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BunningsがGemini Enterprise for CXでAIショッピングエージェント「Buddy」をNZ展開、豪州で転換率2倍超のDIY接客

豪NZのホームセンター大手BunningsがGoogle CloudのGemini Enterprise for CXで作ったAIショッピングエージェント「Buddy」をNZで開始しました。豪州での成果と設計、留保点から、プロジェクト型商材を扱うEC事業者への示唆を解説します。

BunningsがGemini Enterprise for CXでAIショッピングエージェント「Buddy」をNZ展開、豪州で転換率2倍超のDIY接客

この記事のポイント

  1. 豪州・NZのホームセンター最大手Bunningsが、Google Cloudの「Gemini Enterprise for CX」で作ったAIショッピングエージェント「Buddy」をニュージーランドのWebとアプリで提供し始めました。NZの小売で初めての導入で、豪州では2026年4月から先行展開しています
  2. Buddyは「デッキを作りたい」といった目的から必要な資材と道具を洗い出し、写真や手書きの買い物リストからも商品を探します。豪州ではBuddy経由のオンライン転換率が2倍超になったと公表されていますが、比較の基準や客単価の具体的な数字は未開示です
  3. 多品目をまとめて買うプロジェクト型の商材では、商品検索より「何が要るか」を教える接客がエージェントの役割になります。自社のハウツー記事や店員の知見を、AIが参照できる形で持っているかどうかが差になります

NZ小売で初、BunningsがBuddyの提供を始めた

ホームセンター大手のBunningsが、AIショッピングアシスタント「Buddy」をニュージーランドのWebサイトとアプリに載せました。Reseller Newsが2026年10月1日に伝えたもので、Google Cloudの「Gemini Enterprise for Customer Experience(CX)」を使ったショッピングエージェントとしては、ニュージーランドの小売で初めての導入です。

Buddyは、DIYのプロジェクトを手順に分け、必要な商品を探し、実践的な助言を返します。文章での質問のほか、写真や手書きの買い物リストの撮影からも商品を探せ、次に必要になりそうなものを先回りして示します。購入の手続きは、これまで通りBunningsのオンラインストアで行います。

助言の多くは、Bunningsが蓄積してきたハウツーのコンテンツから引かれています。Bunnings New ZealandのGM、Melissa Haines氏は次のように述べました。

AIを実用的で責任ある形で使い、チームが毎日提供している助言を補うためのものです。お客様にとって都合のよい時と場所で、Bunningsとやり取りする方法がもう1つ増えます。

NZでの提供は、半年前に始まった豪州での展開に続くものです。数字や設計の考え方は豪州の事例で明らかになっているので、ここからは豪州の動きを見ていきます。

豪州の半年で見えた「商品検索からプロジェクト検索へ」

Bunningsは2026年4月4日の発表で、豪州のWebサイトにBuddyを段階的に公開し始めました。一部の訪問者から順に使えるようにし、数週間かけて対象を広げる進め方です。このとき、それまでサイトにあった「Ask Bunnings AI」というチャットボットはBuddyに置き換えられました。

置き換えの理由は、初代チャットボットの限界にありました。Computer Weeklyによると、Google Cloud Next 2026に登壇したBunningsのデータ・AI担当GM、Vivek Pradhan氏は、Ask Bunnings AIは15年分のDIYコンテンツを引き出せたものの、体験は使いにくかったと振り返っています。回答を見るためにブラウザのタブをいくつも開く必要があり、提案を絞り込めず、画像も扱えませんでした。

Buddyが目指したのは、Bunningsの言葉でいう「商品検索からプロジェクト検索へ」の転換です。たとえば屋外にデッキを作りたいと伝えると、デッキ材、下地の構造材、計測道具、電動工具までを提案し、Bunningsのハウツー動画へ案内します。

画像の扱いも変わりました。手書きの買い物リストを撮影すれば、その品目をカートに入れられます。本棚から外れた家具用のカムロック(板同士を固定する金具)のような、名前のわからない部品の写真を送ると、Buddyが部品を特定し、最寄りの店舗のどの通路にあるかまで教えてくれます。地域ごとの価格と在庫も確認でき、オンラインの相談を店舗での購入へつなぎます。

開発期間の短さも目を引きます。Google Cloudの導入事例によると、BunningsはGoogleのエンジニアと直接組み、約6週間でBuddyを公開しました。それ以前に「Agent Search(旧Vertex AI Search)」で検索の土台を作っていたことが、短期間での立ち上げにつながったと説明されています。

公表された数字と、その読み方

Google Cloudの事例ページは、Buddyの成果としてオンライン転換率が2倍超になったことと、客単価が大きく伸びたことを挙げています。Reseller Newsの報道によると、BunningsのCIO、Genevieve Elliott氏も6月のGoogle Cloud Summit(シドニー)で、オンライン転換率が2倍以上になり、特に会話のやり取りを重ねた利用者ほどカートが大きくなっていると話しました。

ただし、この数字はそのまま受け取らないほうがよいものです。何と比べて2倍なのかは示されていません。Buddyを使わない訪問者との比較だとすれば、もともと買う気の強い人ほどBuddyに質問している可能性があり、Buddyそのものの効果と利用者の違いを切り分けた数字ではありません。客単価の伸びは「大幅」とされるだけで、具体的な数値は未開示です。Buddyの利用者数や利用率、NZでの実績もまだ出ていません。

Gemini Enterprise for CXとは何か

Buddyの土台になっているGemini Enterprise for CXは、Google Cloudが2026年1月11日、米NRFの展示会に合わせて発表した製品です。商品探しからアフターサポートまでを1つの窓口で扱うことを掲げ、あらかじめ用意されたエージェントを数日で導入できるとしています。

中心になるのが「Shopping agent」です。発表では、3つの特徴が説明されました。

  • 複雑な条件の理解:素材の耐久性や寸法、予算を同時に満たす商品を絞り込む
  • マルチモーダル入力:画像、動画、音声での依頼を理解する。手書きのレシピの写真から材料を読み取ってカートに入れる例が示された
  • 同意にもとづく実行:情報やリンクを返すだけでなく、利用者の同意を得たうえでカートへの追加やチェックアウトまで行う

あわせて、問い合わせ対応のエージェントを作る「Customer Experience Agent Studio」も発表されました。販売と問い合わせ対応で同じ文脈を引き継げるようにする狙いです。発表時点で名前が挙がった企業と、4月に採用を明らかにしたUlta Beautyなどを表にまとめます。

企業業態・地域Gemini Enterprise for CXでの取り組み公表時期
Bunningsホームセンター(豪州・NZ)ショッピングエージェント「Buddy」。豪州のWebから段階公開し、NZのWebとアプリにも展開2026年4月(豪州)、10月(NZ)
Lowe'sホームセンター(米国)アドバイザー「Mylow」を、住まいやプロジェクト、地域に合わせた助言ができるよう強化2026年1月
Woolworths Groupスーパー(豪州)デジタルアシスタント「Olive」を、献立の計画や特売の提案まで行う形へ発展2026年1月
Krogerスーパー(米国)献立に合わせたカート作りや商品比較。店舗への電話の分析にCustomer Experience Agent Studioを使用2026年1月
Ulta Beauty美容(米国)自社サイトとアプリのAIアシスタント「Ulta AI」2026年4月

Buddyを特徴づけているのは、Shopping agentがチェックアウトまで担える設計なのに、Bunningsは決済を自社のオンラインストアに残した点です。エージェントは相談と商品選びとカート作りに集中し、購入の最終手続きは従来の画面で行います。米Lowe'sも同じ製品でアドバイザー「Mylow」を強化し、Home DepotもGoogle Cloudと組んで「Magic Apron」を拡張しています。ホームセンター業態では、まず「相談役」として使う形が先に立ち上がっています。

ホームセンターでエージェントが効く理由

DIYの買い物は、1つの商品で完結しないのが普通です。棚を作るなら板とネジと金具と塗料、場合によっては電動ドリルも要ります。Google Cloudの事例ページは、オンラインの買い物は店舗に比べて取引的になりがちで、複雑なプロジェクトを計画する客は必要な部品や道具をすべて把握しているとは限らないことを、Bunningsが抱えていた課題として挙げています。

ここに、エージェントが効く余地があります。キーワード検索は、何を買えばよいかを客が知っている前提で作られています。プロジェクト型の買い物では、その前提が崩れます。店頭ならスタッフに「ウッドデッキを作りたい」と話せば済みますが、オンラインではそれができませんでした。Buddyは、この店頭の相談をオンラインに移す試みだといえます。

会話を重ねるほどカートが大きくなるという先の説明も、この構造から読み解けます。プロジェクトの手順を1つずつ確認していくうちに、客は自分では気づかなかった資材や道具を知り、カートに加えていきます。食料品のような定番品の補充とは異なり、ホームセンターでは「何が要るか」を教えること自体が売上につながる接客になっています。

Ask Bunnings AIの時代から15年分のDIYコンテンツを検索の対象にしてきたことも、大きな資産でした。Elliott氏によると、BunningsのAI活用は5年前から続き、店舗スタッフが携帯端末で使う会話型アシスタントなども先に導入しています。Buddyはその延長にあります。

留保:安全、データ、そして信頼

最も重いのは安全です。DIYの助言を誤れば、けがや事故につながりかねません。Google Cloudの事例ページは、Googleのチームと安全面のガードレールをルールとして組み込み、危険な作業を客が自分で試みないようにしていると説明しています。ただ、どの作業を危険とみなし、どの段階で専門業者や店舗スタッフへ案内するのかといった具体的な基準は公開されていません。

個人データの扱いも、これから問われます。Computer Weeklyによると、Bunningsは会員プログラムのデータをBuddyに取り込み、客の同意を得たうえで、すでに使っている工具のブランドに合わせた提案を出す計画です。「同意にもとづく」設計は強調されているものの、何のデータをどこまで使うのかは、まだ詳しく説明されていません。

消費者の信頼にも限りがあります。仏コンサルティング会社Converteoの調査をFashionNetworkが伝えたところでは、購入前の段階でAIアシスタントを信頼する人は47%いる一方、支払いの段階では30%に下がります。個人データが利用されることを心配する人は71%に達しました。調査対象はフランスのEC市場ですが、Bunningsが決済を自社の画面に残した判断は、こうした消費者の感覚とも重なります。

店舗スタッフとの関係も、BunningsとGoogleは「助言を補う」と繰り返すだけで、人員配置や接客の役割がどう変わるのかは説明されていません。

次に控える音声、商品ページ、法人客

Bunningsは、音声での対話を2026年中に加える予定です。商品ページへの組み込みや、工務店などの法人客向けの仕組みづくりも計画しています。Computer Weeklyは、最初の問い合わせ受け付けもBuddyが担う構想を伝えており、実現すればGemini Enterprise for CXが掲げる「販売とサポートの一体化」を実地で試すことになります。

EC事業者が読み取れること

Buddyの助言の源泉は、Bunningsが長年蓄えたハウツーのコンテンツと店員の知見です。家具や家電、アウトドア用品など、組み合わせや使い方の説明が要る商材を扱う事業者は、自社の解説記事や動画、FAQがAIに読める形で整っているかを点検する価値があります。

手書きのメモや部品の写真から買い物を始められる設計は、商品名を知らない客を取りこぼさないための工夫です。決済を自社の画面に残し、相談役として成果を出してから任せる範囲を広げる順番も、多くの事業者にとって現実的な進め方です。

まとめ

BunningsのBuddyは、店頭の相談をオンラインへ移すことで、プロジェクト型の買い物をエージェントで支える事例です。豪州で約6週間で立ち上げ、オンライン転換率2倍超を公表したうえで、半年後にニュージーランドへ広げました。

次に注目したいのは、比較の基準を含めた効果の数字が開示されるかどうかと、音声対応や法人客向けの機能が実際にどこまで進むかです。ガードレールの具体的な中身が示されれば、DIYのように安全が関わる領域で、エージェントにどこまで任せられるのかを判断する材料にもなります。