。CoupangとNaverはサイト内の離脱が起きる場所を探るのに、コンビニのCUを運営するBGF Retailは売り場の配置の検証に使っています。

調査パネルを集める数週間を省ける一方で、元のデータが所得の変化などを映していなければ、仮想の需要は判断を誤らせます。AIを買い手の側だけでなく、商品を作る側の意思決定にも使う動きです。

グローバルEC動向

Kroger、180億ドルのEC事業を将来は全体の30%に、生鮮と速さとAIで

米スーパー大手Krogerは10月20日の投資家向け説明会で、ECを成長の中心に据える方針を示しました。180億ドル規模のEC事業で、2029年までにEBITDA(リテールメディアを除く)を5億ドル上積みする計画です。Jet.comの共同創業者で最高EC責任者のネイト・ファウスト氏は、ECが将来は事業全体の30%を占めると見ています。

戦略は「生鮮、速さ、個人に合わせた体験」の3本柱です。高品質な生鮮品と超高速の配送に力を入れ、約2,700の店舗網を配送に活用します。AIの買い物アシスタントは全ブランドで稼働しており、家族の好みや食事の制限、予算に合わせて夕食の計画を立てられます。このアシスタントを繰り返し使う人の支出は11%多くなっています。

売上の95%は会員カードの利用者に結びついていますが、店舗の客のうちKrogerのネット通販も使うのは7人に1人です。ネットでの会員登録を簡単にし、ECとリテールメディアを一緒に伸ばす計画です。

インドのMeesho、7〜9月期の赤字が縮小、注文数は17%増

低価格の商品を扱うインドのマーケットプレイスMeeshoは10月28日、7〜9月期の決算を発表しました。連結の純損失は13億2,000万ルピー(約1,390万ドル)で、前年同期の41億1,000万ルピーから大きく縮小しました。

売上高は前年同期比34%増の413億2,000万ルピーで、出品者からの広告収入が伸びを支えました。流通額は23%増の1,291億1,000万ルピー、注文数は17%増の8億1,900万件です。地方の中小都市へ顧客を広げつつ、配送費を抑えています。

Amazonや、Walmart傘下のFlipkartと競う中で、広告収入で採算を改善する形が見えてきました。昨年12月に上場した同社の株価は、年初から約26%上がっています。

Delivery Hero、7〜9月期の注文が初めて10億件を超え、通期見通しを引き上げ

独フードデリバリー大手のDelivery Heroは10月28日、7〜9月期の業績速報を発表しました。注文数は既存事業ベースで前年同期比11.5%増の10億100万件となり、四半期で初めて10億件を超えました。流通総額は13.6%増の139億ユーロ、売上高は22.0%増の43億ユーロで、通期の見通しをすべての主要指標で引き上げています。

成長を引っ張ったのは、食料品や日用品を短時間で届けるクイックコマースです。流通総額は39%増え、全体の19%を占めます。数分で届けるための小型倉庫「Dmart」は2026年に約90か所を新設し、約900か所になりました。会員向けの定額制の利用者が流通総額の51%を生んでいます。

Uberによる株式の公開買い付けは11月5日まで応募を受け付けており、取引の完了は2027年後半の見込みです。即時配送が、食事の宅配から日常の買い物の手段へ広がっていることを示す数字です。

Carrefour、7〜9月期のECが18%増も、年末を前に財務目標を下方修正

仏小売大手Carrefourの7〜9月期は、グループ全体のECが18%増え、フランスでも15%伸びました。売上高は227億8,000万ユーロで、既存店の売上は2.3%増です。フランスではネットで注文して店で受け取る「Drive」と宅配がともにシェアを伸ばしました。

店舗のデジタル化も進め、フランスの28の大型店に、電子棚札とカメラで欠品や価格の誤りをAIで見つける「Vusion」を導入しています。一方で、フランスの都市部の店舗の客足の減少や、警備と物流の費用の増加を理由に、営業利益率と1株利益の目標を引き下げ、投資額も17億ユーロから16億ユーロに減らしました。

ECの伸びがそのまま利益につながるわけではないことを示す決算です。配送や受け取りの費用をどこまで抑えられるかが、年末商戦の焦点になります。

EU、域外からの小包に11月1日から2ユーロの手数料、7月の3ユーロの関税に上乗せ

EUは11月1日から、域外から消費者に直接送られる小包に、2ユーロの取扱手数料を課します。7月に始めた150ユーロ未満の小包への3ユーロの関税に上乗せされる形で、ブラックフライデーやクリスマスの商戦の直前に始まります。

手数料は小包の中の商品の種類ごとにかかり、Tシャツ10枚なら2ユーロ、帽子2個とTシャツ10枚なら4ユーロです。支払うのはAmazon、AliExpress、Temuなどのマーケットプレイスや販売者で、消費者ではありません。ただし価格に転嫁される可能性はあります。昨年EUに入った少額の小包は約60億個で、93%が中国からでした。

7月の関税の導入以降、少額小包の輸入は約64%減りました。2ユーロの手数料は恒久的な措置で、3ユーロの関税は2028年7月1日まで続きます。

EU、Temuの是正計画を承認、2億ユーロの制裁金を受けた違法商品対策

欧州委員会は、Temuが提出したデジタルサービス法(DSA)違反の是正計画を承認しました。違法な商品や危険な商品の販売を十分に防げなかったとして、5月に2億ユーロの制裁金を科していました。

計画は5つの柱からなり、格安マーケットプレイス特有のリスクの分析、違法な出品の削除を測る指標、商品の審査体制の強化、推薦のアルゴリズムが危険な商品を広めないための点検、悪質な出品者の抜け道をふさぐ対策が含まれます。Temuは4か月以内に中間のリスク評価を行います。

Temuの広報担当者は承認を歓迎しました。推薦のアルゴリズムが何を勧めるかまで規制の対象になっている点は、AIで商品を薦める事業者全般に関わる論点です。

Adobe Commerceの脆弱性「PolyShell」悪用で数百のストアに侵入、CISAが警告

米国のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャ安全保障庁(CISA)は、Adobe CommerceとMagentoの脆弱性CVE-2026-48356(通称PolyShell)を、悪用が確認された脆弱性のカタログに加えました。危険な種類のファイルをアップロードでき、任意のコードを実行される恐れがあります。深刻度は10点満点で9.3です。

セキュリティ企業のSansecは、攻撃者がこの脆弱性を使って数百のECストアに侵入し、MagentoのCMSブロックに不正なプログラムの読み込み役を仕込んだと報告しています。少なくとも2025年7月から続いているとみられますが、最終的に何を狙っているかはまだわかっていません。同時に、圧縮ライブラリGoogle Brotliの脆弱性も加えられました。

米連邦政府の機関は11月10日までに修正を求められています。年末商戦を前に、Adobe CommerceやMagentoでストアを運営する事業者は、修正の適用と不審なCMSブロックの確認を急ぐ必要があります。

物流・フルフィルメント

Amazon、インドで電動トラック3,000台を導入、同国のEC企業で最大規模

Amazonはインドで、Tata Motors製の電動トラック3,000台を導入すると発表しました。同国のEC企業として最大の規模で、最初の20台は10月27日に納車されました。トラックはAmazonの配送委託先が購入して運行するため、Amazonは大きな投資をせずに輸送を電動化できます。

まずは年末の祭事シーズンで荷物が増えるデリーで、拠点間の輸送に使います。次の段階では、デリーからチェンナイまで約2,800キロを結ぶ国内最長の貨物路線、国道48号線に投入し、充電設備は商用車向けの充電事業者Yahhviと整えます。

Amazonはすでにインドの500超の都市で1万5,000台を超える電気自動車を走らせています。ラストワンマイルだけでなく、拠点間の幹線輸送まで電動化を広げる動きです。

現代グロービス、Shopeeと提携、韓国コスメの越境ECの物流を一括で請け負う

韓国の物流大手現代グロービス(Hyundai Glovis)は10月26日、Shopee Koreaとの提携を発表し、海外に進出する韓国の化粧品ブランドの物流を一括で請け負う業務を始めました。Shopeeは東南アジア、台湾、ブラジルで約7億人の利用者を抱えています。

韓国国内での集荷、航空と海上の輸送、輸出入の通関、現地での規制の届け出、配送先での出荷までを1つの窓口で引き受けます。これまでブランドは国内輸送、国際輸送、現地配送を別々の業者と契約しており、受け渡しの遅れや通関の詰まりが起きていました。

自動車の輸送が中心だった同社は、グループ外の事業を2030年までに売上の40%に高める目標を掲げています。まず東南アジアで始め、運用が安定すればブラジルなど中南米にも広げます。

まとめ

この3日間は、AIエージェントによる買い物が「試す段階」から「数字で語られる段階」に入ったことを示すニュースが並びました。McKinseyの調査では、米国でAIを使う人のAIでの購入が1年で7割増え、Mastercardの製品責任者も普及の転換点にあると話しています。ただしDeloitteの調査では、購入まで任せられる人はまだ16%で、関心の高さと信頼の間には差があります。

その差を埋める鍵として浮かび上がったのが、責任の分け方です。Chargebacks911の補償、StripeとAmerican Expressの購入保護、Cover Geniusの会話の中の保護提案と、事後の損失を誰が負うかを決める仕組みが一斉に出てきました。米国の銀行の首脳は業界全体のルールを求めており、欧州でも決済各社が協議会を作っています。

売る側では、快手のAIデジタル店員、Omnichatの販売エージェント、ViridのMCPコネクター、Shopifyの管理画面に入ったKnowledge baseと、店の運営そのものをAIに任せる道具が増えました。11月からはEUの小包への手数料も始まり、年末商戦が本格化します。エージェント経由の注文を受けた後の返品や紛争の扱いを、商戦の前に決めておけるかが問われます。